前回の記事では、「異文化はあくまで異物である」と書きました。移民を多く受け入れているヨーロッパ諸国を見ればわかることですが、「異物」の割合が大きくなれば、自然と「その国らしさ」は失われます。そして現在、グローバル化の結果としてナショナリズムが高まるという相反する現象が起こっています。

現在欧米の多くの国では、国際化の一端として多くの外国人を受け入れたことにより、逆に「自分たちの国を取り戻そう」というナショナリズムが強まっています。

そう考えると、「外国人労働者の門戸を開けば国際化する」というのは、どうも懐疑的にならざるをえません。

国際化の結末は「ナショナリズム」

国際化というのはいわば、「国境に囚われない」ことを指します。それが経済であろうが移動範囲であろうが個人意識であろうが、国際化というのは「複数の国が相互に結びつき影響しあう状況にする」ことを指しています。

日本も国際化した国のひとつで、日本の物がアメリカで売買され、オーストラリアで働いている日本人がいて、学生旅行で台湾に行くことが「ふつう」になっています。

「国」という概念は保ちつつも、「国境」という概念があいまいになった現代社会。陸続きで多くの国と隣り合っているヨーロッパ諸国やアメリカでは、特に人の移動がさかんに行われました。

人の移動により、たしかにそれらの国は「国際化」していきました。わたしはドイツ在住ですが、どこでもへジャブを着用している女性を見かけますし、ドイツ語以外で会話している人をいたるところで見かけます。ですがそれは本来、「ドイツの景色」ではありません。外国人比率が大きくなった結果、「ドイツらしさ」が失われていったのです。

人の移動が一般的になり、いろいろな文化が混ざり合った結果、どうなったのでしょうか。国は発展したのでしょうか?

答えは、残念ながら「否」です。現状は、理想と真逆の方へと向かっています。

イギリスがEUの離脱を決め、アメリカではトランプ大統領が就任し、フランスの選挙では、敗れたもののルペン氏が極右政党候補としてこれまでの最多票を獲得しました。ほかにも多くのヨーロッパ諸国で、排他的な極右政党が台頭しています。

外国人が増えて国際化した結果、「これ以上外国人を受け入れたら自分の国が乗っ取られるのではないか」「そもそもわたしたちの国だ」という民族意識が高まり、むしろ自国主義に傾いているのです。

日本の国際化が進めばどうなる?

では、日本が国際化を続けたら、どのようになるのでしょうか。

外国人労働者が「ふつう」の存在になり、就職の際は外国人と日本人が同じ枠を争うのが当然になった世界。外国語がいたるところで飛び交い、一重で黒髪の「典型的日本人」が少数派になったとしたら。

最初は、「日本も真の意味で国際社会の仲間入りだ!」と思うかもしれません。ですがそこからさらに「外国化」が進み、「日本らしさ」が失われていくとしたら、どうでしょう。

日本中どこでも英語表記がふつうになり、教会と同じように各地にモスクが建てられ、仕事中でも礼拝する権利を認める法律が可決され、土足で生活をすることを前提とした玄関のない家が建てられたら。そしたらあなたは、どう思うでしょうか。

きっと、欧米でいま起こっていることがそっくりそのまま日本で起こるでしょう。「日本は日本人のものだ」「日本を取り戻せ」という声が高まり、国際化を経てふたたびに戻るのが目に見えています。

日本は島国で、日本人はそもそも縄張り意識が強い人種と言えます。「外国人はあくまでお客さんである」という認識の人が多いですし、「日本にいるなら日本のルールに従え」と考えている人も少なくありません。欧米より早く、また過激なナショナリズムになる可能性もあります。

ナショナリズムが悪いわけではありません。自国を守りたいという気持ちは、むしろ理解できるものです。ですが国際化の結果が自国主義というのは、なんとも皮肉なものです。

国際化の結末はまだだれも知らない

「大航海時代」と呼ばれる、ヨーロッパ人による航海がさかんに行われた15世紀半ばから、500年以上経った現在。「ひとつの国」だけで国際競争に勝つのはむずかしくなり、複数の国との関わり合いを前提として国は運営されています。特に経済的国際化はここ数十年で大幅に進み、「国境」はどんどんあいまいになっていきました。

加速していく「国際化」がどこに辿り着くのか、まだだれも知りません。ですが国際化を推進し続けてきた欧米の迷走具合を見れば、「日本はそうならない」とだれも言い切れません。いや、むしろ日本も同じように外国人を受け入れれば、同じようなことが起こるでしょう。

よく「歴史に学べ」と言いますが、外国人受け入れに積極的になりこれから国際化を推進していく日本は、現在盛り上がっている欧米のナショナリズムから学ばなければなりません。

なにがナショナリズムの引き金になったのか? 日本も同じように、国際化の反動として排他的になるのか? ナショナリズムを受け入れ、ふたたび外国人を締め出すのか? 欧米と同じ結末にならないようにするためには、なにを気をつけるべきなのか?

外国人は基本的には受け入れなかった日本が、外国人を多く受け入れる。時代の流れによって国の政策に変化があるのは当然です。ですがそれは、しっかりと未来を見据えたものでなければいけません。

国際化するのは、ひとつの選択肢です。ですが国際化推進派は、その国際化の先になにが待っていると思っているのでしょうか。どこに向かって国際化するのかがわからなければ、日本も、欧米と同じように泥沼化する可能性が高いといえます。

日本はもっと、現在の欧米の状況を踏まえ、危機感を持って「外国人受け入れ」について考えるべきではないでしょうか。

取材・記事制作/雨宮 紫苑

ノマドジャーナル編集部
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