サーバント型リーダーシップとは

英語で「召使い」や「使用人」といった意味をもつサーバント(servant)。
リーダーシップ論においてのサーバントは、本来のサーバントの意味が転じて「奉仕型」「民主型」という意味をもつようになりました。

リーダーシップが組織を統率する力やその技能のことを指しますから、サーバント型リーダーシップとはつまり、部下をサポートしながら組織全体を統率する力や技能のことをいいます。

なぜ今サーバント型リーダーシップが必要とされるのか

サーバント型リーダーシップが必要とされる理由は、企業のグローバル化と、働く人たちの仕事に対する意識の変化が要因です。

以前は、自分の人生を会社に捧げるようにして働く人たちが多かったのに対し、近年では、仕事はあくまでも自分の人生の一部であり、すべてではないと捉える人たちが増えてきています。それは、ライフワークバランスを考え、自分にとって最適な働き方をしたいという考えをもつ人たちが増えたことでもあるのです。

さらに企業のグローバル化の影響で、外国人労働者も増え始めており、彼らに従来の日本のワーキングスタイルは通用しません。

こうしたことが要因となり、ワンマン型リーダーシップだけでは、働く人たちの心を掴み、コントロールすることが難しくなってきたのです。

部下と時には友人のように、時には先生のように関わり合いながら、組織をまとめ上げ、必要があればコーチのように導く存在。そんなサーバント型リーダーシップが今、さまざまな場所で求められてきいます。

サーバント型リーダーシップに必要な素養とは何か

才能としてリーダーシップを持っている人もいますが、多くのリーダーは後天的にリーダーシップの能力を身につけた人たちです。

リーダーシップを身につけるには、日ごろからリーダーとしての自分の在り方を意識し、それに必要な努力と経験を繰り返し積み重ねが必要となります。ではサーバント型リーダーに必要な素養を見ていきましょう。

1. メンバーの話にしっかりと耳を傾けられること

リーダーはメンバーの存在があってこそ、リーダーシップを発揮できるのですから、どんな内容であれ、メンバーの話にはまずしっかりと耳を傾けることが大切です。

話を聞いたうえで、リーダーとして自分がどう行動すれば、部下たちの力になれるのかを考えましょう。自分の話を聞くために部下がいるのではないと心にしっかりと刻み、部下の声に耳を傾けてこそ、リーダーとしての力が発揮できることを覚えておきたいものです。

2. メンバーの立場に立ち、気持ちを汲むこと

リーダーになると、自分が新人で先輩方にまだ教えを乞うていた時期のことを忘れてしまう人がいます。キャリアが浅い彼らでも、彼らなりにミスや失敗がないよう注意しながら、一生懸命仕事をしてきたはずです。

それでも失敗やミスを犯してしまったことについて彼ら自身、自分に対して失望を感じているかもしれません。感情を汲み取ってやり、どうすれば良かったのか、どんなところに問題点があったのか、次に同じようなことが起こったときにどう対処すればいいのか、その答えを部下自身に気づかせられるようにサポートしていきます。

3. フォローアップを怠らないこと

部下に業務を任せたあとも、いつでも部下が聞ける環境を作っておくことも大切です。部下たちは、リーダーが忙しそうにしていると「またあとからにしよう」と、リーダーの意図とは逆の行動を取ってしまうことがあります。

もしも、自身が忙しいのであれば、何かのついでに部下に声をかけたりして、自分から行動することも必要です。

4. 先入観や偏見に振り回されず、目の前のメンバーに向き合えること

組織の中には、自分の価値観と相容れない人もいます。先入観や偏見というフィルターを通して部下を見ていると、それは彼らにも伝わってしまうのです。

部下である彼らの力を引き出し、組織の力へと変えていくためには、曇りのない目で彼らと向き合うことが大切になります。

5. 自発的な行動を促すこと

部下に業務指示を出す際には、部下がリーダーから業務を押し付けられていると感じさせないことが重要です。押し付けられていると感じると、仕事にやりがいが持てなくなったり、学ぶ意欲を剥ぎ取ってしまいかねません。

