日本経済新聞社が電子版の読者を対象に行ったアンケートによると、残業時間が減らない要因について、約3割が「非効率的な会議や資料作成が多い」と回答しています。

公益財団法人日本生産性本部の調査「労働生産性の国際比較」によれば、2015年の日本の就業者一人あたりの労働生産性は、OECD加盟35カ国中22位です。就業1時間あたりでもOECD加盟35カ国中22位であり、これを見る限り日本の労働生産性は決して高いとはいえません。

このように見てみると、非効率的な会議や資料作成のために業務が進まず残業時間が増え、その結果、労働生産性が低くなっていると考えられます。政府の働き方改革実現会議で議論されているように、労働生産性を向上させることで単位時間当たりの業務処理量を増やし労働時間の短縮につなげるのであれば、まず、非効率的な会議や資料作成をなくすことが必要です。

そもそも、なぜ、非効率的な会議や資料作成が発生するのでしょうか。そして非効率さを改善するには、どういった方法が有効なのでしょうか。

1.いつまでたっても終わらない!決められない会議にうんざりな事情

会議は開かれているのに、いつまでたっても方向性が決まらないといった事態は多くの人が経験するところです。議論が一向に進まない、質問や提案をしても意見が出ない、という理由で議論が次回に持ち越しとなれば、いったい何のために会議をしているかわかりません。

上司から会議のための資料作りを指示されることもあるでしょう。会議でわかりやすく説明するため、遅くまで会社に残りパワーポイントによる資料を作成し、会議で見事なプレゼンテーションをしても、やっぱり結論が先送りとなれば、資料作りのために費やした時間は無駄だったことになります。

こんなことが繰り返されれば、たまったものではありません。決められない会議はもううんざり…そんな声が聞こえてきそうです。

会議で何も決められないのは目標の設定がないことが原因です。本来、会議はメンバーの合意を形成し一定の結論を得るために行われるものです。一定の結論を得るには、会議を始める前に目的と到達目標を明確化しなければなりません。議論の方向性を保つことによって時間のムダを省くことができるのです。

2.否定的意見がやる気をなくす!非建設的会議が招く時間の浪費

無意味な会議となってしまう原因の中で最も罪深いのが、否定的意見による議論の停滞です。積極的な発言があっても、代替案を提示することなく否定的意見のみが出されると発言者のモチベーションは一気に下がってしまいます。そして否定的意見が待ち受けているとなれば、積極的に発言する者はいなくなります。そのため議論が前に進まず、いたずらに時間だけが経過することになってしまいます。

結論の出ない会議が多くなると、参加している者にとって会議の時間はアイドルタイム同様、単なる時間の浪費でしかありません。会議時間を延長しても同じです。

否定的意見を出させないためには、一定のルール作りが必要です。どのようなルールを作ればよいかわからなければ、差しあたりブレインストーミングなどの会議方法を取り入れてみるのもひとつの方法でしょう。

3.会議成功のカギは議長役にあり!ファシリテーション技術で無駄を排除

会議を有意義なものとするには、少なくとも目標を設定することと否定的意見を排除することが必要です。では、どうのように実践すればよいのでしょうか。

会議の目標を設定しても、参加者全員がその目標に向かって議論しなければ意味がありません。また否定的意見を封じるためのルールを設けても、実際に否定的意見が出るようではルールを設けた意味がありません。一定のルールの下、設定した目標に向かって議論が進むかどうかは、議長の手腕にかかっています。

話し合いを円滑に進めるにはファシリテーション技術の活用が有用です。ファシリテーションとは、会議やミーティングの場において、発言を促し議論の方向性を整理することで、参加者の合意形成をサポートすることをいいます。ファシリテーション技術を持った人をファシリテータといいます。

会議におけるファシリテータの役目は、簡単に言えば「時間意識」を持って、参加者に対して「目標の問いかけ」を行うことです。ファシリテータは常に客観的に会議の進行をチェックし、否定的意見が出ないように指揮するとともに議論の方向性がぶれないように全体を誘導します。そして時間管理の下、議論を収束させるタイミングを見計らって一定の結論へと導くのです。

会議には、参加者にルールを遵守させながら目標へと導く強いリーダーシップを有したファシリテータの存在が必要不可欠です。ファシリテータが議長役となり、参加者から意見を引き出してまとめる役目を担うことが会議を成功させる秘訣です。

4.まとめ

非効率な会議や資料作成は、労働生産性を低下させる原因のひとつです。これらの非効率な業務をなくして労働生産性を向上させることができれば、長時間労働の是正につながります。ファシリテーション技術は会議のあり方そのものを改善するためのアプローチです。それは長時間労働を是正するために効果的な方法だといえるでしょう。

そういった意味において、企業内でファシリテータを養成する価値は十分にあると思います。大学やNPOなど各種団体がファシリテータの養成講座やセミナーを行っています。労働生産性向上のため、中堅社員のリーダーシップ研修などに取り入れてみてはいかがでしょうか。

記事制作/白井龍

ノマドジャーナル編集部
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