株式会社iCAREでは健康経営を実践するためのサービス「carely」(ケアリー)を提供しています。「carely」の展開に向け、同社では広報・PR活動の強化が急務となっていました。

取締役・CMOの片岡和也さんはその課題を、「PRのプロフェッショナル」飯野司さんに相談。企業自らがニュースを作り、メディアへ展開していくプロセスの構築に生かしています。

 

前編では、専門家との相談で得られた知見として、「ニュースレター」「ファクトブック」「PR誌」の3つの「三種の神器」や、他の企業のベストプラクティスについてお話をいただきました。後編は、「三種の神器」の活用方法や広報体制について、専門家から得られた知見について伺いました。

産業衛生分野の識者として社会に発信していく

Q:貴社の場合、具体的には「三種の神器」をどのように活用していくお考えなのでしょうか?

片岡和也さん(以下、片岡):

当社はBtoBのヘルスケア事業を展開しており、「産業衛生」と言われる分野のサービスを提供しています。この領域でどのような活動が行われているのか、世の中全体ではまだまだ認知度が低いと思うんです。なので、市場全体に関する情報と私たちのサービス情報を組み合わせて発信していくだけでも、社会にとって有意義な情報提供になると考えています。「産業衛生の分野に関しては、iCAREに聞けば間違いない」と思ってもらえるようになりたいですね。

 

また、チャットサービスによって、当社には「働く人たちがどんな健康上の悩みを抱えているのか」という知見が蓄積されつつあります。これをもとにして、今の日本の働き方の現状や、それが健康にどのような影響をもたらすのかといった情報も発信していけると思います。

Q:確かに、「健康経営」に関する知見を得られる場所はまだまだ限られているように思います。

片岡:

はい。健康経営を推進していたり、研究されていたりする方は多数いらっしゃいますが、「具体的にどんな手法で、どんなサービスで健康経営を推進できるのか」といった情報はまだまだ少ないのが現状です。

そういった意味では、iCARE自身が、産業衛生に関する識者のような立場でありたいですね。当社代表の山田洋太は医師であり、現役の産業医であり、健康経営を実現するサービスの企画者でもあります。それぞれの立場で健康経営を語れると思います。

PRの山場を継続的に作っていくためのスキーム

Q:もともと貴社には、広報担当の役割を担っている方はいらっしゃったのでしょうか?

片岡:

私が一人で担っているんです。Webマーケティングをメインに担当していて、その一貫として広報戦略を任されています。

Q:多岐にわたる業務の中で広報を充実させていくために、より効率的に動く方法は見えてきましたか?

片岡:

はい。「三種の神器」を活用してメディア戦略を実行し、そこからマーケティングにつなげていくという一連のスキームを整理できました。さっそく実行に移していこうと考えています。

サービスをリリースした際にメディア関係者の方々とのリレーションはある程度築けたのですが、その後の継続的な発信をどのようなタイミングで行うべきか、考えていたんです。一過性で終わるのではなく、PRの山を継続的に作っていくことができそうです。

Q:全体を通して、今回の相談を通して感じたことがあれば教えてください。

片岡:

PRのツールを企業側が準備するということ自体、まったく知らなかったんです。効果的にPRしていくためには具体的なアクションが必要だということを知り、大きな収穫でした。

実際に飯野さんが手掛けているさまざまな企業の成功例も教えていただき、「ウチでも実行できそうだ」という手応えを感じましたね。

社内担当者と外部専門家の相乗効果で、最良のアウトプットを

Q:今後は貴社のサービスもどんどん拡大していくと思いますが、広報・PRの分野で引き続き外部専門家の力を生かす機会はありそうですか?

片岡:

将来的には社内に専門の広報担当を置きたいと考えていますが、外部専門家の力も必要だと思っています。さまざまな業界・企業に関わり、その経験をもとにして客観的にアドバイスをしていただける方の知見は、今後も積極的に取り入れていきたいですね。

 

一方で、そのアドバイスを生かして愚直に実践していくためには、社内の体制も充実させなければいけないと思うんです。ファクトブック一つをとっても、構成や発信を考え抜いて形にしていくためには手間も時間もかかります。

社内の人材と外部専門家、両方の力が合わさったときに、最良のアウトプットができるようになるのではないかと考えています。

Q:「ただ中に人を置けばいい」というわけではないし、「ただ顧問がいればいい」というわけでもないということですね。

片岡:

そうですね。実際には広報担当者本人の力に依存するようなやり方もあるのだと思いますが、企業として責任を持ち、社会に役立つ情報を発信していくことが本来の広報だと思います。それを理解し実行できる人が社内にいて、外部から最新トレンドをもとにアドバイスしてくれる人がいるという体制が、最も理想的だと思います。

Q:最後に、貴社の今後の展望を教えてください。

片岡:

「carely」は、「どんどん使い倒して」いただかなければ意味がないサービスです。今後1年間、少しでも多くの企業に導入していただくとともに、「どのように活用すれば健康経営につながるか」というアクティブ化も促進していきたいと考えています。そのための仕組みの開発も進んでいます。

健康は「突如なくなるもの」なんです。それまではずっと健康だったとしても、いつ何が起きるか分からない。「ちょっと具合が悪い」「理由が分からないけど痛みを感じる」といった些細なことでも気軽に相談できる環境を作ることで、健康を守るためのセーフティネットを広げていけるはずです。

 

最近ではメンタル面での不安を抱える方も増えていますし、女性の場合は「妊娠期の働き方」に関する相談ニーズも増えていくと見ています。「人にはなかなか言えないしんどさ」があるはず。より多くの方が健康に働き続けられるよう、今後もさまざまなサービスを模索していきたいですね。

 

《編集後記》

Open Researchの活用により、外部の専門家とPR戦略について相談をした片岡氏。特に、広報戦略やPRにおけるテクニカルな領域など、専門家に相談することで効率的に知見を獲得し、今後の施策を具体的に検討することができた事例となりました。

 

取材・記事作成:多田 慎介・畠山 和也

相談者:片岡 和也

株式会社iCARE 取締役・CMO。
京都大学農学研究科修了後、2004年NTT西日本に入社し、新規事業企画、採用人事、法人営業を経験。
新規事業企画では、幅広い分野のアライアンス事業をプロデュース。日本流のオープンイノベーションを目的とした、大企業とベンチャー企業の共創プラットフォーム「コトの共創ラボ」の設立や、通信会社とテレビ局の日本初コラボレーションとなる「NTT西日本×TBS TV HACK DAY」に携わる。
2012年3月、慶應義塾大学大学院経営管理研究科(MBA)修了。

専門家:飯野 司

広報プロフェッショナル
学生時代より、父が経営していた飲食業に携わる。
クインタイルズ・トランスナショナル・ジャパンにて営業支援活動に従事した後、美容サービス会社を設立し、全国に21店舗を展開。
その後、REVAMPでの事業再生、新業態開発、チャネル開発、全国認知拡大支援を経て、Win-Win・Partnersを設立。
事業戦略にマッチする企業の紹介、異業種間によるリレーション構築によるチャネル開拓・企業認知拡大・Win-Winモデルの発案、実行支援に取り組んでいる。
現在は、大手やベンチャーなど約20社の顧問や社外取締役、アドバイザーを務める。