今回は「売上を増やすために」というテーマを、前・中・後編の3回に分けてご解説いただきます。第9回では後編として、安定したビジネスモデルとは、について伺いました。安定した経営に必要な、ストック商材とフロー商材とはどういったものでしょうか。

ストック商材とフロー商材を意識する

Q:安定した売上を上げていきたいのですが、どう考えたらいいでしょうか?

A:自社サービスの中でストック商材とフロー商材を意識してみましょう。

毎月毎月、安定した売上高はどんな経営者でも求めることでしょう。そこで自社のサービスのうち、ストック商材となるものとフロー商材となるものを意識しましょう。

 

  • ストック商材=その顧客を獲得することで今後継続的に売上が上がるサービス
  • フロー商材=売上が上がるが、一回きりの流動的サービス

 

例えば、不動産事業であれば管理業務の受託を受けることがストック商材による売上です。一方、不動産販売の取引仲介手数料は、その不動産取引一度だけなのでフロー商材です。

会計事務所や法律事務所であれば毎月の顧問売上がストック商材による売上であり、臨時のM&Aアドバイス売上はフロー商材による売上です。

英会話ビジネスであれば毎月の月謝売上がストック商材による売上であり、イベントによる売上がフロー商材による売上です。

Q:ストック商材とフロー商材の特徴はどんなものですか。

A:フロー商材は利益率が高いサービスであることが多いですが、安定した売上が上がるわけではないので、ビジネスの継続性という点では不安定な面があります。

一方、ストック商材は利益率が低いことが多いですが、安定した売上が上がることから安定した経営につながります。

 

企業は継続することが大事です。そのためにも資金繰りを安定させて収益体質の経営にするストック商材サービスを用意することが望ましいです。

Q:業種によってはストック商材がない場合もあると思うのですが。

A:ストック商材とはなりにくいサービスを展開していたとしても、例えばコーヒーショップが回数券チケットを取り扱ったりマッサージ屋さんが前売りチケットを取り扱うように、前もって入金を獲得したりや顧客の購入・来店インセンティブを獲得する手段を考えることも大事です。一件あたりの客単価を上げることと、購入回数を増やすことが売上を伸ばすことにつながります。

安定したビジネスモデルが安定した経営につながる

ビジネスを思い付いたときには、どのようなパターンで売上を上げて、資金を獲得していくか、しっかり考えてみましょう。一般にビジネスにおいては自社の家賃や光熱費、人件費と毎月資金が出ていきます。そのため売上も毎月安定的に上がり、資金を安定的に獲得していくビジネスモデルを考えることが、安定した経営につながります。ぜひストック商材とフロー商材を意識してビジネスモデルを考えていきましょう。

専門家:江黒 崇史

大学卒業後、公認会計士として大手監査法人において製造業、小売業、IT企業を中心に多くの会計監査に従事。
2005年にハードウェアベンチャー企業の最高財務責任者(CFO)として、資本政策、株式公開業務、決算業務、人事業務に従事するとともに、株式上場業務を担当。
2005年より中堅監査法人に参画し、情報・通信企業、不動産業、製造業、サービス業の会計監査に従事。またM&Aにおける買収調査や企業価値評価業務、TOBやMBOの助言業務も多く担当。
2014年7月より独立し江黒公認会計士事務所を設立。
会計コンサル、経営コンサル、IPOコンサル、M&Aアドバイザリー業務の遂行に努める。