これまで「会社」「協同組合」について説明してきましたが、これらは出資者に利益を配当していくタイプの法人であり、営利法人とも言われています。
一方、利益分配を行わない法人の方が資金提供者からの理解を得られやすいこともあります。今回は、利益分配を行わない法人・非営利法人について説明していきます。

利益を貯めるか、外に出すか

非営利法人と営利法人の最大の違いは、事業を通じて得られた利益を法人の中に貯めるか、外に出していくかというところにあります。
例えば、事業を行った結果、収入から経費を差し引いて100万円の資金が手元に残ったとします。
営利法人の場合は、この100万円を出資者達に分配していくことができます。法人の外へと資金が出ていくのです。

非営利法人の場合は、そもそも出資者への分配という考え方がありませんので、100万円は法人の中に貯まり、そのまま次の事業を行うための原資になっていきます。
一般的に、寄付金による収入が多い事業の場合は非営利法人の方が良いと言われています。寄付者視点に立つと、集まった資金が利益分配という形で特定の個人の手に渡っていくというのは好ましいものではないからです。

非営利法人の種類

非営利法人には様々な種類があります。学校法人や医療法人のように特定の事業を実施していくことを念頭に設けられた法人もあるところです。また、その中には新規設立が現実的に困難なものも含まれます。

新規設立が名実ともに認められている非営利法人としては、学校法人、医療法人、社会福祉法人、特定非営利活動法人(NPO法人)、宗教法人、一般社団法人、一般財団法人があります。このうち、一般社団法人・一般財団法人については後述するような行政庁の関与がなく設立が容易なこともあって、活用が進んでいます。

実際に非営利法人を設立していくとなると、ポイントは次の2点に絞られてきます。

 ・設立に行政の関与があるか
 ・社団型か財団型か

まず、設立に行政の関与があるかという点ですが、非営利法人の中には設立にあたって行政の認可や認証が必要なものもあります。認可や認証が必要な法人は、他の法人よりも組織として有利であったり、個別の事業を行うにあたっての許認可や補助金支給要件となっていることもあるので、一定のハードルを設けているということでしょう。

例えば、大学の設立許可を取るためには、その運営主体は原則として学校法人である必要があります。また、私立大学に対する補助金は学校法人が運営する大学に限られているところです。

非営利法人を設立しようとするときは、まずは実施予定の事業に特化した法人格があるかどうかを確認していくことが重要です。そして、行政の関与がある場合は、設立までに時間がかかることを承知した上で、事業計画を策定していくことになります。

次に社団型か財団型かという点ですが、非営利法人に限らず、法人は社団型と財団型に大別することができます。ざっくりと説明すると、人が集まってできるものが社団、財産が集まってできるものが財団です。事業の目的、最終目標が同じであったとしても、その実現手法やアプローチの仕方によって、どちらの形態の法人が向くかが異なってきます。

例えば、保育所を設立・運営するという目的があったとします。
保育士経験のある人が集まって手弁当で保育所を開設、利用者からもらう保育料で運営していくということであれば社団が向いてくるでしょう。
一方、人はいるけど資金がない。保育所を開設する土地も建物もない。このため、資金や不動産を寄付してくれる人を募っていくということであれば財団が向いてきます。このようなケース以外にも、交流施設=建物、美術館=美術品といった「物」に重きを置くような組織では財団形態を採ることが多いです。

非営利法人とクラウドファンディング

日本には欧米のような寄付文化がないと言われることが多いですが、学校や病院といった公共性の強い事業、美術館や図書館といった地域の共同財産を構築するような事業については寄付を惜しまないといった面もあります。

そして、非営利法人は地域の人々の想い、寄付の受け皿になってきたという歴史があります。各地に古くからある学校や病院の成り立ちを読み解くと、設立時に広く寄付を募っていたことが分かります。

最近では、寄付型クラウドファンディングを活用して資金を集める非営利法人も現れ始めています。非営利法人が行う事業は採算性が悪く(だからこそ営利法人では取り組みにくい)、行政からの補助金や寄付に頼らざるを得ない面があります。広報経費をかけずに世間一般に広く寄付を募ることができるクラウドファンディングは非営利法人にとって便利なツールなのかもしれません。

記事制作/ミハルリサーチ 水野春市

ノマドジャーナル編集部
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