会計講座の第14回は財務分析の入門編です。

 

経営者の皆さんにとっては会計という言葉にも苦手イメージがある中、決算書の分析というとさらにハードルが高くなってしまうと思います。

 

財務数値の分析というと、売上高、営業利益といった数値の時系列比較から、流動資産と流動負債の比較による流動比率や、財務の安全性を分析として自己資本比率など、さらには一般的な分析書に載っているCVP分析やROEといった指標を聞いたことがある方もいるでしょう。どこから手をつけたらいいかわからない財務分析ですが、まずは比較すること!これで決算書分析の大きな一歩を踏み出すことができるのです。

財務分析の入口。まずは前期との比較から

Q:分析と聞くと難しいと感じてしまいますが、具体的には何をすれば良いのですか?

A:分析という言葉を「比較」に置き換えてください。まずは前期と比較しましょう!

経営者の皆さんにとっては会計という言葉にも苦手イメージがある中、決算書の分析というとさらにハードルが一段高くなってしまうと思います。そこで分析という言葉を比較という言葉に置き換えてみましょう。

 

経営者の皆さんにとってまず大事なことは、

  • 前期との「比較」
  • 予算と実績の「比較」

をすることです。

 

いきなり決算書分析と言われるよりも、「前期と比較」「予算と実績の比較」と言われると、だいぶ馴染みやすいのではないでしょうか。まずは比較すること!これで決算書分析の大きな一歩を踏み出すことができるのです。

どの数字から比較するのか?大きな売上や利益の時系列比較から始める

Q:しかし、数字がありすぎてどの数字から比較したら良いのかわかりません。

A:まずは何といっても過去からの時系列比較を行ってください。決算書について5期分、少なくとも3期分は時系列に並べて、過去の自社の経営状況や外部の経済環境と決算数値を見ていきましょう。そうするとどのような時期にどのような決算だったか、まさに決算数値が分析できると思います。

 

いきなり決算書すべての科目にこだわると全体を見失ってしまう恐れがありますので、まずは大きな売上や利益、借入や現預金残高の状況などから比較していってください。全体の流れをつかんだら、次に流動資産と流動負債を比較する流動比率を算出したり、自己資本と総資産を比較する自己資本比率を算出したりして会社の財務の安全性を分析してみてください。また会社の粗利益率、営業利益率など比率を算出して自社の収益性を検証することも有効な分析です。

 

過去から推移をみることで、自社の現在についてより理解が深まり今後の経営に活かせることでしょう。たとえば、飲食事業などはその扱いメニューによって売上に季節変動があるでしょう。アパレル業も春夏商戦や秋冬商戦の時期など季節変動が生じますね。ですので、会社の損益は必ず、月次推移を比較してみてください。

ROEやCVP分析よりも、まずは簡易的な分析で見えてくることがある

Q:飲食業や小売業以外ではどうでしょうか。

A:中小企業であれば一般的な分析書に載っているCVP分析(Cost-Volume-Profit Analysis、損益分岐点を算出する分析)やROE(Return On Equity、会社の利益と株主資本を比較し、株主資本を活かしているか把握する指標)を算定することよりも、過去の決算数値を並べるだけで見えてくることが沢山あるはずです。

 

なお、決算書を比較して正しく経営に活かすためには、決算書そのものが正しくできている必要があります。現金主義の決算や費用と収益が対応していない決算書や不良債権、滞留在庫が沢山載っている決算書ではいくら比較しても経営に活かすことはできませんので、決算書を正しく作ることを忘れないようにしましょう!

専門家:江黒 崇史

大学卒業後、公認会計士として大手監査法人において製造業、小売業、IT企業を中心に多くの会計監査に従事。
2005年にハードウェアベンチャー企業の最高財務責任者(CFO)として、資本政策、株式公開業務、決算業務、人事業務に従事するとともに、株式上場業務を担当。
2005年より中堅監査法人に参画し、情報・通信企業、不動産業、製造業、サービス業の会計監査に従事。またM&Aにおける買収調査や企業価値評価業務、TOBやMBOの助言業務も多く担当。
2014年7月より独立し江黒公認会計士事務所を設立。
会計コンサル、経営コンサル、IPOコンサル、M&Aアドバイザリー業務の遂行に努める。