以前、世界をリードするフリーランス経済6大国をご紹介しましたが、今回は世界のオンライン市場シェア16.8%、インドに続いて世界第2位のバングラデシュのフリーランス事情をご紹介します。バングラデシュの登録フリーランサー数は65万人、そのうち定期的に働いている人は約50万人で、年間1億ドル(112億1,110千万円)を稼いでいます。
オックスフォード大学の統計
英国のオックスフォードインターネット研究所によると、バングラデシュのオンライン外注労働者の22%がソフトウェア開発と技術の分野で働いており、これは全世界のオンラインフリーランサーの3.7%に当たります。
またフリーランサーの約4割(世界の6.8%)が、販売およびマーケティングのサポートに携わっています。約25%(世界の4.2%)はクリエイティブなマルチメディアの仕事をしており、約3%(世界の0.5%)はライティングと翻訳、事務とデータ入力に携わる人は7%(世界の1.3%)、プロフェッショナルサービスで働く人は2%(世界の0.4%)います。
フリーランサーの収入は破格
バングラデシュの平均賃金は月額60ドル(約6,727円)前後と言われています。しかし、フリーランス業ではそれをはるかに上回る収入を得ることができます。22歳のアブ・カハールさんは、現在1か月あたり50,000タカ(約6万6,976円)を稼いでいます。彼が低所得世帯の出身で、教育証明試験にも2度失敗していることを考えると、これは驚くに値する収入と言えます。彼はどのようにこの成功を手に入れたのでしょうか。
彼の人生を変えたのは、ウェブに対する情熱です。「ある日私は〝学んで収入を得るプロジェクト″のトレーニング広告を見て、すぐ応募しました」とカハールさん。デジタルマーケティングのトレーニングを受けた後、上記のような収入を得ることができるようになったのだそうです。
政府のビジョン
カハールさんの受講したデジタルマーケティングのトレーニングコースは、最も恵まれない若者にもデジタルビジョンを浸透させようとする、バングラデシュ政府が提供する無料コースです。このコースの受講後カハールさんの収入は上がり、土地を持たずに農業を営んでいた父親にも土地を購入することができました。最近では月に1,000ドル(約11万2千円)稼ぐことができているそうです。
政府が取り組んでいる様々なイニシアチブのおかげで、バングラデシュではカハールさん同様、技術に精通した数千の若者が、情報通信技術の外注市場に革命的な変革をもたらしています。
このコース以外にも、政府はフリーランサーにより高い訓練を提供するため、シェイク・カマルのIT訓練とインキュベーションセンターを設立しています。国の人口の7割が若者であるため、政府は彼らをITに精通させ、フリーランスを通じてITベースの仕事に従事させようとしているのです。
自己雇用から雇用創出へ
政府はアウトソーシング研修プログラムで、グラフィックデザイン、ウェブデザインと開発、デジタルマーケティングのICT(情報通信技術)の3分野で、1万3千人の失業者を養成する予定です。すでに1万1,920人が訓練を終え、自営業になる以外に、他の人にも仕事を提供するようになっています。
プログラム終了者の一人は、年を取り多くの雇用のカットオフが近づいたので、あらゆる分野の仕事を探しまわっていた。この訓練を受けて、いい収入を得られるようになった」と語っています。彼のビジョンは100人雇用できるITセンターを設立すること。その目標に向けて努力中で、すべてが軌道に乗っているそうです。
今後の課題
この国の農村地域では、依然として帯域幅と質の高いインターネットサービスの欠如が問題になっています。ブロードバンド接続のある地域でも、作業をするには十分な速度でないのが現状です。政府は手頃な高速インターネットを確保するため、2018年までに組合レベルへの光ファイバーの接続を目指して取り組んでいます。
また、現在の政府の職業トレーニングのほとんどがエントリーレベルであることも、労働者が高給な仕事を得る上での障害になっています。国際的な需要レベルに焦点を当てて、より高い賃金の仕事に就けるようなトレーニングが望まれています。
まとめ
バングラデシュは1億6,300万人の人口のうち、およそ65%が25歳未満のアジアでも人口の若い国の一つです。現在、インド、中国、フィリピンなどで雇用コストが上がり、グローバルな雇用主が代替案を探しているため、バングラデシュには外注業界で成功できる大きなチャンスがあります。
そのためには、一般教育しか受けていないほとんどの外注労働者に、業界のニーズに基づいた高等訓練をほどこすことが必要です。
「2021年までにデジタルバングラデシュのビジョンを現実化する」という目標をもち、すでに職業訓練や高速インターネットの建設に政府が乗り出しているこの国ですから、近い将来大きく飛躍することは間違いないのではないでしょうか。
参考記事:http://www.dhakatribune.com/career/2017/09/20/freelancers-turn-bangladesh-hub-ict-outsourcing/
記事制作/シャヴィット・コハヴ (Shavit Kokhav)