会計講座の第11回はコスト体質の把握と対策についてです。

 

自社の費用を分析し固定費が多いのか、変動費が多いのか、コスト体質を把握しましょう。

そして、これらのコストを把握するためにも、自社の決算書を作成し損益状況を確認していく必要があります。月次決算を行い、損益月次推移を把握し、前年同期比較、利益率の推移把握などをすることで、コスト意識が高まり、経営は良くなっていきます。

固定費と変動費。コスト体質を把握する

Q:費用を減らすにはどうすればよいのでしょうか?

A:まずは費用を変動費と固定費に分けてみましょう。

会社の費用は大きく変動費と固定費に分かれます。


変動費:売上に応じて増減する費用。
例えば、原材料費や外注加工費ですね。

固定費:売上の変動にかかわらず発生する費用。例えば、人件費や家賃ですね。

 

経営を行っていると売上には増減があることでしょう。特に季節変動を受けやすい事業であれば、売上が好調な月と不調な月があります。

たとえばスキー場やゴルフ場の運営会社は季節変動・天候に左右されますし、飲食事業でもアイスクリームであれば夏が好調ですし、鍋物であれば冬が好調となります。

 

しかし、売上が好調な時でも不調な時でも、固定費は毎月一定額かかります。そのため、固定費が高いビジネスは、売上が少し減っただけでも赤字になりやすいのです。

そこで、まずは自社の費用を分析し固定費が多いのか、変動費が多いのか、コスト体質を把握しましょう。

そして、自社のビジネスのために、どの費用はかけて、どの費用は減らせるかを考えていきましょう。

身の丈に応じた投資を

Q:どの費用を減らすか。その判断の基準はどのようなものですか?

A:どの費用はかけて、どの費用は減らせるか業種によって異なります。

 

例えば飲食事業を展開していれば店舗の設備や人件費はサービスのために必要な費用となりますが、豪華すぎる本社の応接室などは不要で減らせる費用といえるでしょう。

赤字の会社の多くは自社の規模に照らして固定費が大きすぎたり(高い家賃や、多すぎる人員)、無駄な変動費(無意味な販促費や無駄な材料費)が生じていたりします。

 

まずは自社のビジネス規模と比較して豪華なオフィス、多すぎる人員構成になっていないか確認してみてはいかがでしょうか?家賃は一度契約すると数年はそのまま発生しますので、オフィスを借りるときは慎重に契約に臨みましょう。また内装工事や備品、設備も固定資産として長期にわたり減価償却費として費用となりますので、自社の身の丈を超えた豪華なオフィス家具など無駄な投資をしないように気をつけましょう。

損益状況を把握し余裕を持った経営を

Q:固定費に比べ、変動費の削減は判断が難しいと思うのですが。

A:変動費については、飲食業や製造業であれば無駄な材料を買っていないか、材料の廃棄コストは生じていないか見直しましょう。小売業であれば物流費、燃料費などは気をつけるべき変動費です。また多くの業種において、外注費も気をつけるべき変動費です。売上に必要な外注費とはいえ高すぎる外注費を負担していないか見直しましょう。</>

これらコストを把握するためにも、自社の決算書をきちんと作成し損益状況を確認しましょう。月次決算をしっかり行い、損益月次推移の把握、前年同期比較、利益率の推移把握などをすることで、コスト意識が高まり、間違いなく経営は良くなっていきます。

 

また損益だけではなく手元現金の推移にも注意をしましょう。利益が出ていても現金が不足していては経営が安定しません。損益の推移表と共に資金繰り表も作成し余裕のある経営を意識してください。

専門家:江黒 崇史

大学卒業後、公認会計士として大手監査法人において製造業、小売業、IT企業を中心に多くの会計監査に従事。
2005年にハードウェアベンチャー企業の最高財務責任者(CFO)として、資本政策、株式公開業務、決算業務、人事業務に従事するとともに、株式上場業務を担当。
2005年より中堅監査法人に参画し、情報・通信企業、不動産業、製造業、サービス業の会計監査に従事。またM&Aにおける買収調査や企業価値評価業務、TOBやMBOの助言業務も多く担当。
2014年7月より独立し江黒公認会計士事務所を設立。
会計コンサル、経営コンサル、IPOコンサル、M&Aアドバイザリー業務の遂行に努める。