前回の第8話ではフリーエージェントが仕事を獲得するための営業ツールとしてのソーシャルメディアの活用、特にビジネスブログを使ったプル型営業の事例をご紹介しました。

今回は、高い専門性を持ったフリーエージェントとして働く上での生命線となる、仕事に有益な情報収集と情報整理をいかに行うべきか? 日ごろ筆者が心がけていることをご紹介します。

アウトプットのカタチを決めてインプットせよ

情報は目的なく収集をしても何の意味もなさないことは言うまでもありません。 筆者は主に

  1. 現クライアント先の関心事
  2. 潜在クライアントに関する情報
  3. ブログのネタ

の3つを中心に情報収集しています。 そして何より、どのようにアウトプットするかを具体的に決めて情報を収集(インプット)することにしています。

1. 現クライアント先の関心事。世間話でもプラスアルファの情報を

まず、クライアント先の関心事はその言葉の通りです。クライアント先での話題に乗り遅れないことはもちろんのこと、プラスアルファの情報があってこそクライアントから重宝がられ、会話の中心にいることができるものです。そのため、クライアント企業の経営者やプロジェクトメンバーの方々と世間話をしているシーンがアウトプットのイメージになります。

2. 潜在クライアントに関する情報。面談時に高い信頼を獲得

次にいずれはお付き合いをしたいと考えている新興企業や成長過程にあるブランドである潜在クライアント先の情報です。筆者の専門領域とするステージに入った、あるいは数年後に入って来るであろう企業に関しては、ニュースリリースや店舗を見て企業名やブランド名を必ず実名でノートに書き記すことによって、彼らに関する情報にアンテナを立てておきます。そして、ご縁があって接点ができるその時(面談のチャンス)まで常に高い関心を持ち、人一倍詳しくなる努力をします。

アウトプットのイメージとしては、実際、ご面談の機会ができた時に、お相手から「うちのことをよく見てくれているな~」「どうしてそんなに詳しいの?まるで社員みたい(笑)」と言っていただけることです。そうなれば、最初から信頼感も高まりますし、スムーズにお仕事を始めることができます。

「夢をかなえるノート」ではありませんが、この取引したい潜在クライアント先リストづくりは自分でも驚くほどご縁を引き寄せるものだと思っています。

3. ブログのネタ。テーマに合致した情報収集を

そして3つめは第8話でも解説した営業ツールであるビジネスブログのネタ探しです。ブログではファッション流通市場の未来をテーマに、変わりゆくマーケットや消費者行動の変化、そしてそれに対応できる人材育成に関する記事を書くことを心がけています。

自分自身の仕事のためになる情報や気づきの整理、ブログ読者の方々との情報共有や反応を楽しむために、テーマに合致したニュースや世間話や話題のお店に関心を寄せ、興味をもって情報を集めています。それぞれの情報のアウトプットのイメージが出来ているからこそインプットも効率的に出来るものと自負しています。

惜しげもなくアウトプットしなければ新しいインプットはできない

情報はためているだけでは全く意味を持ちません。 過去にインプットした情報は出し惜しみをせずアウトプットする、潔く手離れさせることで、常に新しいインプットをしなければならないように自分に仕向けています。

相手にとって価値ある情報というものは過去に培った専門性や成功体験ではなく アップデートされた専門性です。そのため、過去にインプットしたものは惜しげなくアウトプットすることにしています。アウトプット(人に伝える)するときは当然、相手にわかりやすく伝えられるように、お相手も誰かに伝えやすいように自分なりに整理をします。このプロセスがまた大切なのです。そして、アウトプットすることによって自ら情報をひとりよがりの希少なものから、あえて業界ではあたりまえのこと、自分にとってはむしろ陳腐化させてしまうことによって、新しいことへの吸収力を高めるのです。

あらかじめ複数のテーマを決めてアンテナを立て大量の情報の中からふるいにかける

具体的なテーマを決め、アンテナを立てて情報のシャワーを浴びれば必要な情報は向こうから目や耳に飛び込んで来るものだと思っています。 最近よく使われるネット用語で言えば、得た情報にタグをつけて分類するのではなく、あらかじめタグを決めて情報収集し、分類に収めるのです。

時代遅れと言われるかも知れませんが、筆者の最大の情報源は毎日届く新聞です。筆者は日経新聞、日経MJ、業界紙の繊研新聞、そして週刊のWWDジャパンという業界タブロイド紙を定期購読しています。 毎朝、2-3紙をバッグに入れて出かけ、自分の事務所や取引先に着くころにはすべてに目を通します。すべて読むわけではなく、自分が興味のあるアンテナを立てた必要な情報があるかどうか?見出しをチェックしながら、むしろ大多数の要らない情報を捨てるというイメージです。

