独立プロフェッショナルの「働き方」のトレンドや業界情報について調査・情報共有する「ビジネスノマド業界情報コラム」。本コラムを通して、知られざる「ビジネスノマド」について理解し、新しい働き方について考えるきっかけとなるような情報発信をします。今回は、フリーランス先進国ともいえる米国の事情です、「ソロプレナー」と「サイドギガー」とは?独立ワーカーは果たしてクラウドソーシングを使用しているのか? など興味深い内容です。
意外と知らない独立ワーカー先進国事情:米国の「働く」事情
日本では、2012年にワークシフトやノマド論が流行し、その後フリーランスなどの働き方が定着しつつあります。
その先行を行く米国の現状はどうなのでしょうか。米国の状況は、2002年にダニエルピンクが「フリーエージェント社会の到来」で米国のフリーエージェントの働き方を、統計などを交えてまとめていました。(2014年に新装版を発刊)
では最近の状況はどうでしょうか。最近の数字などを、独立コンサルタントとクライアントを結びつけるサービスを行う米国MBO Partnersという会社がまとめています。
今回は、この米MBO Partners社(以下MBO社)の調査結果を紹介したいと思います。
「ソロプレナー」と「サイドギガー」
■米国のインディペンデントワーカーは約3000万人
MBO社の調査によると、米国には現在3000万人のインディペンデントワーカーが存在しています。
ここでは、21歳以上の男女で職業を次のように回答した人をインディペンデントワーカーとして定義しています。
- An independent consultant/contractor
- Self-employed
- A freelance worker
- A temporary worker
- A fixed term contract worker
- An on-call worker
- A small business owner with fewer than 4 employees
今回の調査で特徴的なのは、同じインディペンデントワーカーでも、独立事業専業で仕事をしている「ソロプレナー」と、副業的に仕事をしている「サイドギガー」に分類している点です。
ソロプレナーとは、ソロ(一人)とアントレプレナー(起業家)の造語ですが、MBO社はサイドギガーとの違いを次のように整理して定義しています。
週35時間上、いわゆるフルタイムでインディペンデントワーカーとしてやっているのが「ソロプレナー」。週15時間以下(ハーフタイム未満)でインディペンデントワーカーとしてやっているのが「サイドギガー」。
出典:MBO partners
意外と少ないクラウドソーシングからの仕事の受注
■米国インディペンデントワーカーはどうやって仕事を獲得している?
同レポートでは、インディペンデントワーカーがどのようにして仕事を得ているのか、仕事受注の経路についてもまとめています。
インディペンデントワーカーの75%が、仕事受注元のトップに口コミ紹介を上げています。次いで2番目は仲介業者・エージェントからでした。3番目は、元の勤め先からという結果でした。
オンラインマーケットプレイス(いわゆるElance、oDeskなどクラウドソーシングサービス)からの受注を上位に挙げた人は、ソロプレナー全体として少ない(トップに挙げた人は3%、上位3位までに挙げた人は10%)。
しかし、若い世代(20代から30代前半)のうち18%、独立して1年未満の人のうち21%が、マーケットプレイスからの受注をトップの理由として上げています。
ここから、読み取れることとしては、インディペンデントワーカーが仕事の受注には、昔から指摘されていることではありますが、やはり、人的ネットワークが重要であるということだと思います。今更指摘するまでもないかもしれません。
また、若い世代や、最近独立した人たちは、クラウドソーシングなどの仕組みを活用しているという点から、今後、このような動きが増えてくるのではないかと読み取ることもできるのではないでしょうか。
米国の独立ワーカーは2019年には全体の約半数に!?
■今後、米国インディペンデントワーカーはどうなる?
同レポートでは、インディペンデントワーカー、3000万人から、2019年には4000万人に増加するだろうと推計しています。
そのうち、ソロプレナーは、2014年の約1790万人から、2019年に2450万人にまで増加すると見込んでいます。サイドギガーは、2014年の1210万人から、2019年に1540万へと増加すると見込んでいます。
さらに、米国ワーカーの40%は、一度は独立ワーカーとしてのキャリアを経験していると指摘しています。これが、2019年には48%、約半数にまで増えることが予想されています。
出典:MBO partners
日本の独立ワーカーは現在10%以下?
■日本のインディペンデントワーカーはどうなる?
米国のインディペンデントワーカーが2019年に4000万人という数字は、大きいのでしょうか。参考までに、日本と比較してみましょう。
日本の就業人口は約6000万人ですので、米国のインディペンデントワーカーが約3000万人、2019年には約4000万人になるというと、日本の就業者数の半数以上にあたるという大きさだということが分かります。
ちなみに、米国の就業人口が約1億4500万人なので、インディペンデントワーカーの割合が20%、およそ5人に1人の割合ということになります。
一方、日本の場合、インディペンデントワーカー(フリーランス)の米国と比較可能な形での統計がありませんが、野村総合研究所が推計した数字で554万人が個人事業主としており、特に最近の個人事業主の新しいワークスタイルを「個人事業主2.0」という造語で、約72万人と推計しています。日本の就業人口約6000万人に対する割合が、10%以下、個人事業主2.0だと1.2%ということになります。
日米比較では、日本のインディペンデントワーカーの数、割合は圧倒的に小さいことがわかります。
では日本でもインディペンデントワーカーが増えていくのでしょうか。
日米で程度の差はあれども、個人が仕事に求めるトレンド、企業がインディペンデントワーカーに仕事を依頼する要因・背景は、同状況にあると思います。従って、日本でも米国と同様、今後増加していくトレンドにあるといえるのではないでしょうか。
〈参考資料〉
MBO partners “2014 STATE OF INDEPENDENCE IN AMERICA REPORT”
- 2014-MBO_Partners_State_of_Independence_Report
- shades-of-independence-solopreneurs-vs-side-giggers
- 知的資産創造2014年8月号「個人事業主2.0 個人としての新しい働き方」(野村総合研究所)
地域開発シンクタンクにて国の産業立地政策および地方の産業振興政策策定に携わる。02年よりビジネス・ブレークスルー執行役員 、BBT総合研究所責任者兼チーフ・アナリストを経て06年に独立。08年法人化(現クリエナレッジ)。リサーチ事業、ビジネスプロデ ュースなどを手がける。
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