会計講座の第12回はコストの削減方法についてです。
第11回では、固定費と変動費の分析、コスト体質の把握の重要性について述べていきました。そのコストの削減についてはどのように進めていけばいいでしょうか?
短期的に売上を増やすことは難しくても、費用削減であれば短期的に効果がわかりますので、コスト削減は経営改善に必要なことです。
会社には多くの無駄な事業や業務があります。意外と多くの経営者が手を出す本業とは別の事業、飲食事業やスマホゲームへの進出。もしくは会社規模が小さいのに豪華な社長室、秘書、社用車。金融機関が進める節税商品や不動産投資。
本業が上手くいっていて、利益が出ていないのであれば、きっと価値を生んでいない事業や業務があるはずです。目先の費用削減として人員削減を考える前に、まずは無駄な事業や業務が無いか自社を振り返ってみましょう。
業務を見直し無駄なコストを見極める
Q:コスト削減は、どう進めていけばよいのでしょうか?
A:まずは業務を見直し本当に無駄なコストを見極めてからコスト削減を実行してください
会社の活動はすべて費用が発生しています。社員の給与はもちろん、光熱費やボールペン1本、電話1つとっても費用が生じているのです。
これまで見てきたように利益を出すには売上を増やすか費用を減らすしかありません。短期的に売上を増やすことは難しくても、費用削減であれば短期的に効果がわかりますので、コスト削減は経営改善に必要なことです。
もちろん、明らかな余剰人員であれば人員削減も策の一つです。ただ、赤字になった途端にリストラと叫び、人員削減やコスト削減に動くと従業員の士気は下がり、さらに経営が悪化することにもつながりかねません。
また、市場が縮小することが明らかな分野の事業にいつまでも投資をしたりすることも赤字が増える要因です。
まずは日常から無駄な業務を見直し、無駄な費用を削減しませんか?
- 無駄な事業をなくす
- 無駄な業務を減らす
- 結果として無駄な費用が減る
というのが理想です。
企業にとっての「無駄」とは
Q:企業にとって「無駄な事業」など存在するのでしょうか?
A:無駄な事業とはどういうものかというと、例えば、本業とシナジー効果のない事業に手を出したり、新規事業として流行りの事業に挑戦したりした結果、何年も赤字を垂れ流し状態なものです。これらは撤退を考えることも必要でしょう。
よくある話として、IT事業をやっていた会社が経営者の趣味でBarなどの飲食事業を始めたり、システム受託が強みの会社が同じIT系といってスマホのゲームなどに進出して本業が疎かになってしまうことなどはちょっと残念ですね(もちろんヒットすることもありますが、、、)。
Q:それでは企業にとっての「無駄な業務」とは?
A:無駄な業務としては、例えば会社に銀行口座がたくさんあり通帳の管理や貴重に時間をかけていることや、誰もが無駄と思っているけど続けている会議など、これらは立派な無駄な業務です。
会社規模が小さいうちに社長秘書や社用車などを持つことも、余分な管理業務が増えてしまいます。もちろん社長自身のモチベーションのために豪華な社長室、社長秘書、社用車という言い分もありますが、、、
Q:他に企業にとって「無駄」といえるものはありますか?
A:金融機関等が勧める節税商品というものも、会社の決算業務を増やす一方で本当に節税になっているのかあやしいものもあります。不要な不動産を保有している場合もコストが増えます。無駄なものには手を出さないことで無駄な業務を減らすことにつながります。
本業が上手くいっていて、利益が出ていないのであれば、きっと価値を生んでいない事業や業務があるはずです。目先の費用削減として人員削減を考える前に、まずは無駄な事業や業務が無いか自社を振り返ってみましょう。そのような無駄を削減することで費用が削減され、利益体質の会社となっていくことでしょう。
専門家:江黒 崇史
大学卒業後、公認会計士として大手監査法人において製造業、小売業、IT企業を中心に多くの会計監査に従事。
2005年にハードウェアベンチャー企業の最高財務責任者(CFO)として、資本政策、株式公開業務、決算業務、人事業務に従事するとともに、株式上場業務を担当。
2005年より中堅監査法人に参画し、情報・通信企業、不動産業、製造業、サービス業の会計監査に従事。またM&Aにおける買収調査や企業価値評価業務、TOBやMBOの助言業務も多く担当。
2014年7月より独立し江黒公認会計士事務所を設立。
会計コンサル、経営コンサル、IPOコンサル、M&Aアドバイザリー業務の遂行に努める。