世の中は需要と供給で成り立っています。ビジネスの世界も同じで、ニーズがあるからこそビジネスチャンスがあり、事業が生まれるのです。今回は、「人が足りない!」「副業をしたい!」という両者が結びつき、ビジネスとして成立している3つの業界を紹介します。中にはちょっと変わったビジネスもあり、新しい事業づくりや人材不足解消のヒントになるはずですよ。

■罰当たり?「墓参り代行」

お彼岸やお盆、年末年始など、ご先祖様のお墓参りに行く方も多いのではないでしょうか。しかし、仕事が忙しかったり、お墓が遠くにあったりすると、時間を取るのがなかなか大変なもの。そんなときに便利なのが、墓参り代行サービスです。

 

依頼をすると、業者がお墓の掃除や周辺の草むしりのほか、お花や線香、お供え物などもしてくれます。きちんと行ったことを証明するため、写真や報告書を送ってくれることもあります。値段は一回7000円~2万円ほどが相場のようです。

お墓参りという神聖な行為を、代行業者に任せるなんて……そう思われる方も少なくないでしょう。しかし、なかなか足を運べずに、お墓が汚れ放題、草が伸び放題という状態にしてしまう方が、心が痛むという人が多いようです。だからこそ、墓参り代行サービスが成立しているのです。

 

といっても、多くの利用者は、すべて任せっきりにするわけではありません。通常の清掃やメンテナンスは代行業者に任せて、年に一度はきちんと自分でお墓参りをする、という風に、あくまで補助的なサービスとして使う方が多いのです。

実はこの墓参り代行も、副業ワーカーたちの活躍が支えています。会社員や主婦、フリーターなどたくさんの人が、代行業者に登録しています。客から墓参り代行の依頼があると、希望日時やお墓の場所によって、最適な登録者のところへ依頼が行く、という仕組みなのです。

 

墓参りに行きたいけど行けない、誰か代わりに行ってほしい、という「人手不足」を解消するためのサービスと言えるでしょう。

■バレるのは厳禁!結婚式への代理出席

人生の晴れ舞台、結婚式。しかし、「A君は絶対に呼ぶ!」「B君も呼びたいけど、A君と仲がよくないからどうしよう」「Cさんは好きじゃないけど、上司だから呼ばないわけにはいかない」など、誰を招待するかで悩む人はたくさんいるでしょう。

 

一方で、「呼ぶ人がいない」と悩んでいる方も少なくないようです。新婦は社交的で友達が多いのに、新郎は人づきあいが悪く、結婚式に呼べる友達がいない。両親と仲たがいをしており結婚式に呼べない、けれどいないと変に思われるから何とかしたい。そんな問題を解決するのが、代理出席サービスです。業界大手のファミリーロマンス社では、結婚式1万円、二次会8000円という料金(いずれも一人につき)です。

 

こちらも墓参り代行サービスと同じく、多くの副業ワーカーたちに支えられています。代理出席の依頼が業者に寄せられると、年齢や性別、見た目や背格好、会場の場所といったさまざまな要素から、最適な登録者が手配されるというわけです。

 

お給料は5000円~で、スピーチや余興なども任されるとさらに加算される仕組みです(ファミリーロマンス社の場合)。また豪華な料理を食べられたり、引き出物をもらえたりと、お給料以外にもメリットがあります。赤の他人の結婚式とはいえ、感動でつい涙してしまった……という副業ワーカーも少なくないようです。

 

一方で、代理出席であることをバレてはいけないプレッシャーもあります。誰かの代わりに行くわけですから、その人の名前や、新郎(新婦)とどういう関係か、どんな時間を共有して何と呼び合っているか、など、第三者に聞かれてもスラスラ答えられるよう頭に叩き込む必要があります。特に自分が成り切っている人物が、新郎(新婦)にとってキーパーソンであれば、結婚式の成功・失敗さえかかっていると言えるでしょう。

 

これも、「人がいない」を解決するサービスですね。ちなみにファミリーロマンス社では、「レンタルフレンド」「レンタル彼氏・彼女」のほか、「リア充代行サービス」といったサービスも行っています。インスタ映えするようなメンバー・シーンを演出し、リア充であることをアピールするというもの。SNSが現実社会と同じくらいに影響力を持つ、今の時代ならではのサービスです。

■アマチュア写真家でもOK!写真素材サイト

最後に紹介するのは、写真素材サイトでの写真販売です。写真素材サイトをご存知ですか? 「アマナイメージズ」「アフロ」「ピクスタ」といったサイトがそれで、風景や人物、動物、自然、飲食物、報道などあらゆる分野の写真が販売されています。テレビ局や新聞社、出版社などのメディアや、制作会社などがここから必要な写真を購入し、コンテンツとして使用するのです。

 

素材サイトでは、何百~何千万枚という写真が販売されています。これだけの枚数を集めるには、パートナーの存在が不可欠です。そう、素材サイトにもフォトグラファーが登録し、撮影した写真を委託販売しているのです。そして購入されると、一定の歩合が撮影者に入るというわけです。

 

サイトにもよりますが、プロのフォトグラファーはもちろん、アマチュアでも登録可能です。日本最大級の「ピクスタ」には、副業目的で登録しているアマチュア写真家もたくさんいます。しかし、写真のクオリティに妥協は許されません。ピントが甘かったり、構図が悪かったりすると審査で落とされますし、すでに大量にある写真と同じものではほぼNGだそうです。

 

写真が趣味という人は少なくないでしょう。けれど副業として写真販売をするなら、「好き」よりも、「どのような写真が世の中に求められているか」を意識する必要があるでしょう。

 

素材サイト側は、写真家を大量に雇用すると、人件費が膨らみます。そこで、外部のフォトグラファーと提携し、売り上げに応じて報酬を払うことで、出費を抑えています。フォトグラファー側も、好きなときに活動し、売れた分だけ稼げるという、お互いのメリットにつなげているのです。

 

たくさんの写真家を雇いたい、けれど人件費的にそれはできない、という「人手不足」を解決するための仕組みを採用している素材サイト。だからこそ、安価で写真をお客様に提供することも可能となっています。人手不足を解消すると同時に、自社にも、そしてユーザーにもメリットをもたらすようになっているのです。

ライター: 肥沼 和之

大学中退後、大手広告代理店へ入社。その後、フリーライターとしての活動を経て、2014年に株式会社月に吠えるを設立。編集プロダクションとして、主にビジネス系やノンフィクションの記事制作を行っている。
著書に「究極の愛について語るときに僕たちの語ること(青月社)」
フリーライターとして稼いでいく方法、教えます。(実務教育出版)」