サラリーマンから独立して、すぐに会社をつくる人は多くはありません。周囲を見渡してみても、まずは個人事業主からスタートして様子を見るという人のほうが多いように感じます。つまり、事業がそれなりに軌道に乗ってきて、毎月の収益で食べられるようになってきてから、「法人化」を考えるというわけです。
しかし、どのタイミングで法人化すべきなのかどうかは、なかなか判断しにくいもの。わかりやすい明確な「判断基準」があれば…と思っている人も少なくないと思います。そこで今回の記事では、個人事業主から法人に切り替えるべきかハッキリわかる判断基準について詳しく紹介していきます。
判断基準① 利益が500万円を超えている
法人化する最大のメリットは「節税」です。日本の税法は、手に入るお金が大きくなればなるほど、個人事業主よりも法人の方が有利になります。ただし、そこまで利益が上がっていない場合は、法人化してもあまり節税の効果がありません。
では一体どれくらい利益をあげたら、法人に切り替えるべきなのでしょうか。実は非常に明確な基準があり、利益500万円を超えたタイミングで法人化すると、最大の節税効果を発揮できるのです。
たとえば個人事業主の場合だと、所得が増えれば増えるほど所得税の税率が上がるため、500万円を超えると法人の税率よりも高くなってしまうのです。利益が500万円を超えている状態が今後も続きそうなのであれば、明らかに法人化すべきタイミングでしょう。
判断基準② 売上高が1000万円を超えている
法人化するタイミングとして、利益以外にも注目すべき明確なポイントがあります。それは売上高です。
なぜ1000万円が基準なのかというと、実は消費税納税のボーダーラインになっているから。売上1,000万円を超えると課税義務が発生することが大きな理由です。なお、法人化すれば翌々期までは消費税が免除されるというメリットもあります。
判断基準③ 銀行の事業融資が必要になった
事業をやっていると、追加の事業資金が必要になることがあります。ここで個人事業主の場合は、自身の名義の個人的な借金で賄うことが多いでしょう。銀行の融資を利用しようとしても、門前払いされることが少なくありません。なぜ銀行が貸してくれないのかというと、「社会的信用力がないから」という一言に尽きます。個人事業主は、銀行からすると事業状況や財務状況がきちんと把握できないことが多く、貸出先として不明瞭な点が多いので、なかなか融資することができないのです。
一方、法人の場合は帳簿や口座履歴、取引状況など様々な「事業の足跡」が残っていることが多いので、信用しやすいのです。
個人事業主が借りることのできる金額はせいぜい100万円未満。ただし、法人化したからといっても、いきなり借りられるほど、甘くはありません。まずは、取引している銀行の法人口座を作らなくてはなりません。なお、法人口座を作るには、もちろん法人化が必要不可欠です。法人化して銀行に対する社会的信用度を増すところから始めてみましょう。
判断基準④ 取引先が法人であることを求めてきた
法人の社会的信用力は、銀行だけに限ったことではありません。社内での稟議を通す必要があるなどする場合には取引先が法人であることを求められることもよくあります。また、取引銀行の手前、取引帳簿に個人事業主と取引していることを残したくない思惑もあるかもしれません。・・・なかには法人化するメリットなんて全く知らずに、漠然と「法人は信用できる」と思っている人もいますが。
特に大企業であれば、かならずと言っていいほど個人事業主とは取引をしません。取引条件として法人化を要求してくることでしょう。そのまま個人事業主でいれば、これからのビジネスを大きく左右するような大チャンスを逃してしまうかもしれません。実際に、取引先を増やすためだけに法人化する事業者は多く、節税などのメリットを何も考慮していない人も少なくないです。どうしても取引したい会社が法人を条件とするのであれば、それもまた最適な法人化のタイミングといえるのかもしれません。
記事制作/イソダ カツヤ
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