「気がつけばすでにFXや不動産投資で副収入があるのだけれど、これって就業規則上の副業にあたるのか知りたい」という方って結構いますよね?この記事では政府のモデル就業規則を例に副業の禁止条項がどこに書かれているのか?もし禁止だった場合、どんな副収入がNGでどんな副収入がOKなのか解説します。

就業規則のどこを見れば副業についての言及があるのか?

自分が働いている会社の就業規則自体、見たことがない人が多いのではないでしょうか?ここでは、厚生労働省が公開している「モデル就業規則」というものを例に就業規則のどこに副業についての規定が書かれているのか?をみてみたいと思います。

モデル就業規則とは何か?

そもそもモデル就業規則とは、厚生労働省がホームページで公開している就業規則のひな型(記載例)です。厚生労働省がわざわざひな型を公開しているのは、労働基準法第89条で一定の条件を満たす企業(事業場)は、必ず就業規則を作成しなければならないと定めているためです。また、規則定める範囲・内容が広く企業の労力と法律に定める内容に違反したり記載内容が漏れたりしないようにするために参考として公開しています。

モデル就業規則の中の副業についての記載箇所

モデル就業規則の中には具体的に「副業」というワードは出てきませんが、第3章「服務規律」のなかの第11条に「遵守事項」として以下の記載がなされています。

第11条 労働者は、以下の事項を守らなければならない。
1 許可なく職務以外の目的で会社の施設、物品等を使用しないこと。
2 職務に関連して自己の利益を図り、又は他より不当に金品を借用し、若しくは贈与を受ける等不正な行為を行わないこと。
3 勤務中は職務に専念し、正当な理由なく勤務場所を離れないこと。
4 会社の名誉や信用を損なう行為をしないこと。
5 在職中及び退職後においても、業務上知り得た会社、取引先等の機密を漏洩(ろうえい)しないこと。
6 許可なく他の会社等の業務に従事しないこと。
7 酒気を帯びて就業しないこと。
8 その他労働者としてふさわしくない行為をしないこと。

この中の6項で具体的に副業について禁止と定めています。また例えば勤務中に株式投資を会社のパソコンで行ったり、会社の信用を損なうような風俗店に深夜まで勤務したりすると3項や8項に違反するので副業禁止の項目に該当する可能性があります。(2017年の3月に政府が策定した「働き方改革実行計画」では「副業・兼業の推進に向けたガイドラインや改定版モデル就業規則の策定」という項目があり、この第11条の記載が改定される予定になっています)

副業を明確に禁止する会社は、「副業」や「兼業」という表現を使って社員の遵守事項ではなく禁止事項として記載しています。あるいは、以下で説明する相対的記載事項のなかに具体的な副業に関する事項が記載されている可能性もあります。その理由について次の項目で説明します。

絶対的記載事項・相対的記載事項とは

労働基準法の第89条では就業規則に記載する事項の性質を下記の通り定めています。

  • 絶対的必要記載事項…必ず記載しなければならない事項
  • 相対的必要記載事項…労働者のすべてに適用されるルールとして定める場合に記載しなければならない事項
  • 任意記載事項…法律や公序良俗に違反しない内容であれば企業はとしてどのような内容でも記載できる事項

企業が副業に関する規則を就業規則の中で明示的に定めている場合、以下の「相対的記載事項のその他」に記載しなければならないと法律が規定しています。(相対的記載事項の最後のほうに記載されていることが多いようです)

絶対的必要記載事項の例

  1. 始業や終業時刻、休日、休暇などの労働時間関係
  2. 賃金の決定や計算・支払いの方法、賃金の締め切り・支払い時期、昇給などの賃金関係
  3. 解雇を含む退職に関する退職関係

相対的必要記載事項の例

  1. 職手当関係
  2. 臨時の賃金・最低賃金額関係
  3. 費用負担関係
  4. 安全衛生関係
  5. 職業訓練関係
  6. 災害補償・業務外の傷病扶助関係
  7. 表彰・制裁関係
  8. その他(事業場の労働者すべてに適用されるルールに関する事項)

任意記載事項の例

  1. 就業規則の制定目的や趣旨
  2. 就業規則の適用に関する規定など

具体的な副業条項はどのようになっているのか?

では、副業について具体的に記載している企業は副業についてどのように記載しているのでしょうか? 企業は就業規則を原則社外秘としているため公開している企業はありません。一般的に副業に関する企業の態度は「禁止」「条件付き許可」「許可」に分かれて、それに応じた記載がなされます。

ここでは例として「条件付き許可」の企業の記載例を紹介します。なお、副業に対する考え方は企業によって異なるため記載例はさまざまなバリエーションが考えられます。条件付き許可の企業でも、例えば深夜12時を過ぎる勤務や翌日の勤務に差し支えるような肉体作業、および風俗営業などでの副業は最初から認めない項目が作られていることもあります。

第○条(副業)
社員は、副業を行うときは事前に会社の許可を得なければ就業時間外といえども副業に従事してはならない。

第○条(副業の許可規定)
会社は、社員が副業をはじめる前に許可を得なければならない。許可を得ないで行った副業は利用を問わず認めない。
会社は、社員が副業の許可を求めたときは速やかに判断して諾否を通知する。

第○条(遵守規定)
社員が副業の許可を得た場合も会社の秘密を守り、いかなる損害も会社に与えてはならない。

第○条(違反規定細則と処分規定)
社員が、副業規定に違反した場合は細則に定める懲戒処分(懲戒解雇、減給、訓告など)を行う。
金山経営労務事務所, 竹内社労士事務所、社長のための労働相談マニュアルより

今の副収入が副業に当たるのか?

副業の定義というのはあるのか?

法律で「副業」に関する明確な定義はありません。

デジタル大辞泉(小学館)によると以下のように簡単な定義がされています。

本業のかたわらにする仕事

この意味からは本業以外になんらかの仕事を行うことは厳密には副業にあたることになります。

就業規則で副業禁止されていても問題にならないと思われる副収入

本業に支障をきたさない範囲の一過性の

  • 宝くじや競馬などの公営ギャンブル
  • ポイント収入
  • FX、株式売買
  • もともと持っている不動産資産

などは問題ならないと考えて良いでしょう。

就業規則で副業禁止されていて問題になる可能性の高い副収入

一方、就業規則の副業禁止と記載されている場合、禁止に該当するケースとしては以下があります。

  1. 本業に支障をきたす勤務形態で働く
  2. 勤務先企業の対外的信用を落とす業務で働く
  3. 勤務先企業の業務上の秘密を公開する
  4. 勤務先と競合する同業他社で働く
  5. 勤務先の取引先と取引をして同じ事業を行い、企業に損害を与えるなど

先の問題とならない例でいえば、常態化し利益の増加が行われている

  • FX、株式売買
  • もともと持っている不動産資産の資産運用

に関しては社内から妬みの目線を浴びていくと、下記の「本業に支障をきたしている」と判断されることもあると思いますので注意が必要だと思います。

まとめ

常態化しているFXや不動産投資で副収入については「本業に支障をきたす」かどうかの判断が会社に委ねられてしまうので注意が必要です。会社の空気を読みつつ、あまり熱中せずにこっそりやるのが良いでしょう。

記事制作/阪木朱玲