これまで、人事企画に関して、どのようなHR Techの活用が可能なのか、どのようなサービスがあるのかをご紹介してきました。今回は、実際に企業がどうやってHR Techを活用しているのかにフォーカスしたいと思います。まずは、アメリカでの導入事例です。

BMW社 × BetterWorks

世界的な自動車メーカーであるBMWでは、世界中にさまざまなブランチオフィス(支店・営業所)を持っています。BMWが必要としていたのは、cross-functional teams(CFT:クロス・ファンクショナル・チーム)。部門横断的に社内からメンバーを集め、一つのプロジェクトを完遂するチームです。BMWでは、E-モビリティや自動運転車の専門知識を持つエンジニアやデザイナーなども含め、幅広い分野のプロが集まり、所属する部門の垣根を越えて一緒によりよりものを作ることが求められていました。

そこで導入されたのが、目標管理プラットフォームであるBetterWorksです。あるプロジェクトを行う際に、どう部門間の連携を取るか、人員を配置するかを画面上でひと目で確認できる仕組みになっています。また、プロジェクトの大ゴールを設定し、それぞれの担当者のタスクに落とし込み、さらに、その達成率をリアルタイムに共有することができるという特徴があります。BMWのテクノロジ・オフィス代表であるUwe Higgen(ウエ・ヒゲン)氏は、「トップダウン方式だけでなく、ボトムアップで現場からのイニシアチブも可能にする。こうした協働体制がイノベーションには必要であり、BetterWorksによって、いつも同じ部屋にいなくてもコミュニケーションすることが可能になった」と評価しています。

BetterWorks: BetterWorks
参考:https://medium.com/@BetterWorks/what-drives-a-bmw-executive-47d699bf0f0a#.uq0qfnupu

Pinterest社× Greenhouse

美しい画像が見られ、活用企業も多い画像共有サイト、Pinterest。2010年の創業以来、瞬く間にファンを集めて急成長しました。アメリカの本社では、多様な人材が数百人も集まり、一緒に仕事をしています。こうした企業では、新しい技術やアイデアを持った人材の採用が必要で、実際にかなり多くの応募者が集まっています。そこで、Pinterestではhttps://www.greenhouse.io/を採用活動に導入し、実績をあげています。担当者は、「1日に何百人もの候補者が集まる中で、 Greenhouseでは候補者情報が一つにまとまっているので、詳細な情報を得た上での採用活動ができる」としています。

参考: https://www.greenhouse.io/customers#pinterest

中小企業各社 × Namely

Namelyは中小企業に向けた人事管理システムを提供しています。たとえば、投資コンサルティング会社のThe Motley Fool 社は、「社員情報が可視化された。社員同士は、主要情報と写真付きで他の社員を知ることができるし、管理者は報酬履歴なども含めて全ての情報を見ることができる」としています。また、「小さなチームが多く移動も頻繁にあるが、それが即座にできるようになった」とし、モバイルでの使用ができることも画期的と評価しています。

また、ECサイト運営の1stdibs 社は、Namely導入の結果として、管理業務に割く時間を減らすことができるようになり、メインの業務に集中できるようになったこと、給与明細や各種手当、同僚の情報なども一か所で知ることができて便利であること、従来3つに分かれていたシステムを1つにまとめることができたので、経費節減になったことなどを挙げています。

参考:https://www.namely.com/clients/

FICO社 × Glint

シリコンバレーのデータ分析会社であるFICO 社は、従業員エンゲージメントに課題があり、解決方法を探していました。世界25拠点、2,600人もの社員を抱える同社では、優れたマネージャーを育てることで従業員エンゲージメントを高めようとしてきましたが、企業のグローバル化に伴い、マンパワーでの対応が難しくなってきていたのです。そこで、 社員管理ができるhttps://www.glintinc.com/のシステムを導入したことで、リアルタイムでスピーディーなデータ収集と分析が可能になったといいます。

また、24時間スーパーなどで電子決済サービスを行っているPAYNEARME 社は、Glintで社員の感情を知り、顕在・潜在ニーズを読み取ることが企業の成長に大きく貢献していると言います。Glintのサービスであるパルスサーベイ(従業員意識調査)は、自動的に全社規模での調査を行うことができ、一回の入力に2分もかからないと社員からも好評です。また、従業員エンゲージメントに問題なりそうな一定の傾向が見られた場合は、ダッシュボード上に自動的にアラートがつく点が素晴らしいと評価しています。

参考:https://www.glintinc.com/case-studies/

まとめ

HR Techの分野では先進国であるアメリカでは、さまざまなサービスが開発・提供され、実に多くの企業が導入しています。「給与計算機やエクセルから、ITサービスの活用へ」の流れは、もはや避けられないといえるでしょう。次回は、人事企画におけるHR Techの日本での導入事例を取りあげてみたいと思います。

記事制作/神尾 マキ

ノマドジャーナル編集部
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