日本のプロ経営者の失敗が目立つようになってきた

これまで日本の企業では、サラリーマンとして入社し、出世競争に勝ち抜いた者が経営幹部になってきました。そして序列に従い、経営者に就任するというスタイルが踏一般的です。

ところが最近では、ベネッセベネッセホールディングスの原田泳幸会長兼社長、株式会社LIXILの藤森義明代表執行役社長兼CEOなど、生え抜きではないプロ経営者を外部から招くという新しい潮流が生まれています。その一方で、有名プロ経営者が次々に失敗し、退場していく姿も目立つようになりました。これを見て、「いったい何が起きたのだろう」と疑問に感じている人も多いかと思います。

そこで今回は、プロ経営者とはどういうものか、なぜ日本のプロ経営者は次々に失敗してしまうのか、解説していきます。

プロ経営者とは

プロ経営者とは、複数の会社で経営者として活躍した経験のある人のことを指します。対比される言葉としては、新入社員として入社し、社内の出世競争を勝ち抜くことで就任できる「生え抜き経営者」。そして、創業した経営者である「オーナー経営者」があります。

欧米では異業種間を渡り歩くプロ経営者は、決して珍しい存在ではありません。しかし日本では、2014年くらいから大手企業で招へいされるようになりました。旧来の人事制度の改革や財務体質の健全化という目的のために、経験豊富な経営者を外部より登用される動きが目立っています。

プロ経営者になるにはどうすればなれるの?

一般的には、ビジネススクールへの留学経験や経営コンサルタントとしての実務経験があればプロ経営者になれると思われていまが、この2つの経験がないプロ経営者も数多くいます。

実際にプロ経営者にインタビューしたところ、プロ経営者になるには以下のようなことが必要だということがわかりました。

経営者になろうという意欲

プロ経営者は、経営者として仕事をした経験があるわけですが、経営者になることができたのは本人が「経営者になろう」という意識を持ったからです。

これは経営者になることを、ずっと目指していたということではなく、経営者になるチャンスが到来したときに「経営者をやってみよう」と思うことを意味します。

上から指示がなければ仕事をしない人ではなく、自分から積極的に行動できる人が経営者に向いています。しかるべきタイミングで「経営者になりたい」と思う者だけが経営者になることができるのです。

困難な業務に取り組んだ経験

プロ経営者の多くは、20代のときに現場で困難な仕事をした経験があり、さらに30代では事業を責任ある立場で遂行した経験もあります。若いときに困難な仕事に取り組むと、失敗することもありますが、その経験を積むことで現場の実務に強くなります。

このような経験が経営者としてふさわしい現場に対する見方や考え方を養い、その結果としてプロ経営者になることができるのです。

失敗から学ぶ姿勢

若いうちは現場で実務に取り組んでいると失敗することはありますが、経営者になるためには失敗から学ぶことが大切です。失敗を経験するだけでは足りなくて、失敗の経験から学んでいくという姿勢を常に持たなくてはなりません。常に学習を続けていくことがプロ経営者への道へとつながっているのです。

なぜ日本のプロ経営者は失敗するのか?

では次に、日本の企業でプロ経営者と言われる人の失敗が目立っていますが、これには以下のような理由が考えられます。

そもそもプロ経営者と言えない人がいる

プロ経営者の代表のようにマスコミで取り上げられている人の中には、本当の意味でのプロ経営者とは言えない人が含まれています。

よく外資系企業でのキャリアがある人が、プロ経営者であると認識されますが、正確ではありません。たとえば、外資系企業の日本法人のトップだった人がプロ経営者であるかのように言われるが、本当にそうでしょうか。

実は経営における重大な判断は本社の方で行なっていて、経営判断に関する実質的な権限はほとんと持っていないことがあります。日本法人のトップは、本社管轄の営業所トップと言えばわかりやすいでしょう。

経営者としての能力や経験のない人が、プロ経営者として世間から注目されているという事例も数多くあるのです。

専門外の分野へ参入

失敗するプロ経営者で目立つのが、専門外の業界へ参入するケースです。経験のない業界へいきなり飛び込んで、業界のことが理解できていないのに経営をするのは、簡単なことではありません。

とくに専門性の高い業種であれば、製品や製造方法、マーケット、顧客などについて短期間で理解するのはほとんど不可能です。そのため、どの業種でも普遍的に通用するようなことしか言えなくなるのです。

たとえば、「売上げのアップ」「利益率のアップ」「経費削減」「社員のモチベーションのアップ」といったようなことを言います。だれでも言えるようなことしか言わないのですから、結果は出るわけがないのです。

経営者としての実務経験がない

経営コンサルタント出身の人が、プロ経営者として登用されて失敗するというケースもあります。たしかに経営コンサルタントは経営に関する知識があり、経営者へアドバイスできます。経営コンアルタントとしての実績があれば、経営をうまくできると期待するかもしれません。

ところが、経営者としての実務経験がないため、実際にプロ経営者として経営に取り組んでみるとうまくいかないことが多いのです。プロ経営者には、知識だけでなく経営者として結果を出したという実績が要求されます。

京セラの稲盛さんが日本航空の再建で、見事に業績を回復させたのがその最たる例です。

プロ経営者を招く場合、慎重さが要求される

プロ経営者とはどういうものか、なぜ日本のプロ経営者は次々に失敗してしまうのかについて解説しました。

プロ経営者を社外から登用したい企業は、社運をかけて決断される場合が多いかと思います。一方で、プロ経営者を社外から登用するというスタイルは、欧米型の経営システムに適合するものであり、同じスタイルで日本の企業へ導入しても失敗する可能性は高くなります。

日本型の経営システムは欧米のシステムとは異なるので、その違いを把握した上で、自社にプロ経営者を登用するかどうかを判断することが大切です。