最近のNPR / Maristの調査では、アメリカ人の30%はフルタイムの仕事に加えて、追加収入のためにギグなど、何らかのサイドワークをしていることがわかりました。

博物館司書エミリーさんの場合

エミリー・ドハティさん(28歳)は博物館でのフルタイムの仕事の後、〝毎日何百万人ものアメリカ人がしていること″を行っています。次の仕事へ向かうのです。彼女の二つ目の仕事とは、ペチコートを身に着け、歴史博物館や国立公園で植民地時代の女性に扮して歌ったり踊ったりすることです。彼女にとって一か月の出費を賄い、月に500ドルの学費ローンの返済をするためには、このサイドワークは不可欠なのです。

「私はいつか自分の家を買いたいの」とバージニアに住むドハティさんは語ります。「それを可能にする唯一の方法が、こうして二つの仕事をこなすことなんです。」ニューヨーク連邦準備銀行によると、学生ローン債務は1兆4千億ドル近くにまで膨れ上がっているそうです。

サイドワークの弊害

ドハティさんのように二つの仕事をこなすということは、週末にも自分や友達のための時間がほとんどもてないことを意味します。彼女の借金は少しずつ返済されていますが、精神的な費用は高くつきます。彼女は毎日午後5時に仕事を終えると、夕食を温め、衣装に着替えるために家に直行します。そして夜、さらに4時間働きます。就寝は午後11時、翌日も同じことを繰り返すのです。週末に彼女が出演する公演は8時間も続きます。

サイドワークのために招かれた結婚式に出られなかったり、友人と夜外出することもできず、「これほど長時間働いていると、少しずつサポートシステムを失ってしまうんです」と彼女は言います。

シカゴ大学ソーシャルサービス・マネージメントスクールのスーザン・ランバート准教授は、このような労働が人々の幸福や家庭生活に与える影響を懸念しています。このような労働者たちは「仕事を取るか、自宅で子供といっしょに夕食を取るか」という難しい選択に頻繁にせまられています。

二児の父親ジョンさんの場合

ジョン・ジェイコブズさん(31歳)はミルウォーキーの物質中毒セラピストとしてフルタイムで働く二児の父親です。彼は「生活の中の微妙なバランスが大きな挑戦になることがある」と告白します。何年もバーテンダーのサイドワークをしていた彼は昨年、より時間の融通の利くLyftでの運転に転職しました。

バーテンダーだったときよりも収入は減りましたが、彼の決定は父親であることを優先させた結果の選択。2歳の息子が「夜、お父さんは家にいる」というとき、それが正解だったと感じるそうです。

しかし収入を減らすことは、博物館司書のドハティさんの選択ではありません。彼女は毎月の学生ローンの支払いに追われ、多くのムーンライター(夜間のギグ労働者)たちのように、財政面の安定に向けて努力していると話します。「将来的には、財政的な安定が私を幸せにしてくれることを願っています。

契約労働者の登場

そのフレキシブルな労働形態のために、アメリカではサイドワークだけでなく、メインワークでも契約労働を選ぶ人が増えています。以下のグラフは、NPR / Maristが昨年12月にアメリカの成人1,267人を対象に行った調査の結果です。 契約労働者の収入はより多く変動する

このグラフは、契約雇用労働者の収入がフルタイム雇用労働者と比べて、季節ごとに大きく変動することと、いつ解雇されるかわからない不安定さをかかえていることを示しています。

デンバー郊外のレストランで契約労働者として働くトム・ハンセンさん(39歳)の収入は、季節によって「祝宴か、飢饉か」というほど差があるそうです。ホリデーシーズンで特別に忙しい年末の12月にはシフトも十分ありますが、それが過ぎればレストランも閑古鳥。

奥さんのジーナさん(37歳)は「クリスマスシーズンは素晴らしかったけど、1月に入ると収入は半減よ。やっていけないわ」ともらします。彼女自身はスターバックスで、日の出から午前11時までの勤務。二人とも再婚で2人ずつ幼い子供がいるからです。

「昨年良い収入があったので家族でちょっと遠出したんです。ところが帰ってきたら、仕事が一向になくて家賃も払えなくなりました。そういうときは自信がなくなりますね。」

チップの収入もあるものの、一月の収入を予想することは不可能な状態のハンセンさんは、家賃が足りなくなるとLyftで運転手として働いて補うことも。ハンセンさんのように収入の不安定な人々が利用しているプラットフォームにはLyft のほかにもeBay、 Airbnb 、Uberなどがあります。

まとめ

現在アメリカの労働者の5人に1人が契約労働者で、特別のプロジェクトや契約で取り決めた期間の仕事をしています。それらの契約労働者のほぼ半数が、ハンセンさんのように季節や月ごとに収入の大きな増減を経験しています。

アメリカでは10年以内に契約労働者とフリーランサーが、全労働力の半数を占めるようになると予測されています。彼らの当面の課題は、いかに収入の波を安定させるか、そしてコンスタントに仕事が入るようにするにはどうすればいいかということでしょう。

参考記事:

記事制作/シャヴィット・コハヴ (Shavit Kokhav)