ポジティブアクションとは

男女労働者の格差を解消

ポジティブアクション 出典元:ポジティブアクション

ポジティブアクションとは、厚生労働省が主体となって進めている、女性の活躍の場をさらに広げようとする取り組みです。

日本には、男性は外で働き、女性は家庭に入るという文化がありました。そのため、従来より根強く残っている男女の役割分担意識を取り払い、労働環境における男女間の格差を解消しようとしています。

歴史的な流れとしては、1986年に差別的労働環境の改善のために男女雇用機会均等法が制定。さらに1999年には、男女共同参画社会基本法が施行されています。いずれも女性の労働環境をより良くしていくための政策です。

しかし、世界基準で見ると、日本女性の社会での活躍度はまだまだ低いことが指摘されています。女性の能力や視点を活かし、国力を底上げすることが日本の課題となっているようです。

国ぐるみの女性の活躍推進

ポジティブアクションは、国を上げた女性活躍の推進活動となっており、ポジティブアクション応援サイトも立ち上げられています。

自社のポジティブアクションについて、積極的な取り組みをサイト上で公表し、目標を宣言している企業は全国で2,000社を超えているようです。従業員300名以上の企業においては、事業主行動計画策定と公表が義務付けられています。

これらの企業の情報は、各社の取り組みアイデアをシェアできる場にもなっており、ポジティブアクションの活性化にもつながっているようです。また、社会的な企業評価の一端になっているため、人材募集などにも影響することになるでしょう。

ポジティブアクションの必要性とメリット

1. 女性のキャリア意識の向上

ポジティブアクションにより、女性社員の可能性が広がることは明らかで、キャリアアップ意識の醸成に役立てられています。

義務的に仕事をこなしていくのではなく、自らの能力を上げれば活躍の場があり、より充実した仕事をし、貢献度を高めたいという意欲につながります。

このことで、女性社員のチャレンジ精神も促し、より高度な経験のできる機会が増え、能力を向上させていくことにもつながっているようです。

2. 女性視点の新しい価値を創り出す

現代女性の社会進出の高まりは、女性の判断や意思決定の反映されるシーンが増えていることともいえます。つまり、社会のニーズに女性視点も含まれるということです。

ポジティブアクションは、企業の意思決定の場に女性を置くことで、女性視点を活かし、社会ニーズに沿う新しい価値を提供していくことにもつなげられます。

3. 労働力不足への対応

女性は結婚、出産、育児といったライフスタイルの変化がキャリアに影響を及ぼしやすいものです。

仕事との両立を支援する積極的な取り組みによって、退職ではなく働き続けるという選択のできる女性を増やせるでしょう。企業の従業員定着や優秀な人材の確保にも役立っています。

4. 男性社員にも刺激となり社内活性化

女性の意識向上や仕事への関わりが深くなることで、社内の男性社員にもよい刺激となるようです。組織の全体的なモチベーションの向上、ひいては業績アップ、社会的企業評価の向上につながっていきます。

ポジティブアクションの取り組み事例

1. 女性管理職の登用や育成

これまで機会が少なく、ロールモデルが不足していることもあり、女性社員は男性社員に比べて、出世意欲が低い傾向にあります。いざ管理職に昇進するチャンスが与えられても、「自信がない」「責任が重い」と感じる女性は少なくないということにも対策が必要です。

女性社員の管理職や役員への登用を増やすとともに、女性管理職候補者の育成にも力を注ぐ企業が増えています。

具体的には、既存の女性管理職をロールモデルとして交流の機会を提供したり、女性社員向けのキャリアアップ研修などが実施されているようです。

2. 女性社員の職域の拡大

女性社員の配置の少ない部署や職種にも、女性を起用して女性の職域の拡大に取り組む企業もあります。これまで男性の割合が多かった営業職をはじめ、専門技術職、技術工などに女性を配置することで女性の活躍の場を広げることができるのです。

起用された女性社員の意欲や可能性を引き出す効果だけでなく、部署内に新たな風を送り、男性社員や組織の活性化を促します。

女性の視点や意見が入ることで、顧客ニーズにもさらに柔軟に対応していくことが可能になり、顧客満足度を高める効果もあるようです。

3. 女性社員の採用拡大

採用時の女性の割合を増やし、社内の男女割合の差をできるだけ狭くするよう努める企業も増えています。女性社員の比率が高まることによって、女性管理職の比率を高めることにもつながるでしょう。

