キッチンUCHINKUにて、オーナーの西本真さん

 

小豆島(しょうどしま)は瀬戸内海に浮かぶ離島。人口約28000人、面積約150k㎡。瀬戸内海では淡路島に次いで2番目の大きさだ。小豆島には、先代から引き継いだ木桶仕込みの醤油と佃煮、ごま油を使った素麺、瀬戸内の光を浴びて育ったオリーブを中心とした食品産業と、海・空・山の大自然や小豆島八十八ヵ所霊場などを活かした観光業とがある。伝統ある地場会社が島の基盤となり、【地方創生・小豆島】で紹介してきた企業を始めとする新たな挑戦を続ける企業が一定数存在。その上に近年、若者・子育て世代を中心に移住者が増加。年間約250人という人口のおよそ1%に当たる数が移住しており、オシャレなカフェや面白いプロジェクトなどが生まれている。

 

首都圏への人口・商業施設の集中から脱却を図る「地方創生」が叫ばれる中、人気のある離島ではどのような地域づくりが行われているのだろうか?そこで、小豆島へ6年前に移住した筆者が、小豆島で活躍する企業・事業・人について取材・発信していく。

 

第12回では、昨年小豆島に移住されたキッチンUCHINKUのオーナー西本真さんと、移住・定住を促進するNPO法人Totie(トティエ)の事務局長、大塚一歩さんにお話を伺いました。

 

前編ではUCHINKUのオーナー西本真さんから、小豆島でレストランを開くまでの経緯や、大成功に終わったイベントについてお聞きしています。

カフェ、レストランで料理長や店長をつとめた実力派

Q:小豆島に来るまで、どのような事をなさっていたのですか?

京都出身で、高校卒業後にグランヴィア京都で調理に携わった後、20歳の時に自社農園を持っているmumokuteki cafeに移りました。当時、2007年前後は空前のオーガニックブーム。22歳で料理長を任され、その後店長を7年勤めました。

 

例えば、豆腐ハンバーグをどうやったらハンバーグに近づける事ができるのか?そぼろを作るためにグルテンを撹拌して味付けしたり、唐揚げを作るためにおからこんにゃく(形状はこんにゃくで手触りはおからっぽい感じ)に味付けして揚げてみたり。グルテンをカットしてパン粉を付けて揚げると、ソースカツどんになる。卵の白身の代わりに、絹ごし豆腐を使ってトロッとした卵とじ風にする。オーガニックの食材でどこまで新しい味を出せるか、また本物を食べられない方、アレルギーの方にどう楽しんで食事していただけるか、そういう事ばかり毎日考えていたように思います。

 

その後知り合いの所を1年手伝って、DEAN&DELUCA(ディーン&デルーカ)の大阪店ができるのを知りました。DEAN&DELUCAで、はじめてレストランもするということで、27歳の時に挑戦してみることにしました。29歳で料理長を経験、30歳で独立する目標でしたがもう1年勉強させてもらい、昨年30歳で小豆島に。1年後、UCHINKUをオープンしました。料理は自分のイメージしたものをどうやってクリエイトしていくのかということ。新しいものを発想する力は、カフェ時代、限られた食材でどうやって美味しい物を作っていくのか考えてきたことで培われました。その後、レストランで幅を広げました。今のお店は、創作料理のカフェレストランという形で営業しています。

23歳で小豆島に惚れ、7年間準備。経験を積んで30歳で来島。

Q:小豆島に移住されたきっかけは?

付き合っていた彼女がたまたま小豆島出身で、23歳の時にご両親に挨拶に来ました。当時すでに結婚を前提にお付き合いをしていて、こういう所でお店がやれたらいいなと思ったんです。30歳でこちらに移って来るまでに2回、結婚したタイミングと子供が生まれたタイミングで、もう小豆島に行っちゃおうかという時がありました。

 

しかし、彼女も彼女の両親も、小豆島でお店をする厳しさを知っているので、最初は大反対でした。僕は、アクティブな性格なので、島は合わないんじゃないかと。でも、決心は変わらなかった。お店の名前の「UCHINKU(うちんく)」は小豆島弁で「自分の家」。“想像を創造する第2のUCHINKU”というコンセプトで、小豆島の食材と地元京都の食材を使った美味しいお料理を提供し、お客様にくつろいでもらいながらやっていきたいと思っています。

倉庫を改装したオシャレな店内。

Q:イベントも開催されていますよね?

はい、2017年9月3日にはじめてさせていただきました。イベント名は「UCHINKUにおいでよ」。1回目はみなさまへの日頃のお礼の気持ちと地域活性をコンセプトに行いました。小豆島に、子ども向けのイベントがないなと思って企画して。小豆島の人に来てもらいたいなと思って、お店のある安田地区の人もそうですし、土庄(とのしょう)のほうの人にも来てもらえたらと思っていました。結果300~400人も来場してもらえ大盛況で。車は香川ナンバーばかりで、地元の方も「こんなに小豆島にまだ知らん人がおるんやなぁ」って言っていました。子ども向けのワークショップで自分の家を作ってもらったり、色々なお店に出店してもらったりして楽しんでもらうことができたかなと思います。

ワークショップで子どもたちが作った「うちんく(自分の家)」

専門家:城石 果純

株式会社DaRETO代表取締役。1984年愛知県生まれ。小豆島在住、リクルート出身の3児の母。
24歳で母親になり「自然がある場所で子育てしたい」と思うようになり、2011年に小豆島に家族で移住。3年間高松への船通勤を経て、2016年個人事業主として独立。2017年株式会社DaRETOを起業。現在は、しまの塾・企業研修・各種ワークショップ開催を通し、地域の課題を地域で解決するスキーム作り「知の地産地消」に取り組んでいる。