さて、そろそろ実際にどのような副業が可能なのかについて考えてみたいと思います。筆者の考えでは、世に存在するほぼすべての職業・職種において副業が可能です。もちろん、主に勤務する会社と競合関係にある会社から受ける副業や、利益相反となる副業、一般的な社会通念や倫理に反する副業などは認められるべきではありません。しかし、そうでないケースにおいて副業は、原則的に何でも可能と考えられます。

問題は、仕事として副業をきちんと受注できるのかということと、受注できたとしてもそれに費やす時間や労力への妥当な対価や、その他のメリットが得られるかです。実際には、それらの条件をすべて満たせる副業はそれほど多くないというのが実態でしょう。

■仕事として副業をきちんと受注できるのか

例えば、中堅専門商社の総務部に勤務するAさんのケースを考えてみましょう。Aさんは40代半ばの男性社員で、社員100名規模の東京営業本部の、総務部の部長をしています。総務部の仕事は「会社の便利屋」とAさんが自嘲するもので、消耗品の管理から社内イベントの企画運営、会社ホームページの更新管理と多岐に渡ります。会社の業績が伸び悩む中、Aさんの給料も伸び悩み、Aさんは最近副業を検討し始めました。

そこでAさんがAさんの会社と同じような規模の会社から総務の仕事を副業として受けたいと考えた場合、Aさんは仕事を受注出来るでしょうか?

総務という仕事は、それぞれの会社によって内容がまちまちで、いわば会社ごとに定義があるといった仕事です。別の言い方をすると、総務という仕事には汎用性がないのです。

副業を考える場合、仕事の汎用性がない、あるいは低いといった場合、注意が必要です。何故なら、現在我が国で構成されつつある副業市場においては、成立している仕事のほとんどが汎用性の高い仕事です。具体的には、システム開発者、プログラマー、ウェブデザイナー、マーケッター、リサーチャー、ライター、翻訳者、映像メディアクリエーター等々です。

ところで、私は今後十年程度で多くの企業、特に大企業において、総務という仕事の多くが外部業者にアウトソースされるようになると予想しています。経理や会計の領域でそうしたトレンドが始まりつつありますが、総務という仕事も、外部の専門業者が社外から役務を提供するようになるでしょう。

■妥当な対価やその他のメリットが得られるか

また、副業をすることの妥当な対価や、その他のメリットが得られるかというのも重要な問題です。仮にAさんが総務の副業を受注できたとしても、それから得られる対価があまりにも安かったり、あるいはAさんのキャリアづくりに役立たなかったりしたら、あまりやる意味はないでしょう。

これは来週の記事で詳しく書きますが、世にライティングという副業があります。私もライティングの副業をやっており、現在10社程の会社から仕事をいただいています。

ライティングという仕事の報酬相場はピンキリで、一般的なライティングの仕事の場合、単価が恐ろしく安いものが少なくありません。中には、1000字の記事一本に報酬500円なんていうものもあります。仮に1000字の記事執筆に二時間かけた場合、時間単価はわずか250円です。

上は極端な例ですが、副業で得られる対価が総じて安すぎて仕事が成立しないというケースは少なくありません。副業も、相場は市場原理で決まりますので、安くても手を上げる人がいれば安値で相場が固まってしまいます。特に高い専門性が求められない領域の仕事ではその傾向が強いので、自分の仕事の専門性が低い場合は注意が必要です。

とどのつまり、自分の副業が成立するか否かを決するのは、自分の仕事の汎用性と専門性、そしてそれらに対するニーズの存在ということです。広がり続ける副業市場において自分の仕事が適正に評価され、買い手と合意出来るかが副業成功の鍵になるでしょう。

記事制作:
ジャパンコンサルティング合同会社
代表 前田健二

ノマドジャーナル編集部
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