今回は「売上を増やすために」というテーマを、前・中・後編の3回に分けてご解説いただきます。第8回ではその中編は、会計の観点から少し離れて、新サービスの顧客獲得のヒントを含めたお話です。新規開店のコーヒーショップが無料券を配っていたり、飲食店が割引券を配っていますが、その背景にある戦略とは?
フロントエンドとバックエンドを組み合わせる
Q:新サービスの展開や最初の顧客獲得が難しいのですが、何かヒントはないでしょうか?
A:フロントエンド商材とバックエンド商材を意識してみてはいかがでしょうか。
起業をしたばかりの会社や既存にない新しいサービスを立ち上げた時はどうやって最初のお客様に買っていただけるか頭を悩ませることでしょう。そのような時はフロントエンド商材とバックエンド商材の組み合わせなども有効な手段の一つです。
- フロントエンド商材=低収入だが顧客をつかみやすい商材
- バックエンド商材=高収入だが顧客獲得が大変な商材
高額なサービスを提供する場合は、どうしても消費者側に心理的抵抗があります。そのような時はフロントエンド商材を提供して顧客に自社のサービスを知ってもらうことが戦略の一つです。
Q:「組み合わせ」というと、どのようなものですか。
A:例えば、高級割烹が手ごろなランチを展開しているとします。これは夜の会食というバックエンド商材のためにフロントエンド商材としてお客様を呼び込むランチを展開するのです。
携帯電話業者が無料で端末を配るのも、長期に安定した通信料が稼げるためにフロントエンド商材として携帯端末を配るのです。新規開設の飲食店のオープンサービス価格や車のディーラーが無料で試乗をさせてくれるのも、すべて顧客獲得のためのフロントエンド活動ですね。
顧客の声をしっかり集め、自社のサービスが本当に高品質か研究する
「このサービスは他社もやっていない!絶対もうかるぞ!」というサービスを思い付いた時などは、サービスを知ってもらうためにフロントエンド商材とバックエンド商材を組み合わせて営業戦略を練ることが有効です。
もちろんサービスそのものについても長所短所やなぜ他社がやっていないのかを深く研究することも大事です。
まずは自社のサービスが本当に高品質なものか常に研究する必要があります。またフロントエンド商材を提供した後、顧客の声をしっかりと集めて研究しなければ本当に提供したいバックエンド商材を提供するまでに至らないでしょう。
これで新規開店のコーヒーショップが試飲コーヒーを配っていたり、飲食店が割引券を配っていたり、弁護士や会計士が「初回相談無料です!」とサービス展開している理由はもうおわかりですよね(笑)。
専門家:江黒 崇史
大学卒業後、公認会計士として大手監査法人において製造業、小売業、IT企業を中心に多くの会計監査に従事。
2005年にハードウェアベンチャー企業の最高財務責任者(CFO)として、資本政策、株式公開業務、決算業務、人事業務に従事するとともに、株式上場業務を担当。
2005年より中堅監査法人に参画し、情報・通信企業、不動産業、製造業、サービス業の会計監査に従事。またM&Aにおける買収調査や企業価値評価業務、TOBやMBOの助言業務も多く担当。
2014年7月より独立し江黒公認会計士事務所を設立。
会計コンサル、経営コンサル、IPOコンサル、M&Aアドバイザリー業務の遂行に努める。