3紙を購読しているのには理由があります。経済全体は日経新聞、流通全般は日経MJ、業界は繊研新聞と、視野と深掘りのしかたと取り上げるスピードが違うから価値があるのです。同じファッション業界でも上場企業や話題の成長企業の記事はすべての新聞が取り上げます。3紙の記事の視点の違いを楽しみ、「さすが〇〇新聞」と感心しながら、筆者だったら実務家の立場からこう解説を付け加えるだろう、と考えながら読んでいます。そして、気になった記事をペーパーカッターでスクラップし、手帳に挟むのです。

1月1日の新聞記事は新しい「タグ」を追加するいいチャンス

3紙の新聞を読む中で、毎年1月1日の新聞には特別の期待を持って読むことにしています。

それは新しいテーマ(タグ)を設定するいい機会になるからです。タグ付した記事は、当然、ブログの新しい情報収集のテーマになります。最近は新聞を定期購読する人も減り、新聞は企業に迎合して、記事の質も落ちたという方も少なくないですが、それでも記者の方の取材力、未来予測、文筆力には脱帽することも少なくないです。

特に各紙で1月1日に取り上げる話題は、渾身の未来予測です。そんな中から面白いキーワードを取り上げて、自分のタグに設定しておくと、そのキーワードがちょうど2-3年後に業界トレンドになっていることも少なくありません。SPA(製造小売業)、等身大、リアルクローズ、ファストファッション、オムニチャネルリテイリングなどはそういった視点のおかげで筆者のブログが検索エンジンンのトップに居続けたころがあったものでした。

欧米のデザイナーに学んだ情報整理術

フリーエージェントの情報収集と整理の最後に、筆者が総合商社勤務時代にいくつかの欧米のデザイン事務所と仕事をする機会に恵れ、その時、欧米のデザイナーチームから学んだ情報整理術の共通点をご紹介しましょう。

ファッションデザイナーのチームは一般的にシーズンの1年半くらい前から情報収集を始めます。最初に複数のシーズンテーマ候補を決め、デザインルームの窓際にシーズンテーマ候補の数だけ用意したドキュメントボックスを並べます。デザインチームのメンバーはしばらくの間、それぞれのテーマに合う素材、街や旅先で撮った写真、雑誌の記事、イベントのフライヤーなどを見つけてはその箱に次々に放り込んで行きます。 

時期が来るとデザインチームのメンバーは、テーマごとにテーブルの上に各自が放り込んだものを広げ、意見交換をしながら整理をしてゆきます。 インスピレーション(直観)を目に見えるものでチームメンバーに伝えることができるため、お互いの理解も進み、ディスカッションもはかどります。 その整理の結果、シーズンテーマを表したボードがわかりやすいビジュアルな形でできあがり、各自がそれをもとに具体的なデザインワークへと入って行くのです。

筆者はこのプロセスから学び、コンサルタントとして業界関心事となるテーマ(タグ)を設定してその数だけクリアファイルを用意し、それに関する記事を見つけては、スクラップした上で、不要になったA4用紙の裏紙に記事の切り抜きを貼り付け、日付とテーマを記入してクリアファイルに入れ、ブログの執筆などに活用しています。

読者のみなさんはどのように情報を収集して、整理をしているでしょうか?

さて、次回はフリーエージェントの料金設定といかに仕事をつなげて行くかといったフリーエージェントにとっての最大関心事のお話しをさせていただきます。

専門家:斉藤 孝浩(インディペンデント・コントラクター:独立業務請負人) 
グローバルなアパレル商品調達からローカルな店舗運営まで、ファッション業界で豊富な実務経験を持つファッション流通コンサルタント。大手商社、輸入卸、アパレル専門店などに勤務時代、在庫過多に苦労した実体験をバネにファッション専門店の在庫最適化のための在庫コントロールの独自ノウハウを体系化。成長段階にある新興企業からの業務構築や人材育成のコンサルなど、これまでに20社以上の企業を支援。
著書に「人気店はバーゲンセールに頼らない(中央公論新社)」や「ユニクロ対ZARA(日本経済新聞出版社)」がある。本業の傍ら、独立業務請負人の働き方の普及を目指すNPOインディペンデント・コントラクター(IC)協会の第3代理事長も務める。有限会社ディマンドワークス代表

ノマドジャーナル編集部
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