引き続き、公認会計士としてベンチャー企業のIPO支援や、M&A支援業務で活躍中の江黒氏に、個人として仕事をするために大切にするべきことは何かをインタビューします。
江黒氏は、個人として仕事をつくるために大切なことは、「人とのご縁」と「目の前の仕事に全力を注ぐこと」だと説きます。
今回は、独立開業前に江黒氏が取り組んでいたこと、また現在も継続して続けていることを具体的に伺いたいと思います。
独立すると決めたらやるべきは人脈作り
Q:独立開業前に取り組んでいたことを具体的に教えてください。
独立する前には、自分から積極的に交流会やセミナーを開催したり、経営者の集まる会合に出かけて顔を覚えてもらったり、ブログを書いて情報発信をしたりと多くのことに挑戦していました。
当時は、所属していた事務所をどうやったら大きくできるか、という考えから実践していたことですが、結果として実施していたことすべてが人脈づくりにつながり、独立した今でも役に立っているのです。
独立や転職を決心したら、まず期限を定め、目の前の仕事に全力を注ぎ、人とのご縁を大切にすることが大切です。そうすることで、自分自身の名前が磨かれていきます。
Q:個人で仕事を得るには、自分自身の名前を磨くこと=ブランディングするということですね。
前回お話ししたように、独立後最初のお客様は、イベント会場で目の前に座っていた元クライアントの方々でした。
まさに奇跡の出会いだったのですが、振り返ってみると独立前に実践していたことが少なからず寄与しているのではないかと思うのです。
自分のブランドを作るため実行している地道な努力
Q:ご自身のブランディングのために、現在も続けていることはありますか?
現在も実践していることは、「勉強会や交流会の開催」「情報発信(ブログの執筆)」「人と人を結びつける(紹介)」「年賀状や暑中見舞いの発送」の4つです。
Q:勉強会や交流会を開催とは大変そうですが...
難しいことではありません。会議室や懇親会会場を予約して、メールやSNSで参加者を積極的に募れば誰でもできてしまいます。
こういった会を開催することで、会場に来てくれた人同士を結びつけることができますし、何か意図をもって自ら「今回はM&Aの情報交換会です」や「IPOを目指すベンチャー経営者の会です」と参加者を選ぶこともできます。自分が主催者となれば、参加者の皆さんと満遍なく話すこともできます。
Q:ブログで情報発信するメリットは何でしょうか。
私はブログ上で、会計ネタやビジネス本の紹介を行っています。1回のブログの執筆に15~20分かかりますが、情報発信をすることで多くの読者から重宝されます。
また、メールマガジンと異なり、ブログは読者が能動的に読みに来てくれるので迷惑になりません。ブログがご縁で出会った方も多く、独立後のクライアントの中には「江黒さんのブログを見て、ぜひ相談したいと思ったのです」と言ってこられる方もいます。
最近では名刺交換をすると「江黒さんのブログ、以前から読んでいます!」とおっしゃっていただける方も多く、ブログを続けてきて良かったと本当に思っております。
Q:人と人を結びつける(紹介)について教えてください。
「自分がこの人に役立てることは何かないだろうか。どなたかを紹介できないだろうか」と考えることをクセづけるようにしています。
ビジネスは人と人が結びつくことで成立しますから、できるだけ紹介の場を提供することを心がけることが大切だと思います。
Q:年賀状と暑中見舞いとは意外ですが、今でも役に立つのでしょうか。
今の時代からすると古めかしく思う方も多いと思いますが、年に2回自分の近況を報告し挨拶ができるのですから、活かさない手はありません。
私の場合は年賀状と暑中見舞いについて1,000枚ほど送るようにしていますが、必ず一言は直筆で書き入れるようにしています。
全部書きあがる頃には、毎回腕がしびれてしまうのですが、印刷済みのものをただ送るより、たった一言でも書き込むことで、受け取った側の印象はまったく変わるのです。
現在、社外監査役を務めている会社の一つに、2006~2008年頃に仕事をさせていただいていた会社があります。一度はご縁が途切れていたのですが、その間も暑中見舞いと年賀状は欠かさず送っていました。またその会社のニュースなどを見聞きしたときは連絡などをして関係を保っておりました。
すると、「江黒さんは当社と契約が切れた後も、毎年一言を入れた年賀状や暑中見舞いを送ってきてくれて、本当に信頼がおける方だと思いました」とおっしゃっていただいたのです。
続けることによって地道な努力が大きな価値になる
Q:何事も継続は力なりですね。
そうです。自分が取り組んできたことを総括すると、大事なことは「続けること」を実践してきたからだと思います。
年賀状は、1回送ったくらいで覚えてもらえるものではありません。毎年欠かさず送ることで、はじめて相手の印象に残るのです。そこにたった一言でも、直筆のメッセージを入れておくと、目を通す瞬間、少しだけ自分のことを思い出してもらえるのです。
ブログの場合も同様です。私は2008年9月から書いているのですが、もう丸7年になりました。7年間、ブログ経由で何人の人と出会ったことかと考えると、継続することの重要さがよく分かります。
Q:ブログは一度挑戦したものの、途中でやめてしまったという方も多いですが、続けるコツのようなものがあるのでしょうか?
とにかく力まず、気楽に書いていくことを意識すると良いかと思います。
私の場合は、会計の知識の習得やビジネスの話題や情報を収集する日常の中で「これってブログに書いたら喜ばれそうだな。●●さん、●●社に教えてあげたい情報だな」という記事をアップしていくだけです。
特に会計系のネタは豊富にあるので、公認会計士はネタ集めに苦労することは少ないです。
Q:会計系のネタ以外に、書籍レビューもブログで書いてらっしゃいますね。
ビジネス書を読むのが日課となっているので、その中で「読んで良かった!」という本をブログで紹介していくだけでよいので、手間はそれほどかかりません。
書籍を紹介していると著者の方から連絡をもらい食事に行ったことや書籍のプレゼントをいただくこともあり、ブログでの情報発信力に驚いております。
公認会計士は、仕事柄多くの情報を得ていますが、個人や組織人に関わらずプロフェッショナルとして仕事をするのであれば、自分の専門分野の最新の情報は常にインプットしておく必要があるでしょう。
そんなインプット情報から、紹介したら他の人の役に立ちそうだな、という内容をまとめてみると良いかと思います。
Q:出来栄えよりも、まずは続けることが大事だということですね。
その通りです。何事も、一度きりでは大きな力にはなりません。些細なこと、簡単なことでも、継続することで、信じられないほど大きな力になるものなのです。
本日はありがとうございました。
Q:こちらこそありがとうございました!
取材・記事作成:畠山 和也
大学卒業後、公認会計士として大手監査法人において製造業、小売業、IT企業を中心に多くの会計監査に従事。
2005年にハードウェアベンチャー企業の最高財務責任者(CFO)として、資本政策、株式公開業務、決算業務、人事業務に従事するとともに、株式上場業務を担当。
2005年より中堅監査法人に参画し、情報・通信企業、不動産業、製造業、サービス業の会計監査に従事。またM&Aにおける買収調査や企業価値評価業務、TOBやMBOの助言業務も多く担当。
2014年7月より独立し江黒公認会計士事務所を設立。
会計コンサル、経営コンサル、IPOコンサル、M&Aアドバイザリー業務の遂行に努める。
専門家と1時間相談できるサービスOpen Researchを介して、企業の課題を手軽に解決します。業界リサーチから経営相談、新規事業のブレストまで幅広い形の事例を情報発信していきます。
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