以下は、国際労働機関(ILO)がまとめた「2015年の世界の雇用と社会的展望」です。この図では、契約なしに労働をしている労働者の割合が高いほど赤色が濃くなっています。全体的に見ると、全世界の労働者の6割以上が雇用契約を締結せずに労働していることがわかります。そのほとんどは開発途上国で自営や家事に携わっている労働者です。しかし、賃金労働者や給与所得者の間でも、恒久的な契約を結んでいるのは半分以下の42%となっています。

永続契約のない労働者の割合

今日、フリーランサーは米国労働力の35%、EU労働力の16.1%を占めています。これらの数字は、クリエイティブ系の起業家からタスク労働者まで、フリーランス労働が世界中で増加していることを示しています。ジャーナリスト、社会学者、人事スペシャリスト、さらにはフリーランサー自身が、フリーランスについての「真実」を明らかにしようと、この現象の分析をしています。

今回はフランスのニース・ソフィア・アンティポリス大学組織研究学のアンソニー・ユスノー教授の分析を見てみましょう。

プレカリアート?

ユスノー教授は、フリーランサーの多様性を「クリエイティブ階級からプレカリアートまで」と称しています。「プレカリアート」とは、「不安定な」という意味の英語のprecariousと、「労働者階級」のプロレタリアートを組み合わせた単語で、1990年代以後に急増した不安定な雇用労働状況における非正規雇用者や失業者の総体を表している言葉です。

教授は、

ギグエコノミーは、絶え間なく進化する現象のように見える。そしてフリーランスは、しばしば伝統的な労働形態からの解放、力強さ、魅力的なものとして描かれている

と言います。しかし、現実ははるかに複雑なものです。

OECD諸国の研究では、フリーランサーは主にサービス部門(男性の50%、女性の70%)で働いていることがわかります。それ以外のフリーランサーの職分けは、オンラインアシスタントから建築家、デザイナー、フォトグラファーまで、あらゆる職種に及んでいます。

また最近の別の調査によると、OECD諸国のフリーランサーの大半は、パートタイムやフルタイムの職業を補うために契約労働をしているワーカーであることがわかっています。LyftやUberのようなサービスが、個人車を収入源に変えることを可能にしたのがこの例です。

そしてこれらのフリーランス労働から得られる収入には大きな幅があることを、教授は指摘しています。自宅から翻訳仕事をして月に数百ユーロ稼ぐ人もいれば、その10倍も稼ぐような、フリーランスの作業療法士もいるのです。

フリーランサーの多様性

おそらくフリーランスで最も魅力的な職種は、コミュニケーション、メディア、デザイン、芸術、技術などを専門とする、クリエイティブな分野でしょう。これらは機敏で、他とのネットワークをもち、高い専門教育を受けて、グローバル化された労働者たちです。ウェブデザイナー、ブロガー、コンサルタントなどは、常に最新トレンドの先端にいます。

その一方で、オンラインのフリーランスプラットフォームで多くの時間をかけて懸命に働く「プレカリアン」もいます。このようなタスク仕事の多くは、高い専門性を必要としないため、容易に交換がききます。故にこれらのオンラインヘルパーには、雇用の安全性は保証されていません。

クリエイティブで高収入を得ている階級と、十分なギグタスクを手にするのに苦労している人たちとの間に、たくさんの中間者がいます。まともな生活を送るために奮闘するブロガー、以前失業に直面していたオンラインアシスタント、グラフィックデザイナーとして週に数時間小遣い稼ぎする学生たち。

このようにフリーランサーは、教育的背景、動機、野心、必要性、仕事への意欲が異なる、多様な人口を構成しています。

フリーランスは現在、9時から5時の仕事を逃れるための選択肢となっていますが、必要に迫られてギグタスクに頼っている米国のフリーランサーは37%と、2014年の47%からかなり減少しています。

フリーランスは労働市場を乗っ取るか?

いかにフリーランス労働が台頭していると言っても、もちろんこれはサラリーマン制度の終焉ではありません。フルタイムの企業ベースの仕事は、ほとんどの先進国で依然として雇用の基準であり続けています。それと同時に、欧米では在宅勤務や自動化の増加と、クラウドソーシングの無限の潜在性に伴って、ますます多くの企業が少ない従業員で事業を運営する方向に向かっています。

これは必ずしも失業率の上昇を意味するものではありません。これはフリーランサーの増加を意味するからです。

ユスノー教授は「フリーランスの台頭は、特に共同作業の観点から、将来の仕事の重要な目に見える指標となる可能性がある。フリーランサーたちは既にプロジェクトの共同管理を促進しており、企業、顧客、そして社会全体との生産、コミュニケーション、コラボレーションもまもなく可能になるだろう」と予測しています。

まとめ

ユスノー教授が、フリーランス労働を「共同作業の観点から」注目しているところが新しい見方ではないでしょうか。フリーランサーが企業労働者と共同でプロジェクトを管理できるようになると、これら二つの労働形態がうまくコラボして、理想的な労働環境が作られていくのではないかと期待できます。

参考記事

記事制作/シャヴィット・コハヴ (Shavit Kokhav)