フォロワーシップとは
ビジネスパーソンであれば誰もが、さまざまなシーンで学ぶ機会があるリーダーシップ。しかし、フォロワーシップについてはそう多くありません。
フォロワーシップとは、フォロワー(部下、リーダーを補佐する人)が組織のリーダーの支援、組織へ貢献するために、受け身ではなく能動的に・自律的に考え、行動することを指します。日本では言葉自体が定着して間もないため、あまり学ぶ機会がないとも言えるでしょう。
フォロワーシップとリーダーシップ
われわれ日本人は、強いカリスマ性やリーダーシップを持った上司一人に対し、複数の部下(フォロワー)が上司をサポートする側に回る(フォローする)という感覚が根強くあります。
しかし、ビジネス環境が急速に変化するいま、一人のカリスマの意思決定に任せればよいという時代はとっくに終わりを告げています。
企業や組織を適切に機能させるためには、強いリーダーシップも不可欠ですが、組織のリーダーではないフォロワーも、能動的・自律的な判断や行動が求められるようになっています。
フォロワーシップで組織を動かす11の具体例
「これからの時代はフォロワーシップが必要不可欠」とはいえ、実際にビジネスの現場で組織を動かすためには、どのような行動が必要となるのでしょうか?
経営者向けコーチングの第一人者といわれるマーシャル・ゴールドスミス氏の書籍『リーダーシップ・マスター』(英治出版)に、「フォロワーの正しい11の行動」が紹介されています。こちらを参考に、フォロワーシップで組織を動かす11の行動、その具体例を見ていきましょう。
1. 決定権者は誰であるかを考えて行動する
決定権者は誰であるかを考えて行動することは、すなわちフォロワーとリーダーの良好な関係構築につながります。一見すると「上司に気に入られる」「上司の媚を売る」という印象で捉えがちですが、意思決定の遅れは組織全体の致命傷となりかねません。
意思決定権を持ったリーダーが、的確な判断を下せるように行動することが、組織全体への貢献につながるのです。
2. 自分のアイデアは積極的に提案する
自分のアイデアが組織によい影響をもたらすと感じたら、上司が採用してくれるか否かにかかわらず、積極的に提案することが重要です。上司や組織、顧客のニーズ、気持ちを汲んだアイデアであれば、おのずと採用される確率は高まります。
3. より多くの人々の利益への貢献を考える
自部門の利益(目標、ノルマ)だけではなく、会社全体、ひいては顧客のニーズまでを俯瞰して、より多くの人々の利益への貢献を考えること。そうすることで今まで以上に視野が広がり、自身のリーダーシップを醸成するきっかけにもなります。
4. 本来の目的を第一に考え誠実に行動する
組織として目的に向かって取り組んでいる以上、どうしても人間関係上の摩擦や派閥抗争などが気になるものです。しかし、そういった企業本来の目的から大きく外れたことにエネルギーを使うことは、生産性を著しく低下させることにつながります。
限られた時間を効率的に使い、生産性を高めるためにも、本来の目的を第一に考え、誠実に取り組みましょう。
5. アイデアの現実的な費用対効果分析を提示する
積極的にアイデアを出すことが重要とはいえ、説得力がなければせっかくのアイデアも意味を成しません。ビジネスは最終的に数字がものを言います。冷静に数値的観点から費用対効果を分析し、数字でアイデアに説得力を持たせましょう。
6. 倫理違反に対しては「異議申し立て」を
昨今はとくに、企業倫理・コンプライアンスに注目が集まっています。倫理違反があるときは、フォロワーであっても異議申し立てをするべきです。高い倫理観を持ち、組織にとって何が一番重要であるかを、フォローする立場から考え、行動することが重要です。
7. 上司も完璧でないことを理解する
リーダーシップが行き過ぎた組織はワンマンになりがちです。上司にも失敗や弱点があるという事実を受け入れましょう。上司の足りない部分をあらさがししたり、非難したりするのではなく、先回りしてフォローすることができれば、フォロワーとして優れた仕事をしたと言えるでしょう。
8. 意思決定者の気持ちやニーズを考えて行動する
優れたフォロワーは対人マナーも優れています。会社や上司を非難することに時間を浪費するのではなく、顧客に接するように気持ちやニーズを考えて行動することが、ひいては組織の生産性を高めることにつながります。
9. 組織の最終決定は支持する
一部門を任された上司であっても、企業全体の中ではフォロワーの一人です。組織の最終決定を支持し、部下に説得力ある言葉で伝える必要があります。「上から言われた」「そう決まったから」では、部下を納得させることはできません。
10. 自分の行動が組織にプラスになっているか検証する
自分の行動が組織にプラスになっているかどうか、常に検証する癖をつけましょう。上司や会社に文句ばかり言っても、組織の健全化・環境の改善にはつながりません。
組織にプラスの変化をもたらすために、どのような行動をとるべきかを考え、質の高い行動に収斂していきます。
11. 未来志向で考え行動する
反省は大事ですが、過去に執着するだけでは何も生まれません。フォロワーは未来志向で、明日何ができるかを考えましょう。未来に焦点を合わせることができれば、過去の反省が未来への一手を考えるベースになります。
上司にも部下にも必要とされるフォロワーシップ
「11の具体的な行動」で見てきたように、フォロワーシップとはフォロワー(部下)だけの概念ではありません。上司の立場であっても、組織へ貢献するためにフォロワーシップの力を発揮するシーンが必ず訪れます。
またフォロワーは、フォロワーシップの考え方・行動を実践することで、フォロワー自身がリーダーへ成長する機会が得られます。フォロワーシップの概念を理解し、実際のビジネスシーンで具体的な行動に落とし込みましょう。