大手監査法人からベンチャーCFOを経て財務アドバイザーとして独立されている江黒氏による「経営に必要な会計講座」連載です。難しい印象のある会計、一体どういった際に役に立つのでしょうか。まず第1回として経営における会計の必要性について伺いました。

経営において会計知識はどの程度必要?

Q:経営において会計知識は必要なのでしょうか?難しいイメージで苦手ですが・・・

A:会計は企業活動の成果です。決算書に経営の成果が表れるものと気楽に考えましょう。

会計という言葉に苦手なイメージをお持ちの方は多いです。それはきっと簿記の勉強などを思い浮かべるからでしょう。

簿記は大事なことではありますが、経営者が会社の数字を把握するうえでは難しい簿記は不要です。決算書の作り方を学ぶ必要もありません。

しかし、企業の日々の活動が会計により決算書になるのですから、決算書の読み方は覚えておきましょう。

経営者も会計用語は覚えておくべき!

また、経営者であれば金融機関や取引先、経営者同士の会話において役立つ流動比率や自己資本比率、回転期間といった会計用語は覚えておくべきでしょう。

自社の経営活動の成果が決算書に表れるのですから、自社の経営に会計は役立つのです。

Q:例えばどういった際に役立つのでしょうか?

A:例えば、新商品を出した際にどれくらいの利益が出ているのか、人の採用を増やした場合、どれだけ人件費として費用が増えたのか、自社の在庫はどれくらいあるのか、これらは会計を通して数値化され、自社の経営選択の成果がわかるのです。

このように企業の日々の売上や在庫、使用している固定資産、人件費、光熱費、地代家賃、消耗品費、交通費など全ての事象が会計と結び付き決算書になります。

Q:それらのことは専門家にまかせて、経営者が必ずしも会計を知っている必要はないのではないでしょうか?

A:経営者だから会計はわからなくていい、と言っていてはいけません!

経営者だからこそ、決算数値を即座に理解し、経営の次の一手を打つ必要があります。中小企業であれば自社の現預金残高と借入金残高を比較して資金繰りを改善したり、回収されていない売掛金があれば回収に向けて督促をしたり、滞留している在庫があればどう販売していくのか、決算書を分析して次の経営戦略が打てるのです。

上場企業の決算書をみてさらに経営を強化していく

また今の時代、上場企業の決算書がインターネットで容易にみることができます。上場企業の決算書と見比べて、自社の決算書とどこが違うのか、把握することで自社に足りないものを知り、経営を強くしていくこともできるでしょう。

Q:営業や資材部などほかの部署でも会計は知っておいた方がいいということでしょうか?

A:営業の方が会計を学べば利益率を意識した値付けや原価低減を考えたり、広告費や販売促進費と売上の効果を意識したり、売掛金の早期回収を意識したりすることでしょう。

資材部の方が学べば、より安く仕入れをする方法や滞留在庫を意識して過剰な発注や在庫の陳腐化を防ぐことができるでしょう。

 

今後、このコラムでは会社の数字や会計にまつわる話をやさしく紹介していきます。

どうぞよろしくお願いいたします!

専門家:江黒 崇史

大学卒業後、公認会計士として大手監査法人において製造業、小売業、IT企業を中心に多くの会計監査に従事。
2005年にハードウェアベンチャー企業の最高財務責任者(CFO)として、資本政策、株式公開業務、決算業務、人事業務に従事するとともに、株式上場業務を担当。
2005年より中堅監査法人に参画し、情報・通信企業、不動産業、製造業、サービス業の会計監査に従事。またM&Aにおける買収調査や企業価値評価業務、TOBやMBOの助言業務も多く担当。
2014年7月より独立し江黒公認会計士事務所を設立。
会計コンサル、経営コンサル、IPOコンサル、M&Aアドバイザリー業務の遂行に努める。