ポケットメニューは、500 Startups Japanの資金調達を受けるなど、加速度的に成長しているスタートアップです。
最高の「おもてなし」をテクノロジーで実現するというミッションのもと、ミシュランの星取得レストランの予約から決済までを可能にした業界唯一のwebサービス、「ポケットコンシェルジュ」を展開しています。

約8年間の料理人経験の後に、webサービスを起業されたという異色のキャリアを持つ戸門さんの起業までの経緯や、企業のブランディング、エンジニアとのコミュニケーションなどをテーマにお話をお聞きしました。
「料理人とエンジニアのマインドの壁」をどう打ち破ったのか、について伺った前編に続き、後編では、現在注力しているという採用、ブランディングについて、そして社内でのCFOとの役割分担や今後の展望について伺いました。

※本インタビューは、フライヤー×サーキュレーション「知見と経験の循環」企画第13弾です。経営者や有識者の方々がどのような「本」、どのような「人物」から影響を受けたのか「書籍」や「人」を介した知見・経験の循環について伺っていきます。

ベンチャーが起業初期段階で取り組んでおくべきこととは?

Q:現在、戸門さんが事業で注力されていることは何ですか。

戸門:

最近力を入れているのは採用とブランディングです。
まず採用についてですが、経営者が自分で事業を何でもやろうとせず、人に仕事を任せていくには、各分野で強みを持った人材を採用することが重要になります。面接方法も色々試行錯誤したものの、今では一次面接は自分がやるというスタイルになりました。

働き始めると僕と一対一でコミュニケーションをとっていくことが多いので、最初の段階でじっくりお話をして、お互いに「また会いたいと思うか」という相性を確認し、相手がビジョンや事業内容に対して「腹落ちできているか」という点を見極めることを大事にしています。

次にブランディングについて、ベンチャーはどうしてもプロダクト開発や営業を優先し、目に見える効果がすぐには出づらいブランディングを後回しにしがちですが、実は非常に重要だと改めて感じています。

Q:ベンチャーにとってブランディングが重要な理由、ぜひ知りたいです。

戸門:

ブランディングに成功しているアップルテスラモーターズなどの事例を研究していると、ブランドは、機能面の特長などを説明する「合理的判断」と、その会社やサービスが醸し出す雰囲気やイメージといった「感情的信念」の2つの要素から成り立つことがわかりました。日本では、自社製品のスペックがいかに優れているかといった、合理的判断に訴えかけることが一般的です。一方、アップルなどは「なんとなくカッコいい」という空気をつくり出し、ユーザーの感情的信念に働きかけるのを得意としていますよね。実は、後者のアプローチのほうがステークホルダーにより強い印象を与えられるのです。

ポケットコンシェルジュの場合は、スマート、おもてなし、スタイリッシュといったイメージを大事にしているので、ロゴや名刺一つとっても、自分たちがカッコイイと思うか、テンションが上がるかという視点に立って考えます。つまり、感情的信念に訴えかけるブランディングに非常に注力しているんです。現時点では、ブランディングのプロと一緒に戦略を練っている段階ですが、僕たちが大事にしているイメージを、アプリのUIをはじめ、サービスのあらゆるところから感じ取ってもらえるようにしていきたいですね。

Q:ユーザーの感情的信念に働きかけることが大事なのですね。

戸門:

この2つの要素は、サービスだけでなく自社の採用戦略を考えるときにも有効です。給与や待遇などの条件面(合理的判断)よりも、その会社のビジョンやカルチャー(感情的信念)に共感している人材を採用したほうが、経営者も社員もハッピーになれる。だから、感情的信念を中心にうまくブランディングできていれば、おのずと自社の理念やビジョン、カルチャーに合った人が応募してくれやすくなるんです。入社後も、ブランディングされた世界観は、その会社でどう振る舞えばいいかという指針にもなってくれる。ブランディングは、積み上げていくものなので、起業して初期段階で取り組んでおくほうがいいんですよ。

CFOとの「良い警官・悪い警官戦術」

Q:理念やビジョンに共感する人材の採用だけでなく、社内にビジョンを浸透させることも大事にされているのですね。

戸門:

実現したい世界観を共有することが一番大事ですが、それを前提に数字で測れるKPIなどの指標も必要になります。私とCFOの小山は、ビジョンと数字のどちらかに偏らないように、お互いに助け合うと決めています。いずれかがビジョンや想いばかりメンバーに訴えかけたときは、もう一方が数字に注意するよう喚起するというように。これは、意図的に悪者をつくることで、自分は交渉相手にとって話のわかる人物として振る舞い、相手の妥協を引き出そうとする「良い警官・悪い警官戦術」みたいな感じですね。

今後マネジメントで大事にしたいのは、メンバーそれぞれの強みをもっと活かせる組織にすること。例えば私の場合だと、採用やブランディングに注力しながらも、これまで築いてきた一流高級料理店のシェフとの人脈をベースに、地方にいるシェフとのコミュニケーションを増やしていきたいと考えています。そして自分以外のメンバーが得意なところは、メンバーにどんどん任せていく。それが持続可能な組織づくりにもつながると思うんです。

Q:最後に、ポケットメニューとしての今後の構想をお聞かせください。

戸門:

僕はユーザーやお店の声を大事したいと思っています。日本国内のインバウンドへの対応を重視するようになったのも、市場が伸びているうえに、クライアント企業のヒアリングを行う中で対応ニーズが大きいことを知ったのがきっかけでした。

例えば、外国人のお客さんが食べ物のアレルギーについて、片言の日本語を使って電話で説明しても、店側でうまく汲み取れていなかったというトラブルがよく起こります。ポケットコンシェルジュのサービスでうまく意思疎通できるようになれば、今後、外国人のお客さんが増えても、お店側のトラブル対処の手間がぐっと減りますよね。理想と現実のギャップが大きい課題にアプローチすれば、問題が解消されたときにハッピーになる人が増えると考えています。

もちろん、ポケットコンシェルジュを世界に通用するサービスにしたいという理想はありますし、そこから逆算して、何をやるかを決めていくのももちろん大事ですが、それだけになってはダメ。目の前のお客さんの課題を解決し、信頼と実績を積み上げていくことも不可欠で、その二軸をバランスよく追うことが必要だと考えています。

本の要約サイト フライヤーのインタビューはこちらから!

和食料理人としての経験を積み、webサービスを起業された戸門さんと、
外資系金融機関からベンチャーのCFOへと転身した小山さん。
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フライヤー

ノマドジャーナル編集部
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