勤務している会社が副業OKの場合、通常は副業の申請をして許可を得る必要がありますが、会社はどんな副業でも許可するわけではありません。そこで、副業をしたい場合にはどういう副業がどのような条件であれば会社が許可をするのか。また、会社から副業の許可をスムーズに得るための申請書はどのように書けば良いのかについて解説します。

まず就業規則で副業規定に関する4つのパターンの確認が必要

副業規定に関する4パターンとは

1.完全許可

完全許可というのは、

  • 副業禁止が就業規則に記載されていないパターン
  • 「会社の名前さえ出さなければ会社に副業をやる届け出をする必要はない」と記載されているパターン

があります。どちらのパターンも会社に副業をする許可の届け出をする必要はありません。

2.簡単な審査(原則許可)

会社に副業をする申請は必要ですが、次の「厳密な審査」に説明するような内容が就業規則に書かれてはおらず簡単な手続きで許可されるパターンです。

3.厳密な審査(条件付き許可)

会社に副業を申請するときに副業の内容について詳しい報告が必要なことが就業規則に書かれているパターンです。審査も厳しく行われます。

通常は申請書のフォーマット(ひな型)が就業規則、または関連規定のなかの資料に示されています。その内容に従って記載した申請書を提出することが必要です。主な記載項目は次のとおりです(会社によって内容は異なります)。

別の会社で副業する場合の項目
  • 副業をする会社名、住所、業種、事業内容
  • 副業する職務内容
  • 雇用形態(正社員、アルバイト・パート、嘱託など)
  • 勤務開始日、期間
  • 勤務体系(勤務曜日、就業開始時刻・終業時刻、1週間または1カ月間の勤務日数)
会社に勤務しないで自宅で個人事業主として働く場合の項目
  • 業務内容(収入を得る業務内容)
  • 取引先会社名(副業の報酬を支払う会社名)
  • 副業期間、1週間または1カ月間の副業時間(開始時刻・終業時刻)
両方に共通する項目
  • 副業する理由
  • 誓約(本業に支障を与えない、会社に損害を与えない、会社の信用を落とさないことなど)
  • 副業の申請者氏名・所属部門名

4.完全禁止

会社に「副業を禁止する」と就業規則に書かれているパターンです。

政府が進める「働き方改革」でこのパターンの会社も「条件付き禁止」「原則禁止」へと移行していくと考えられます。なお、『副業/兼業の申請を会社にするときの理由の書き方ってどうすればいいの?』という記事で申請を出すときの理由の書き方という角度から申請の出し方を紹介していますので合わせてご覧ください。

申請して副業許可を得られた後の注意事項

申請をして無事許可を得られても、実はあとあと懲戒解雇などの罰則を受ける可能性があるので注意が必要です。

申請書の内容通りの副業を継続しているかぎりは、会社が認めているので罰則を受ける可能性はありません。しかし、「簡単な審査(原則許可)」で許可された場合や、申請した副業の内容から徐々に外れていき、この後に説明している「申請して許可が得られる副業の3つの条件」に外れる副業をしてしまう可能性があるからです。

また、副業を禁止していない会社や、あるいは会社名を言わなければ副業が許可される会社でも、どんな副業をしても良いわけではありません。許可される副業の3条件に違反する副業であれば罰則を受け、最悪は懲戒解雇されるので注意しなければなりません。

どんな副業をするときに申請書の提出が必要になるの?

