FintechやIoT、人工知能など、さまざまな領域でIT化が進んでいますが、その一方でIT人材不足が深刻な問題となっています。経済産業省の調べによると、現時点で17万人超が不足しており、2030年には79万人が不足すると予測しています。

こうした中、日本のSIerを活気に満ちたおもしろい業界「NeoSIer(ネオエスアイヤー)」にすることを目指し、エンジニアの新しい在り方を掲げて事業を展開しているのが株式会社エーピーコミュニケーションズです。

今回は「NeoSIer」という考えを持つに至った経緯を中心に、代表取締役社長の内田武志さんに、お話をお聞きしました。

日本のSI業界は、もっとおもしろくできる。

Q:まずは、SIer(システムインテグレーター)の役割や業界について教えてください。

内田武志氏(以下、内田):

簡単に言うと、クライアントから発注を受けて様々なシステムを作る会社・集団をSIerといいます。クライアントの目的から、どういうシステムが良いのかという要件を定義して、カタチにしていきます。

この業界が始まったのは、30〜40年くらい前で、当時は「新しいことをしていこう」「こういったシステムを作ろう」といった、ちゃんと”作った感”がみんなにあって、新しい業界をつくっているという充実感がありました。ですが、日本人というのは新しいことを生み出すよりも、改良の方が得意なんですね。それで効率を求めて変化を重ねるうちに、ゼネコンのような分業体質になり、下請けや孫請けの会社がたくさんできてしまい、初期の頃とは全く違う形になってしまったんです。

そんな中でITバブルが弾けて蓋を開けてみると、現場が何を作っているかわからない状態になってしまっていたんですね。開発するおもしろさはないけど、人材は不足していて作業だけはどんどん増えていくという、日本独自の不思議な業界になってしまっていたんです。
この状況に変化を起こせばSI業界はもっと面白くなるんじゃないか、そう思って掲げたのが、「NeoSIer」というコンセプトです。

Q:具体的にどんなことを変えていきたいのでしょうか。

内田:

少し、前職のお話をさせていただきますね。当時、私はいわゆる投資ファンドにいて、投資先のシステムを効率化するプロジェクトに関わっていました。そこでは外資も含めたITコンサル会社やSIerと組み巨額な費用を投じていたんですが、なかなかうまくいかなかったんです。

その理由を考えてみると、私たちとSIerでは目的・モチベーションが違ったんです。私たちはクライアントの事業価値を高めることが目的だったのに対して、コンサルやSIerは納品してお金をもらうことが目的だった。目指す方向性が一致していないことで、結果的にゴールが大きくずれてしまったんです。

ですが本来、SIerはクライアントに価値を提供するために存在するべきだと思うんです。そのために、技術力はもちろんですが、自分たちで考えてシステムを生み出す力や、コミュニケーション能力、マネジメント・スキルなど、さまざまな能力や視点を持ったスペシャリスト、すなわちマルチエンジニアを育て、彼らとともに、「NeoSIer」を作り上げていこうと考えています。

技術力+αの価値を提供できるマルチエンジニアを育成

Q:クライアントワークだけでなく、自社サービスも展開しているとのことですが、これもNeoSIerの考え方に沿ったものなのでしょうか。

内田:

自分たちでもオリジナルの事業を行うことが、NeoSIerの条件だと思っています。なぜかというと、自分たちでテクノロジーを使って事業を行う大変さを知るべきだと思うからです。
自分たちでやってみて失敗や成功を積み上げていないと、良い提案なんかできっこない。事業者の目線がないと、クライアントにとって一番必要なものではなく、テクノロジー的に価値がある”一番儲かること”を考えてしまうんです。

そうではなくて、クライアントに価値を提供するにはどうやって自分たちのスペシャリティを活かすべきかを考えなくてはならない。そのために、コンシューマー向けサービスも含め、さまざまな活動を行っています。

Q:事業コンサルタントのような立場で仕事をするということでしょうか。

内田:

ちょっと違いますね。クライアントからすると、PLやPMといったレイヤーや、SEだコンサルだといった「分類」に意味なんてありません。貢献してくれることがすべてです。また、エンジニアにしたって「自分はこれです」という線を引くとそれしかできなくなってしまう。恐らく、管理がしやすかったり、一見すると効率良く見えることから現在のSI業界ではそういった分類・分業体制になったと思うのですが、お客様の事業価値を高めるという観点で考えると、領域を限定して良いことはなにもありません。

だからAPCでは、得意分野以外にも見識を持てるマルチエンジニアを育成しているのです。日本限定なら特定の領域だけできればいいのかもしれませんが、世界では「これしかやりません」なんて相手は、誰も求めていないんです。

後編へ続く)

取材・記事作成/松本 遼

内田 武志
株式会社エーピーコミュニケーションズ 代表取締役社長兼CEO
1992年に早稲田大学を卒業後、富士銀行(現:みずほ銀行)へ入行。
投資先企業のシステム部門でいくつものプロジェクトを手がける中で、
システムインテグレーター(SI)業界の可能性を感じる。
2006年に銀行を退職後、エーピーコミュニケーションズの株式を取得し、代表取締役に就任。
エンジニアがワクワクする新しいSI業界「NeoSIer」をつくるための挑戦を続けている。
【ライター】松本 遼
京都造形芸術大学卒業後、広告制作会社を経て、2010年よりフリーランス(http://idvl.info)。
デザイナー・アートディレクターとして
雑誌広告・広報ツール・webサイトなどの制作を請け負う。
「uniqlo creative award 2007 佐藤可士和賞」、「読売広告大賞 2010 協賛賞」ほか、多数の賞を受賞。
フリーランスとして多くの企業、個人と関わった経験を生かしライターとしても活動中。

ノマドジャーナル編集部
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