地方創生に取り組む自治体に対し、国はさまざまな制度を用意しています。しかし、国が「人材」に関する支援をしていることは、あまり知られていないのではないでしょうか。今回は地方創生のために行われている人材支援について、詳しく見ていきましょう。

■「地方創生人材支援制度」とは?

国は各地の地方創生を助けるため、いろいろな施策を用意し、推進しています。もっとも分かりやすく、かつ重要なのは交付金ですが、その他にも地方創生特区や、政府機関の地方移転といった、一つひとつが目玉となるような規模の大きな政策にも取り組んでいます。さらにはビッグデータの活用や、地方創生カレッジなど、自治体による地域活性化を支援するツールをも用意しています。

しかし……地方創生の施策の中に「人材」の支援があることは、あまり知られていないことでしょう。
国は自治体の地方創生をサポートすべく、2015年から「地方創生人材支援制度」というものをスタートしました。
これは、国が小さな自治体に対し、国家公務員、大学教授、あるいは民間のスペシャリストを派遣するという、文字通り人材面の支援をする制度です。公募で集められた人材は市町村長のブレーンとして活動し、なおかつ地域活性化のプランニングにたずさわります。主に人口5万人以下の小さな自治体が対象となっており、派遣期間は原則2年間とされています。2017年度の派遣では、全国各地に55名が派遣されています(うち国家公務員44名、大学研究者2名、民間人9名)。

国の意図については、なるほどと思わされます。地方の小さな自治体だと、高度な専門性を持った人材や、学識経験者を登用することは、コスト的にもなかなか難しいのが現実です。そこで、国から一定期間派遣するという形であれば、地方の小自治体のハンデにかかわらず、有能な人材の力を借りることができるのです。

■菅官房長官も期待!

安倍政権の番頭役である、菅義偉(すが・よしひで)内閣官房長官も、自身のブログで地方創生人材支援制度への期待を述べています。そこには地方創生人材支援制度のもとになった、人材支援の考え方が記されています。
http://ameblo.jp/suga-yoshihide/entry-12259635141.html

(引用)
「私が総務大臣だった時に、様々な地域を視察して、成功している自治体は、いずれも地域の魅力を見極めて育っていること、そしてプロジェクトを引っ張る人材がいることに気が付きました。
そこで『頑張る地方応援プログラム』の一環として、若い官僚を市町村に派遣する新しい取り組みを始めました。それまで、官僚は都道府県には派遣されますが、市町村には派遣されていませんでした」

地方創生人材支援制度の元になるシステムが、菅氏の総務大臣在任時に生まれたということのようです。実は、それまでも地方への官僚の派遣はありましたが、あくまで都道府県への派遣にとどまっていたのです。

とはいえ都道府県レベルであれば、予算・バリューの両面から見て、専門的人材を招くことはそう難しくありません。むしろ地方の市町村こそ、優秀な人材を招きにくいというハンデを抱えていたわけです。
また、国や都道府県の足元を支えているのは、結局は各地の小さな自治体です。国による人材面のサポートにより、最小単位の自治体である市町村が元気になってこそ、真の地方活性化が実現するといえるでしょう。

■「ひこにゃん」は、地方創生の先駆モデルだった!

引き続き、菅氏のブログのご紹介です。

(引用)
「当時、総務省の官僚でこのプログラムにより彦根市に派遣された、藤井比早之衆議院議員は、ゆるキャラの走りである『ひこにゃん』を売り出すプロジェクトに携わり、新たな観光ルートを作り上げ、観光客の増加に貢献しました」

これは……驚くべき事実を発見しました(世間でもあまり知られていないことなのではないでしょうか?)。
あの伝説のゆるキャラ「ひこにゃん」も、中央からの官僚の派遣によって、生まれたというのです。
ここで登場する藤井比早之(ふじい・ひさゆき)氏は2009年に総務省から彦根市に派遣され、同市の副市長となり、「ひこにゃんプロジェクト」に参画。「ひこにゃん」のプロモーションによる彦根市の大々的な活性化に関わった人物でもあります。
「ひこにゃん」こそ、国による人材支援が地方創生をもたらした、先駆的な例だったのです。

こうした中央から地方への人材サポートを、さらにパワーアップしたのが「地方創生人材支援制度」です。この制度では官僚に限らず、大学教授や民間人材などのスペシャリストが、各地方に活性化への処方箋をもたらすべく、派遣されます。まさに「ひこにゃん」の事例のごとく、全国の自治体が人材支援によって活性化への糸口をつかみ、地方創生の実現がもたらされれば、こんなにすばらしいことはありません。
そう。彦根市と無関係の方にとっても、「ひこにゃん」は無縁の存在ではありません。
あの愛くるしい「ひこにゃん」の姿こそ、地方創生の明るい未来を象徴しているのかもしれません。

以上見てきたように、地方創生人材支援制度では、地方の小規模自治体に対する人材面のサポートを展開しています。これが真の地方創生をもたらすか、注目したいところです。

記事制作/欧州 力(おうしゅう りき)

ノマドジャーナル編集部
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