前回まで2回に渡り、地方移住の際に注意する点を見てきました。収入面、選べる仕事の幅、交通面、情報面といった要素のほか、「地域の慣習」「地方の閉塞感」といった面でも、気をつけるべき点はあります。同じ日本とはいえ、遠く離れた地方に移住するとなれば、やはり文化的・環境的ギャップがあるのは否めないところでしょう。せっかく地方で働こうと意気込んだのに、そんなことで足元をすくわれてしまっては、あまりに残念です。

そこで今回は、地方への移住・地方での仕事を成功させる「コツ」について、考えてみたいと思います。

地方移住のポイントとは――イケダハヤト氏のブログから考える

地方で新たな人生を切り開くコツを考える上では、やはり経験者の証言が欠かせません。

よって以前にご紹介した、有名ブロガー・イケダハヤト氏のブログを、再度材料にさせていただこうと思います(イケダハヤト氏については、当連載の第7回第8回でも紹介しています)。

 

「田舎・地方への移住」で失敗しないための6つのポイント。

http://www.ikedahayato.com/20151102/46542451.html

(イケダハヤト氏ブログ「まだ労働で消耗してるの?」より)

 

このエントリーで、イケダ氏は地方移住における注意点を挙げています。

こちらを参考にしつつ、地方生活を成功させるポイントを考えていきましょう。

農業をやるなら「土地」に注意

地方の仕事といっても色んなものがありますが、イケダ氏は特に地方で農業を始める人に注意を促しています。それは土地の問題です。

いうまでもなく農業には土地が必要ですので、地方に移住して農業をやろうという人は、現地で農地を借りたりします。ところが……この土地をめぐってトラブルになる事例もあるのです。

 

たとえば移住先の借地で農業を始め、数年単位でようやく軌道に乗ったところで、地主から土地の返還を求められる……というケースもあるといいます。なんとも理不尽な話のようにも聞こえますが、あくまで借地ですので、その辺の想定もしておかねばなりません。

たとえしっかりした賃借契約を結んでいたとしても、期限切れの前に契約更新ができなければ、土地を借り続けることはできません。こうして、せっかく軌道に乗せた農業の基盤を失ってしまうケースもあるというのです。

地方で腰をすえて農業をやるには?

農地を長く借り続けるコツとして、イケダ氏は「いい場所はあえて避ける」ことを勧めています。優良な農地でアクセスも便利となれば、地主が心変わりして「返してほしい」と要求してくることもあります。これでは(契約の形態にもよりますが)長期間の安定した農業を展開することはできません。

つまりは、じっくり腰をすえて農業をやるなら「休耕中の土地」「農業の担い手がおらず、放置された農地」がねらい目ということになるでしょう。

 

「そんな土地だと、農業に向いてないんじゃないのか?」

そう思われるかもしれませんが、実は地方の郊外に行くと、農業に使える土地が余っていたりもします。農業の担い手であったおじいさんが亡くなって、残されたおばあさんが休耕地を抱えている……といったケースが、いくらでもあるのです。

よって、地方での長期安定的な農業を志すなら、郊外などに放置された休耕地をリサーチするのも、ひとつの考え方でしょう。契約更新を断られるリスクも低いうえ、賃料も安く抑えられます。

 

さらにイケダ氏はもうひとつの方法として「土地の買い取り」を推奨しています。賃貸の場合、地主の意向次第で返還を求められたり、契約更新を拒否されることがあります。しかし土地を買い取って自分の物にしてしまえば、地主の意向に振り回されることもありません。

もちろん買い取りとなればそれなりの経費がかかりますが、農業の担い手を失った休耕地を探せば、案外安値で購入できるケースもあります。なにしろ地主としては、持っていても使い道のない農地なのですから。

移住の基本は「人間関係」

地方で農業ひとつ始めるにあたっても、人の協力を得ることが欠かせません。地主との円滑な関係が重要なのはもちろん、土地に合った農業を展開するには、現地農家のアドバイスが必要なケースも出てくるでしょう。イケダ氏は現地の人々と積極的に交流し、時にはお酒を一緒に飲むなどして、相手の懐に入り込むことを推奨しています。

 

農業に限らず、地方で新しい仕事をやっていく上で、現地住民との人間関係は基礎中の基礎になります。地方で生きる以上、その地方の特色に合った仕事(事業)の進め方が必要ですし、土地の慣習を理解して活動していく必要があります。それには現地人の指導やアドバイスが欠かせません。「人の和」を手に入れてこそ、「地の利」を得ることも可能になるのです。

 

記事制作/欧州 力(おうしゅう りき)