副業で自分のスキルを活かしたいものの、マイナンバーで副業がバレるのではないかと不安に思っている、という人は意外と多いようです。ここでは、マイナンバーから副業がバレるのは本当なのか、その事態を防ぐにはどうすればいいのか、詳しくご紹介します。
マイナンバー制度の概要
平成28年に運用開始された、マイナンバー制度。皆様の中にも、会社から提出を求められた経験がある方がいるのではないでしょうか。
ここではまず、マイナンバーとはどのようなものでなにに使われるのか、マイナンバーからなにがわかるのか、ということについて見ていきます。
マイナンバーはなにに使われるのか
マイナンバーとは、国民1人1人に割り振られる12桁の番号のことです。これは行政事務の効率化、社会保障・税に関する利便性の向上、所得の正確な把握による公平・公正な社会保障制度の実現を目的としてつくられました。
この制度下において従業員は会社にマイナンバーを提示し、会社は社会保険や源泉徴収などの手続きをする際にその番号を記載します。
そのため「国」は「誰が」「どこから」「いくら」収入を得たのかということを、マイナンバーにより正確に把握できるようになりました。
民間業者によるマイナンバー収集・利用には厳しい制限が
マイナンバーの利用場面は、「社会保障」「税」「災害対策」という3分野の手続きに限定されています。そしてマイナンバーの利用対象となる手続きについても、法令や条例によって厳格に定められています。
また、マイナンバーはあくまで国や行政が利用するためのものです。民間業者によるマイナンバーの収集や利用については法律による厳しい制限があり、これに反した場合は処罰を受けることもあります。
マイナンバーだけで副業がバレることはほとんどない!
マイナンバーから自分の収入源・収入額がわかるとなると、やはり気になるのは「副業が本業にバレること」でしょう。マイナンバーが原因で副業がバレる可能性としては次の2パターンが考えられます。
行政から会社に通知するケースと、会社から行政に問い合わせるケースです。
行政から会社に「副業」について通知することはあるのか
マイナンバーは、法令や条例によって定められた範囲でのみ利用されます。そのため行政から会社に対して、「この人は副業をしています」と通知するようなことはまずありません。
会社から行政に「副業」について問い合わせることは可能か
では、会社から行政に対して「この人は副業をしていますか」と問い合わせることは可能なのでしょうか。
こちらも答えはNOです。
マイナンバーは社会保障・税・災害対策のために利用されるものであり、従業員の就労状況などの調査に利用可能なものではありません。ですので、会社が行政に対して個人の副業に関する問い合わせをしたとしても、行政がそれについて回答することはまずあり得ないのです。
なにか特別な理由がある場合を除き、マイナンバーそれ自体から副業がバレるということはまずありません。
住民税の「特別徴収税額決定通知書」から副業がバレる可能性はある
マイナンバー自体から副業がバレることはなくても、手続き上マイナンバーを利用する住民税の「特別徴収税額決定通知書」が問題になってしまうケースはあります。
会社(本業)に通知書が届くまでの流れ
住民税の支払い方法には、「特別徴収」と「普通徴収」の2種類があります。これらのうち「特別徴収」というのは会社が住民税を支払い、これを従業員の給与から天引きするというもので、以下のような流れで手続きが進んでいきます。
- 従業員がマイナンバーを提出(本業・副業問わず)
- 会社が市町村に従業員のマイナンバーを提出(本業・副業問わず)
- マイナンバーをもとに、行政が個人の所得額を把握
- 所得等をもとに、住民税が決まる
- 会社に「特別徴収税額決定通知書」が送付される
疑われるのは住民税の額が本業の収入に比べて多い場合
ここで問題になるのは、住民税が個人の「所得」をもとに算出されるという点です。
この所得には副業によるものも含まれますので、本業の収入に比べて住民税の額が多い場合、副業をしていることがバレてしまう可能性があるのです。
どのくらい副収入があればバレるのか、住民税額にどのくらいの差があればバレるのか、といった点についてはケースバイケースですので、たとえ数万円程度の副収入であったとしてもバレる可能性はゼロではありません。
住民税は「自分で納付」を選択しよう
このケースにおいて副業がバレる根本的な原因は、住民税の支払い方法にあります。
住民税の支払いを「特別徴収」にした場合は総所得(副業の収入を含む)から算出した住民税を会社が支払うことになりますが、「普通徴収」を選択すれば、副業の収入にかかる住民税については、自分で納付することができます。そうすると会社に届く通知書には本業での収入しか反映されていないため、副業についてバレにくくなるのです。
確定申告書類には住民税の徴収方法について選択する欄がありますので、「自分で納付」を選択するようにしましょう。
きちんと確定申告をして副業バレを予防しよう!
副業バレを予防するための対策としてもうひとつ気をつけたいのが、「確定申告」についてです。
副業をする場合は確定申告が必要
副業をする場合、その収入が20万円を超えると確定申告をしなければなりません。この確定申告では、年末調整の有無に関係なく本業・副業を合わせた申告をする必要があります。
また副業の収入が20万円以下であっても、以下に該当する方は確定申告が必要な場合があります。
- 給与以外の収入がある
- 医療控除や住宅ローン控除を受ける
- 年末調整をしない
脱税発覚により本業の給料が差し押さえられる可能性が!
確定申告をする必要があるにもかかわらずこれを怠ると、「脱税」となります。
「副業をしている人なんて沢山いるからバレない」と考えている方は少なくありませんが、たとえ個人であっても税務調査が入る可能性は十分あります。調査によって脱税が発覚した場合、税金はもちろん、罰金の支払いを命じられるケースもあります。
そしてこれらの支払いができなかった場合、税務署は給与等を差し押さえます。するとそれがきっかけで、本業の会社に副業がバレてしまうことがあるのです。
副業バレを予防するためにも、確定申告は怠らないようにしましょう。
まとめ
マイナンバーが直接的な原因となって副業がバレることはまずありません。しかし、住民税の支払い方法など、手続きの中でマイナンバーを使うものが原因となり、副業がバレてしまう可能性は考えられます。
副業をする際はきちんと確定申告をするとともに、住民税の支払い方法を普通徴収にするなど、万全の対策を講じることをおすすめします。
執筆者:曽我部 三代
2013年より、フリーライターとして活動。これまでに副業やフリーランス、転職関連の記事を多数執筆。ここ数年は、フリーランスデビューしたばかり方向けの講師活動にも取り組んでいます。