前回までは労務に関して、どのようなHR Techの活用が可能なのか、どのようなサービスがあるのかをご紹介してきました。今回は、実際に企業がどうやってHR Techを活用しているのかにフォーカスしたいと思います。まずは、アメリカでの導入事例です。

Netflix × Workday(ワークデイ)

Workdayは、ERP(基幹系情報システム)を提供している会社で、人事や財務業務のクラウドサービスを行っています。日本版もあり、2016年には日産自動車をはじめとした300以上の企業で導入され、わずか1年半で2倍という伸びを見せています。クラウド型のSaaS(必要なアプリだけを選んで利用できるシステム)で、1つのプラットフォームの中で人事・財務がスピーディーに処理できるのがメリット。加えて、直感的に操作できるインターフェイスで、多くのグローバル企業に選ばれています。なお最新のWorkdayでは、休暇取得率などさまざまなデータの数値指標が見られるようになっており、迅速な意思決定に役に立ちます。

Netflix社は、世界各国で映像ストリーミング事業を行っている会社です。グローバル化を推し進める中で急速に成長している組織のため「人事、給与計算、経理の異なる部門でも、全員が同じアプリケーションを使える」という点を高く評価しています。また、以前は11もあったアプリを一つに統合することで自分たちで処理が可能になり、作業を外部委託することが激減したそうです。こうした業務を通して社員同士の連携が高まることで、事業の生産性もアップしていくかもしれません。

Workday:https://www.workday.com/
参考:https://www.workday.com/ja-jp/homepage.html?&_rda=/jp/

Housegreening × Gusto(ガスト)

2011年にZenPayrollとしてスタートしましたが、2015年に社名変更をしました。給与計算、福利厚生、人事業務など採用から給与支払いまで、オールインワンでできることを謳い文句に、中小企業を中心に多くの顧客を持っています。確定拠出年金や、州ごとに異なる税法や税率にも自動計算で対応しています。モバイルでいつでも給与明細を確認できるなど、社員にとっての利便性も高いサービスです。

Housegreening社は、コロラド州デンバーにあるハウスクリーニングの会社です。担当者は、これまで複数のシステムにログインして給与支払いなどを行っていましたが、「Gustoの導入で、給与計算がこれまでより格段に早くできるようになった。最低でも3時間かかっていたのが、15〜20分でできるようになった!」と言っています。貴重な時間をより重要なことにかけられるようになれば、仕事へのモチベーションもアップするのではないでしょうか。

Gusto:https://gusto.com
参考:https://gusto.com/product/payroll/customers/housegreening

zendesk × Fond(フォンド)

Fondは、福利厚生の分野でアメリカのトップシェアを誇る会社です。創業者は、Y Combinator(Yコンビネーター)というベンチャーキャピタルが運営する養成スクールの卒業生である、日本人の福山太郎氏です。2017年4月に社名をAnyPerk(エニーパーク)からFondに変更し、これに合わせて福利厚生サービス名もFond Perksに変更しました。導入企業の社員は、850を超える特さまざまな典や割引が受けられるようになっています。
Fond Rewards(褒賞)というサービスもあり、社員の誕生日や目標達成時に、上司から部下などへAmazonギフト券等に交換できるポイントを付与できるサービスです。アメリカらしい企業文化の一つといえるでしょう。また、Engagement IQというサービスも新たに追加し、社員のエンゲージメント(会社への愛着心、貢献意欲)を図ることで、福利厚生をより充実させることができるようになっています。

zendesk(ゼンデスク)は、カスタマーサポートサービスを提供しているグローバル企業です。アメリカだけで500人を超える社員に対し、Fondを活用してやる気アップを図っているそうで、社員もとても気に入っているようです。外部サービス使うことで、自社ではできないような非常に充実した福利厚生が実現できます。

Fond:https://fond.co/
Fond Perks:https://fond.co/products/perks/

まとめ

給与から福利厚生まで、労務は全社員に密接に関わる仕事で、社員のモチベーションなどにも影響を及ぼします。次回は、労務におけるHR Techの日本での導入事例を取りあげてみたいと思います。

記事制作/神尾 マキ

ノマドジャーナル編集部
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