女性採用数を増やしていくためには、採用活動で女性応募者を増やさなければなりません。女性の注目度の少ない業界、企業、職種においては大きな課題となるでしょう。

このために、採用人事に関わる社員を女性にする、社内で活躍している女性社員の紹介。さらに、非正規社員の正社員登用の促進や正社員転換への条件の緩和に取り組む企業もあります。

4. 積極的な両立支援

出産や育児を経ても、職場に復帰しやすい環境づくりに積極的になる企業が増えています。女性社員の長期勤続を確保するためには欠かせない対策のひとつです。

具体的な取り組みとしては、産前産後休暇や育児休業の期間延長、育児休暇後の短時間勤務を可能とする期間の延長や制度利用条件の緩和、子供の急な病気や予防接種などの際に半日や一時間単位で取得できる有給休暇などを制定する企業もあります。

また、このような制度を女性社員が気兼ねなく利用して両立を図れるように、社内全体への両立支援制度の理解を、周知などで促していくことも重要なプロセス。女性社員を部下にもつ管理職の意識改革を目的とした研修を行なっている企業もあります。

ポジティブアクションの進め方

まず最初は現状の把握

ポジティブアクションを始めるには、自社の女性社員の状況や働く環境、活躍の度合いなどの現状を知ることが大切。

とくに女性社員が、自社で働くことを現状でどう感じているのか。また、自分のライフスタイルの変化が予測される女性社員自身が、自社での将来をどう捉えているかを知ることが大切です。

たとえば、女性社員対象のアンケートを行なったり、個別にヒアリングを実施したりするのも有効でしょう。女性社員を集めてのディスカッションなどで意見を集めてもいいでしょう。

ポジティブアクション応援サイトには、自社の女性の活躍度を測る診断ツールも用意されているので活用してみてもいいかもしれません。それらの情報を総合して、自社の課題や問題点を見極めていきます。

現状を把握した後は、取り組みの計画

集めた情報から見えてきた自社の課題や問題を解決するために、どのようなことを行なっていくのかを考えましょう。何人増やす、何%向上させるなど具体的な数値目標値を設定し、計画として落とし込んでいきます。

採用時の女性の割合、女性管理職の割合、女性の働き方をサポートする制度の活用率なども基準になります。女性だけでなく、社内全体の平均残業時間の削減や有給休暇取得率の向上などを目標値として掲げることも有効です。

取り組みの実施

計画に沿って取り組みを実施していきます。注意点として、計画通りに進まない場合は、何故うまくいかないのか、どの点で躓いているのかを考えて改善をしていきます。

必要であれば計画の修正を行うなど、早期の対処によって目標とする数値に近づいていくことが大切です。

計画、目標の見直し

計画から実施を進めて一定期間が経過した時点での成果を評価します。社内全体への意識づけとして、成果は社内全体に共有することが有効のようです。

計画当初に望む成果が得られた場合は、どの取り組みが有効だったのか、逆に望む成果が得られなかった場合は、その原因は何だったのかを突き止めるなどの入念な分析をおこないます。

その分析を反映させながら次期計画を立てていきましょう。

ポジティブアクションの問題点

ポジティブアクションの問題点として、女性だけのための優遇措置に注力することは、男性への差別にならないかという懸念の声もあるようです。このことについては、同じような取り組みをすでに行ってきた海外の先進諸国でも問題となっています。

採用活動での求人において女性の採用に積極的な記載をするためには、女性の割合が4割以下の職種に制限されています。

育児に関する休暇、両立制度などは男性社員にも適用範囲を広げておくことが重要で、その利用率向上にも努めるべきでしょう。ポジティブアクションに関する制度や取り組みに関しては、男性社員にも配慮することが欠かせないことのようです。

経営効果を実現に向けたポジティブアクション

企業がポジティブアクションの取り組むことは、女性の活躍の場を広げ、女性の能力開発にも有効となります。それだけでなく大きな企業力の向上につなげている企業も少なくありません。

人事や総務の計画や実施は欠かせないところですが、企業内への浸透には、経営トップの理解と意欲も必要となります。