欧米ではフレキシブルワークが進み、伝統的な企業労働を意識的に避ける人たちがますます増えてきています。米国Freelancers Unionによれば、5,500万人以上の米国人が独立したコントラクターやムーンライターとして働いており、この数は過去2年間で200万人増加しています。米国のビジネス・ファイナンスソフトウェア企業Intuitは、2020年までに、米国労働力の43%がフリーランスになるだろうと予測しています。

これまでギグ労働の中心は、企業にレイオフされた人や、恒久的なポストを得ることのできなかった人々でしたが、まもなくギグ労働者が米国労働人口のメイン部分を占めるようになるというのです。

フリーランスボードは混雑状態

近年フリーランス経済の舞台は、混雑状態にあります。そんな中で今起こっているのが「自己をほかの大衆から切り離そう」とするフリーランサーや、それを支える企業の動きです。

前回お伝えしたタイのプラットフォームFastworkには、50種類の専門分野に4千人のフリーランサーが働いていますが、実際の応募者は5万人もいるのだそうです。

高い需要は「才能の短期雇用」に集まっています。昨年のCareerBuilderの予測では、雇用者の半数以上がコントラクターを求めており、それは前年から47%増加しています。

選択的であり続けること

ギグ経済の勢いが高まるにつれ、溢れかえるポートフォリオの中から、トップの才能だけをピックアップするプラットフォームが最近複数登場しています。その中の一つ、編集者、デザイナー、および広報担当者と、書籍作家とを結びつけるプラットフォームReedsyは、出版業界のエリートだけがサービスを掲載できるサイトです。

同サイトの共同設立者エマニュエル・ナタフさんは「私たちのアイデアは〝非常に選択的であり続けること″です。それと引き換えに、Reedsyは経験豊かで献身的な本作家からの収益性の高いプロジェクトをお約束します」と言います。ナタフさんによれば、Reedsyに所属するフリーランサーたちも、彼らだけのコミュニティの一員であることを好んでいるのだそうです。

毎週同社に届くフリーランサーからの応募は300件、その中から採用されるのは5名ほど。Reedsyが一月に取り扱う数百の書籍プロジェクトは、わずか750人の専門家で賄われています。

テクノロジー・マーケットプレイスのGigsterの創業者ロジャー・ディッキーさんも「うちは、ソフトウェアエンジニアリングプールの上位1%のフリーランサーのみを、経験とスキルレベルに照らして雇用しています」と語っています。

Working Not Working

エリートフリーランサーに特化したプラットフォームは、ビジネスとして果たして成り立つのでしょうか。広告とハイテク業界のエリートフリーランサーサイトWorking Not Workingの共同創設者ジャスティン・ギニャックさんは「最初から収益は上がっている」と言います。

まずはこのビデオ(https://workingnotworking.com/)をご覧ください。このタレントプールにアクセスするために企業は毎月料金を支払っていますが、「ここに来れば仕事をやってくれる人が必ず見つかる」という信頼関係がすでに築かれているようです。「入ってきた仕事は速やかにこなす」と口にするワーカーが複数いることからも、雇う側、雇われる側共に効率の良さを評価しているようです。

事業拡大してもエリートに留まる

しかしギニャックさんは、選りすぐりのフリーランサーだけのマーケットプレースが容易に構築されないことにも注意しています。「キュレーション(精選化)は、成長のアンチテーゼだ」と彼は言います。

彼とアダム・トプキンスさんが、フリーランスのコピーライター、アートディレクター、デザイナーが広告業界リクルーターに利用可能であることを伝えるための手段としてこのサイトを構築したのは、2011年のこと。初期には招待のみでしたが、今では誰でも応募することができます。それにもかかわらず、応募者からメンバーとして受け入れられるのはわずかに10~15%のみ。「当初は〝クラブ″のようなものでした。今でも少し大きめの〝クラブ″ですよ」とギニャックさん。

当プラットフォームの会員基盤は2014年の2,500人から今では9,000人に増えましたが、同社の200人の審査員パネルにポートフォリオを見てもらうのを待っている応募者や、既にポートフォリオを不合格判定された人たちも、サイト上に「候補者」として残ることができます。

リクルーターたちは、メンバーと候補者の両方から採用を検索できます。サイト上の約2万人の非公式のメンバーがプラットフォームにとどまっていることについて、ギニャックさんは少し苛立ちを覚えています。「コミュニティの80〜90%が候補者になっているのは、少し変だ。彼らをカットしてやっていくには、どうしたらいいだろう。」

エリートフリーランサー選別の問題点

ビジネスとして収益を上げ続けられるかという課題のほかにも、このようなエリートサイトにはいくつか問題があります。Reedsyのナタフさんは「誰が選ばれるのか」についても大きな疑問があると語っています。彼が考えているのは「フリーランサーの選別後も、多様性を保ったコミュニティを確保しなければならない」ということです。「そうしなければ、いつも同じコンテンツで終わってしまう。」Reedsyのゴールは、さまざまな分野について質の高い仕事をしているさまざまな著者の必要に応えることだからです。

HiredUpworkのようなすべてのフリーランサーに門を開いているサイトにも、今ではリクルーターが少数のフリーランサーを招待できる選択肢ができています。

このような新しい環境は、自律性を追求して企業世界を去ったフリーランサーにとって、悪化する可能性もあります。プラットホームがフリーランサーの比較価値を決定すると、一部のフリーランサーは、彼らが望むように収益をコントロールすることができなくなるかもしれません。契約労働者は自身の健康保険や退職貯蓄を支払う必要があるので、企業での仕事よりも脆弱なポジションになる可能性があります。

まとめ

より多くの労働者がフリーランスになるにつれ、どのマーケットプレイスでもより高度なアクセスへの競争は激化していくでしょう。

米国Freelancers Unionはすでにヘルスケアと退職パッケージを提供しており、マーク・ワーナー米上院議員は、職場に根ざした利益を提供するためのモデルをテストする法案を作成しました。「時の経過とともにこれらの努力は、トップレベルのフリーランサーやその他の誰にとってもより柔軟なものになる」と彼は言うのですが、日本でもこのような取り組みが早急に望まれるところですね。

参考記事:https://www.fastcompany.com/40460457/you-cant-gig-with-us-why-the-freelance-economy-is-getting-more-cliquey

記事制作/シャヴィット・コハヴ (Shavit Kokhav)