「地方創生カレッジ」って、なんだかご存知でしょうか? 名前からして、地方創生に関係があることは間違いないのでしょうが、「カレッジ」というからには大学なのでしょうか? 国が地方創生のために大学を作るという話なのでしょうか?
実は、こうして書いている私もさっぱり分からないので、いまから調べてみます。

■「地方創生カレッジ」を理解する前に……

地方創生カレッジについて説明する前段階として、以下のふたつの言葉についてお伝えしておく必要があります。

・戦略
・地方版総合戦略

「戦略」というのは、安倍首相がとっても好きな言葉です。最近(いろんな意味で)話題の「国家戦略特区」なども、安倍政権が力を入れている政策のひとつです。

安部政権において、「戦略」という言葉は「政策プラン」という意味で使われています。
首相としては、「国や地方の政策に、将来を見すえた戦略が必要だ」という趣旨で、この言葉を多用しているようです。

■「地方版総合戦略」とは?

上の説明から、地方版総合戦略というのが「地方(を活性化するため)の、総合的な政策プラン」であることが、お分かりいただけると思います。
地方創生がスタートしてから、各自治体はこの「地方版総合戦略」を策定するよう、国に求められているのです。
つまり、国が地方に対して言いたいのは、こういうことです。

「地方創生のため、地方にお金を出しますよ。
その代わり、ちゃんとした『地方創生のための政策プラン』を考えてね」

その「地方創生のための政策プラン」のことを、「地方版総合戦略」と呼んでいるわけです。

■地方創生カレッジ = 地方創生に役立つサイバー講座

前フリが長くてすみません。ここまでお話しして、やっと「地方創生カレッジ」のご紹介に入れます。
地方創生カレッジとは、以下のように定義されています。

「『地方版総合戦略』の事業の展開に必要な人材を、育成・確保するためのオンライン講座」

つまり、各地で地方創生の事業の担い手となる人々のため、インターネットを通じて様々なノウハウや考え方を伝授する―それが「地方創生カレッジ」なのです。
「カレッジ」というの名のとおり、地方創生にかかわる人のための「サイバー大学」と考えてもいいでしょう。

■自治体職員向けのカレッジ

それでは地方創生カレッジというものが、実際にどんなものか、サイトにアクセスしてみましょう。

地方創生カレッジ
https://chihousousei-college.jp

カレッジのメインコンテンツ「eラーニング」では、地方創生に関する様々なノウハウを教授しています。
その内容は大きく「基盤編」「専門編」に分けられており、それぞれに以下のような項目がならんでいます。

基盤編
概論、データ分析・戦略の検討、事業化・事業推進、官民の連携

専門編
総合プロデューサー、分野別プロデューサー、地域コミュニティリーダー

「基盤編」で地方創生の事業の進め方をレクチャーし、専門編でさらにステップアップして行く内容のようです。まさに「自治体の職員向け」のサイトといっていいでしょう。

■実はだれでも受講できる!

コンテンツの項目名だけを見てもわかるように「地方創生カレッジ」は、かなり専門的な内容のサイトです。
ところが簡単な登録さえ済ませば、私たち一般国民もカレッジを利用できるのです。
いったい地方創生のため、なにを教えているのでしょうか? 筆者が講座をひとつ受けてみました。

ためしに基礎編から概論へと入り、「条件不利地域、小規模自治体の地方創生戦略」という講座を開いてみました。小さな自治体や、条件の悪い自治体をどう活性化していくかが、動画で解説されています。
特にこの講座の第2章では、小規模自治体・条件不利地域が具体的に取るべき方策を扱っています。「弱者には強者とは違う戦い方がある」ことを、ビジネスやマーケティングの理論を用いながら、繰り返し説いているのです。

なんだかビジネスセミナーのような内容にも思えますが、地方創生の事業もビジネスである事に変わりはありません。「地方創生カレッジ」のノウハウが自治体の施策に生かされ、真の地方創生が実現することを期待したいものです。

■あの大前研一氏も登場!

「地方創生カレッジ」には、他にも興味深いコンテンツがそろっています。
「各界の第一人者が語る」というコーナーでは、学者や現職の閣僚、さらには大前研一氏のような著名な評論家が、地方創生についての持論を展開しているのです(さすがは国がやっているサイトだけあって、顔ぶれも豪華です)。
それぞれが識者ならではの切り口で、地方創生の展望に鋭く切り込んでいます。地方の未来について考えたい人は、ぜひとも動画をご覧になってください。

以上見てきたように、自治体職員の啓発用に作られた「地方創生カレッジ」は、徹頭徹尾、ビジネスの手法や考え方を重視しています。
地方創生の事業には住民の将来がかかっており、ある意味で一般企業以上に厳しいビジネスともいえます。昔ながらの「お役所仕事」をくり返す自治体は、もはや生き残れない時代になったということでしょう。

記事制作/欧州 力(おうしゅう りき)

ノマドジャーナル編集部
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