大手監査法人からベンチャーCFOを経て財務アドバイザーとして独立されている江黒氏による「経営に必要な会計講座」連載です。第4回目は、会社の数字をみる「3つの目」についてご解説いただきました。

決算書をみる「鳥の目」「魚の目」「虫の目」

Q:決算書をみる時はどんなことを意識していけばよいのでしょうか?

A:会社を大きく視る鳥の目、市場や業績の流れを視る魚の目、細部を視る虫の目を意識していきましょう。

前回もお伝えしたように会社の数字はそのままでは何も物語りません。まずは時系列である垂直視点、次に他社と比較する水平視点が大事です。

今日はさらに「3つの目」を意識してみましょう。

 

 鳥の目  鳥のように全体を俯瞰して視る
 魚の目  魚のように川(企業業績や社会情勢、市場)の流れを意識して視る
 虫の目  虫のように小さい視点で細かく視る

Q:3つの目はどのように使い分けるのでしょうか。

A:決算書は色々な勘定科目や細かい数字が載っています。勘定科目では売掛金、未収入金、前払費用、立替金など似たような科目名があります。販売費および一般管理費であれば数万円から数千円の数字が載っていることがあるでしょう。

経営者が自社の決算を把握するのに、いきなり細かい勘定科目や数字を見てしまっては自分を見失ってしまいます。

そこで上記の3つの目を意識して決算書をみていきましょう。

 

まずは「鳥の目」で全体を俯瞰してみていきましょう。いきなり細かい数字を見ていては迷子になってしまいます。前回も述べたように決算書については時系列に比較をしたり、他社と比較したりするなど大きな目で自社の決算書を見ていきましょう。

全体を意識することで、前期より売上が増えたのか減ったのか、利益が増えたのか減ったのか、自社の状態を大きく把握できるでしょう。

 

次に「魚の目」で企業の業績の流れや自社のおかれた市場環境、さらに社会情勢の流れ等をみて、自社の決算数値がどのような影響を受け、今後どのような流れに乗っていくのかを見ていきましょう。

自社のおかれている市場規模がどんな風に推移し、これからどうなるのか、そこに対して自社の数値がどう推移してきて、中長期計画はどうあるべきか、流れを意識しましょう。

 

そして虫の目で大事な勘定科目について細かくみていきましょう。売掛金は滞留していないか、不良在庫はないか、固定資産はきちんと使用されているか等々確認していきましょう。

2つの視点と3つの目で動向を見極める

ただ漫然と決算書を眺めるのではなく、前回の垂直視点と水平視点に加えて、上記3つの目を意識して決算書を見ていきましょう。

2つの視点と3つの目を持つことで、自社の経営状態が過去から未来へどのように流れていくのか、自社と他社はどう違うのか、業界はどう流れていくのか、などが見えてくるようになるでしょう。大きくみる分析手手法や注意すべき勘定科目は、またお伝えします。

専門家:江黒 崇史

大学卒業後、公認会計士として大手監査法人において製造業、小売業、IT企業を中心に多くの会計監査に従事。
2005年にハードウェアベンチャー企業の最高財務責任者(CFO)として、資本政策、株式公開業務、決算業務、人事業務に従事するとともに、株式上場業務を担当。
2005年より中堅監査法人に参画し、情報・通信企業、不動産業、製造業、サービス業の会計監査に従事。またM&Aにおける買収調査や企業価値評価業務、TOBやMBOの助言業務も多く担当。
2014年7月より独立し江黒公認会計士事務所を設立。
会計コンサル、経営コンサル、IPOコンサル、M&Aアドバイザリー業務の遂行に努める。