ダイバーシティ(diversity)という言葉が、ちまたで頻繁に聞かれるようになりました。これは英語で「多様性」や「相違」を表す言葉ですが、ビジネス界では、性別、人種、学歴、年齢、価値観の違いにとらわれず多様な人材を積極的に受け入れて活用し、生産性を上げようというマネジメントの方法を意味します。

最近の英語メディアでは、ダイバーシティという言葉が使われる大半の場合が、性別による給与や待遇の差に関連した話題であることから、先進国の間で男女の労働条件の格差への関心がかなり高いことがわかります。

性別による格差の是正は、そう簡単に進まない

世界経済フォーラムは毎年「健康」、「教育」、「経済」、「政治」の4つの側面から、各国の男女間の格差を調査しています。2016年の報告書には144か国の調査結果が含まれています。この報告書によると、男女の経済格差は世界的に広がる傾向を見せている一方で、教育などの分野では逆に男女のギャップが縮まっていると言われます。

収入と雇用の面からは性別によるギャップが過去4年間にわたって広がり続け、今では2008年の経済恐慌時に近い59%となっているそうです。

このギャップを縮めるのにかかる時間は、昨年の予想では118年と言われていましたが、今年の予測ではそれがさらに伸びて、2186年までの170年かかるのだとか。格差是正への道のりは気が遠くなるほど長いと言えます。

グローバルな男女の格差の状況

以下の表は同フォーラムの2016年の調査結果から12か国を抜粋したものです。

世界で男女の格差が一番小さいのは、アイスランド

この調査で世界で男女の格差が一番小さいとされたのは、アイスランドです。そのあとにはフィンランド、ノルウェー、スウェーデンの北欧諸国が続いています。

アイスランドで女性の強い分野は教育です。女性の高等教育への進学率は、男性のそれを1.72倍上回っています。これが専門職で働く女性の数が、男性よりも多いという調査結果にもつながっているのでしょう。同様の傾向は米国、イスラエル、ロシアや中国にも見られます。

日本は世界ランクが111位と、他の先進諸国からかけ離れて低く、高等教育へ進む男性数に対する女性の割合は0.91倍。専門職や技術職に就いている女性の割合も、先進国の中では極めて低くなっています。

男女間の経済格差の原因

経済格差はさまざまな要因によって引き起こされます。上記の報告でも、女性の給与が男性の給与のほぼ半額であったり、女性は男性よりも1日平均50分多く働いているにもかかわらず、上級職に就く機会が非常に少ないことなどが数字に表れています。

雇用の均等化や〝同じ仕事に対して同じ額の報酬を″と求める米国では、男女間の経済格差は実に頻繁に取りざたされる問題ですが、米国の評論家はこの原因を以下のように分析しています。

男性に比べて女性の給与が低い要因の一つは「ガラスの天井(glass ceiling)」。資質や成果にかかわらず、マイノリティや女性には組織内での昇進を妨げる、ガラスのように目に見えない障壁があると言われ、昨年暮れに行われた米国大統領選挙候補のクリントン氏もこれを突破できなかったと話題になりました。

また、子育てにより責任を持つ女性が長期間職場を離れたり、男性のようにいつも職場にいられないために、小さな機会を逃すことの積み重ねが市場の性別バランスをゆがめて、男性は昇給し、女性は低賃金パート労働者のように見なされていること。
社会面からは、トップの地位に就くことを求める自己拡張意識が、女性は男性ほど強くないこと。また男性は女性よりもネットワーキングに優れ、あらゆるチャンスに結びついていること。職場の上層部は男性が占めているため、同性とのつながりの方が容易であることから、女性が有利なチャンスに出会う確率が低いこと。女性のネットワークは小さく、それは組織の上層部へ行くほどより小さくなること、なども要因と考えられます。

多くの先進国には、同一の仕事への男女の給与差を禁じる法律があります。しかし現実にこれらの法律は慣行を変えるまでの効力を発揮してはいないようです。

まとめ

男女間の給与やキャリアの格差をなくすには、この先まだまだ長い年月がかかりそうです。しかし教育面では女性が男性と同率、あるいは男性よりも高い進学率を見せている国もあり、より多くの知識や技術を身に着けた女性が職場の実戦力となっていく可能性は高まっています。

なお、欧州を対象とした IMF(国際通貨基金)の最近の調査では、女性管理職の多い企業がより高い収益をあげていることも指摘しています。ハイテクなどの革新的な産業では、多様な思考の恩恵は成功に不可欠とされ、多様な背景を持つ管理者グループは創造性を増すことができると、ますます好まれるようになってきています。男女の給与や待遇格差の改善には、このような現場からの多様性への理解の方が、法律よりも有効なのかもしれません。

記事制作/シャヴィット・コハヴ (Shavit Kokhav)

ノマドジャーナル編集部
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