業務への理解、自分の中でなぜこの業務が必要なのか納得させることによって、部下自らがこれがやりたい、挑戦してみたいと思えるようになるのです。

6. ビジョンの明確化と共有を怠らないこと

リーダーは、チーム全体の方向性を考えるのに、何を目標に行動するかを定めます。このとき、どんなチームにしていきたいのかをメンバーと共有することが大切。

またリーダー自身、自分がこのチームでどんなリーダーでありたいか、どんなリーダーであるべきかを考え、その目標を定めましょう。これは、リーダーやチームの判断や行動指針になるものですから、曖昧な目標ではなく、より具体性のある目標を定めるようにしておくことが重要です。

7. 全体を俯瞰し、予測を基に行動すること

メンバーたちの行動や業務の進行状況を見ながら、全体像を把握することはもちろん、常に今後起こりえる問題を予測し、回避する手段を講じる必要があります。

8. 顧客とメンバーのメリットを優先し、それを自分の利益と感じられること

自分にとって得になることやメリットを追求するよりも、顧客やメンバーにとってのメリットがどこにあるのかを常々意識し、それを与えることが自分の喜びとする奉仕の心をもちましょう。

また業務上で得た称賛や栄誉は、リーダー個人のものではなく、チーム全体への評価だと受け止められることも資質も大切です。

9. メンバーの自己実現へのサポートが積極的に行えることこと

メンバーそれぞれの個性や能力を見つけ出し、活かせる環境を与えてあげることもリーダーの役目。自分の力が活かせる環境を与えられることによって、部下たちは自己実現が可能となり、より仕事に対しやりがいを感じるようになります。

10. メンバーにとって成長機会の多い環境を整えること

部下たちを成長させるには、何よりも彼らが活躍できる場所を与えてやることに他なりません。リーダーは、部下たちにそうした環境を作り、与え、彼らの働きを静かに見守り、時には教え導いていくことが大切です。

サーバント型リーダーシップの素質がある人の共通点

サーバント型リーダーシップの才能がある人には、いくつかの共通点があります。これらすべてに当てはまる人は、サーバント型リーダーシップを持っている人です。

何の仕事に就いても新人教育係に必ず抜擢される

サーバント型リーダーシップをもつ人は、他者に上手に働きかけを行うことが自然にできるのが特徴です。そのためどんな職種、どんな業種に就いても、人を育てたりサポートする立場に抜擢されやすい傾向があります。

人に伝えたり、教えるのが上手い

サーバント型リーダーシップをもつ人は、全体的に他者に何かを伝えたり、教えることが上手。人が言いにくいような注意であったり、叱ったりといったことを、理性的に伝えつつも、相手の気持ちを汲み取り共感する感受性が強いためです。

相談をするよりされる

相談をする人というのは、相談相手を選ぶとき、無意識に「この人は聞いてくれる人かどうか」を基準にしています。サーバント型リーダーシップをもつ人は、人の話のしっかりと聞いてくれる力を持っているため、相談役にされることが多いのです。

細かいところによく気がつく

サーバント型リーダーシップをもつ人は、観察力が優れています。そのためちょっとしたしぐさや表情から、他者の心情や感情を感じ取ることが得意です。

さりげなくフレンドリーで親切

サーバント型リーダーシップをもつ人は、個を重んじながらも和を大切にし、人のお世話をするのも好きな傾向にあります。そのためフレンドリーさを出しつつも、それが相手の負担にならないように、押しつけがましくならない程度に親切なのです。

発言の内容がポジティブ

サーバント型リーダーシップをもつ人は、ネガティブな思考をポジティブ思考へとうまく切り替えることができます。そのポジティブ思考は、言動に滲み出るので、発する言葉はポジティブワードが多いのです。

サーバント型リーダーシップの素養を育てるには自分を知ることから

サーバント型リーダーシップは、ワンマン型リーダーシップよりも忍耐と精神的な強さが必要です。自分という人間がどんな人間かを知ることは、リーダーとしてメンバーに働きかけていく上で欠かせない要素。

自分を知れば、サーバント型リーダーシップを身につけるのに、何が足りないのかがわかります。それを実践の中で繰り返し意識することが、サーバント型リーダーシップの能力を育てていくことになるのです。