2017年1月上場企業301社を対象に行った調査では、7割強の企業が兼業/副業を禁止、1割強が届け出制で認めているという結果が出ました。副業を始めてみたくても、会社で兼業が禁止されているので…と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。ここでは、企業が兼業を禁止する理由と、兼業禁止でも安心してできる副業について解説しています。

副業は兼業と同義と見なされる! 兼業・副業の厳密な定義とは?

副業の定義とは、「本業と別の仕事で収入を得ている事」

副業の定義とは明確にはされていませんが、一般的に本業とは別の仕事で収入を得ている場合、副業とみなされます。仕事の業種や勤務時間の長さなどは問われません。

兼業の定義とは、「同程度の仕事を複数行っている事」

兼業とは、複数仕事を行っている状態を指します。ここでのポイントは、それらの仕事が労力も収入面でも同程度という事です。

例えば、主婦が家事労働も行いながら正社員などで働いている状態は「兼業」、一方で主婦が一日1~2時間程度の在宅ワークを行っている状態は「副業」になります。

就業規定で禁止されている兼業と副業は同義と考えておこう

厳密にいえば、副業と兼業は似ていますが異なる働き方です。ですが、企業側が掲げる兼業禁止規定では、副業は兼業と同義と捉えられている事がほとんど。兼業禁止の企業で働く人は、「副業=兼業」を念頭に置かなければいけません。

兼業禁止規約で定められているケースとは

兼業自体は、法令では禁止されていない

ほぼ全ての企業は、就労既定規則などで兼業禁止を明示しています。ところが、労働基準法や民法では、兼業は禁止されていません。

これは、勤務時間外の従業員の行為を企業側が制限する事ができない事から来ています。勤務時間内は服務していますので従業員は企業に拘束されている状態になりますが、勤務時間が終われば自由に時間を使うのは当たり前。従業員の勤務時間外の行為を企業側が制限する事ができない理屈から、勤務時間外に他の仕事をする、つまり兼業も可能と考えられるのです。

兼業は、企業に損害を与える可能性があるため禁止に

従業員の勤務時間外の行為の中で、なぜ兼業のみ禁止としている企業が多いのでしょうか。これは、兼業を行う事によって、本業に支障が出る、ひいては企業に著しい損害を与える可能性があるからです。

企業に著しい損害を与える行為は就業規約にて禁止されていますので、懲戒免職など厳しい処分が下されます。場合によっては、兼業は懲戒免職になるほどの損害を引き起こす危険性があると考えられる事から、あらかじめ企業側が兼業を禁止しているのです。

兼業が企業に損害を与える3つの可能性

従業員の兼業によって企業が損害を被る可能性は3つあります。

(1)本業に対して支障が出る

兼業が忙しくなって欠勤や遅刻が増える、出社しても兼業による疲労や睡眠不足で仕事ができないなど、本業に支障が出る可能性があります。

(2)公序良俗に反する可能性がある

詐欺グループの電話番や、反社会勢力の組織に属した上での業務など、兼業として選んだ仕事が公序良俗に反する行為に該当する可能性があります。

(3)競合状態になる

本業がSEの人が、兼業で個人的にプログラミングやシステム開発の受注を行うと、同業他社となり競合状態となる可能性があります。本業・兼業共に同業となる事は、情報漏洩や技術力の流出などのリスクもあります。

3つの内どれかに該当すると、企業に著しい損害を与える状態と認定され、法令で兼業は禁止されていなくても解雇や懲戒免職の対象となります。

ある企業の事務員が毎日6時間飲食店で働いていた事が発覚し、企業側から解雇を求められた事例があります。解雇を不服とした事務員が起こした裁判では、本業に支障がある労働状態であったとの判決が出て、企業側の解雇の求めが認められています。つまり、法令では認められない企業側の兼業禁止が、本業に支障が出る状態だったと認定され、兼業禁止に付随する解雇が認められた判例です。

兼業禁止で「ばれないように働く」はやめよう

会社にばれないように副業をするのはNG

副業をしている事がばれないように働けばいい、と考える方も少なくありませんが、やめましょう。副業として、会社にばれないように週末だけ数時間アルバイトをしていても、偶然知り合いに会ってしまったり、給与所得でばれてしまったりする事も珍しくありません。

雑所得となる副業でもばれる可能性はある

給与所得ではなく、雑所得となる副業もたくさんあります。クラウドソーシングを利用した在宅でのライティングやプログラミングの請負などです。

雑所得ならばれない!と思うのは大変危険です。年末調整などでばれる可能性があります。

副業と見なされない方法を知っておく

兼業禁止の企業で働いている場合、副業で収入を得るのは不可能と思われますが、実は兼業禁止でもできる、副業と見なされない方法が存在します。

副業と見なされない方法を知っておけば、兼業禁止の方も本業以外での収入を得る事ができるのです。

兼業禁止でも安心! 副業と見なされない3つの方法とは

公営ギャンブルなどの一過性の収入

兼業禁止の企業でも、継続性のない収入源は副業と見なされません。例として挙げると、競馬やパチンコなどの公営ギャンブルでの収入です。これらの収入は臨時の収入かつ額も一定していないので一過性の収入と考えられるためです。

既に持っている財産を利用して収入を得る

既に所有している資産を運用して得た収入も、副業と見なされません。金融資産を利用したFXや株式の売買、持っている不動産物件の活用などが該当します。

ポイントやマイルの収入

クレジットカードやポイントサイトを利用して付帯されるポイントやマイルでの収入も、副業と見なされません。

まとめ

兼業には企業に損害を与える危険性もある事から、企業側が兼業禁止を定めている事が分かりました。兼業禁止の企業では副業も兼業と同義と捉えられています。まだまだ多くの企業が副業を認めていない風潮の中でも、副業と見なされない方法を把握しておけば、兼業禁止の企業で働く人も安心です。

執筆者:宮城マリ

出産を機にフリーランスに転身、副業が本業に。育児をしながらフリーライターとして活動中。幅広いジャンルの執筆実績あり、自身の経験を生かした副業やフリーランス関連記事も得意。