副業には明確な定義がなく、一般的には「本業以外で副収入を得ること」とされています。文字通りに受け止めると「副収入」を得るすべての機会があれば副業申請をする必要がある気がしますが、実際はそこまで厳密に考える必要がありません。趣味で行っている程度では、現実的に「副業」と会社に判断されることはないでしょう。

しかし、趣味の範囲をこえた取引量になると事業とみなされ、「副業をしている」と見なされると思いますので、副業の申請をしておくのが無難と言えるでしょう。

申請して許可が得られる副業の3つの条件

会社が副業を許可制にする理由は、以下の3つの条件が守られず会社にとって不利益や損失が生じる可能性があるからです。逆に3つの条件を守ると会社は副業を原則として禁止できません。その3つ条件について解説します。以下の3つの条件を守らない場合、どのようにうまく申請書を書いても原則として許可されません。

副業をすることで本業の業務遂行に支障を出さない

会社は、社員が就業時間中に業務に集中し与えられた仕事を遂行することを条件として雇用して給与を支払っています。副業で社員が業務に集中できないと判断されると副業は許可されません。例えば、就業時間後に深夜遅くまで毎日別の会社に勤務すること。あるいは、毎日や深夜勤務でなくても翌日の勤務がきつくなるほどの重労働をする副業などです。このような副業をしないことが許可を得られるための条件です。

本業との競合や秘密情報の漏えいで会社に損失を与えない

会社には社外に秘密にしている情報がたくさんあります。新製品、事業戦略、技術、特許の情報などは機密性が非常に高い情報です。厳密には現在の給与、人事、組織に関する情報なども含まれます。いくらそれらの会社の重要な情報は漏らさないと約束しても人間が行うこと絶対はないので許可されないでしょう。また、副業で会社と同じ事業を自分で行うことも競合する可能性があるので許可されることは難しいでしょう。このような副業をしないことが許可を得られるための2つ目の条件です。

副業をすることで会社の社会的信用を落とさない

会社には社会的責任があります。会社自体が違法行為したり違法ではなくても社会的に認めらない行為をしたりすると社会的な信用が大きく落ちて存続できなくなります。会社の社会的信用の失墜はそれだけではありません。

社員が違法行為をしたり、社会的に認められていない公序良俗に反する会社で副業をしたりすることも含まれます。会社自体に直接の責任はありませんが、そのような社員を雇用していたという理由で社会的な信用が落ちて会社に損失が生じる可能性があります。例えば、風俗営業の店舗や違法な貸し付けを行う会社で副業のために働くことは、通常は許可されません。このような副業をしないことが許可を得られるための3つ目の条件です。

会社に副業を認めてもらえる申請書の書き方

就業規則に具体的な禁止事例がある場合

就業規則に具体的な禁止事例が記載されていれば、その禁止事例に触れないことを記載し、それをしっかり守ることを誓約すれば、原則として許可されます。許可されるかどうかが少し不安であれば、あるいはより積極的に副業を認めてもらいたい場合は、3条件を守って、かつ次に解説している「会社に貢献できる副業を選んでそのことを明記」を参考にして副業を選ぶと許可される可能性が高くなります。

就業規則に具体的な禁止事例がない場合

会社が副業禁止にする理由に違反しないことを明記

少なくとも会社が副業を禁止する3つの条件に違反しないことを明瞭に、かつ具体的に記載します。例えば、副業をする時間が少し長いなと思うときは、副業の内容が肉体的にも精神的にも負担が軽く、自宅で過ごすのと変わりがないと、ウソにならない範囲で記載しましょう。また、休日には十分に体を休めるように過ごすことを誓約します。

会社に貢献できる副業を選んでそのことを明記

次に副業を選ぶ必要がありますが、本業と関連する仕事を選んで本業に良い結果をもたらせることを訴求します。あるいは、本業に役立つスキルを身に付けられる副業を選んでそのことを訴求します。例えば、ソフトウェアの開発者であれば開発している業務に関連する副業を選んで現場の業務を経験したいことを訴求すると許可を得やすくなります。また、海外業務の担当者であれば、英語のスキルを高めるために外国人の来店客の多い店舗で働く副業は許可されやすいでしょう。

まとめ

副業を行うときに申請書による許可が必要な会社の場合、どういう副業がどのような条件であれば会社が許可をするのかについて解説しました。また、副業の許可を得やすくするためにはどのような副業がよいかについても紹介しています。本記事を参考にすることで副業の許可をもらいやすくなります。

記事制作/阪木朱玲