政府が進める働き方改革。その中に副業や兼業を広く認めることが盛り込まれています。確かに働いている会社がどんなにブラックでも,「ここを辞めたら他に働ける場所はない」という状態では辞めることはできません。そんな状況に風穴を開ける、そのうちの一手が副業の解禁です。

なお、副業の解禁の背景や動向については『副業解禁!政府の働き方改革による副業容認の背景と影響を考察してみる』をご覧ください。

副業解禁の趣旨

ほとんどの会社で副業は実質禁止

企業にはルールを定める就業規則がありますが,その中では他社での就業を禁じている場合がほとんどです。厚生労働省は就業規則のお手本となるモデル就業規則を公開しています。

その中には、これまで「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という文言がありました。2014年の調査では企業の85.3%で副業が禁止であり,日本企業の全体的な常識がモデル就業規則にも反映されていた形です。

ですが,まだ有識者検討会での検討段階ですが(2017年11月現在),この部分が削除されて「労働者は勤務時間外において他の会社等の業務に従事することができる」との文言を挿入することが提案されています。

これは事前に届け出をすることで副業が解禁されるという規定です。この背景には,政府が2017年3月にまとめた働き方改革の実行計画で副業・兼業の推進を掲げていることが挙げられます。

選ばれやすい副業とそれを通して得られるもの

以下に,スキルや能力アップに関連があると思われる,代表的な副業を挙げます。

  • 外国人相手の観光ガイド…語学力アップ
  • 覆面モニター…コミュニケーション能力アップ
  • カフェ…接客スキルの向上
  • コールセンター…電話対応スキルの向上

また、本業と副業では客層が異なることが多いため,柔軟に対応する能力が養われることも考えられます。副業解禁により会社とは別の世界を知ることができるのですから,学ぶ点が多いのは当然です。

副業を容認している実際のケース

日本IBMの週休3日制

日本IBMでは短時間勤務を導入しています。週3日,週4日,週5日で時間6割,週5日で時間8割の中から選べます。週3日および週5日で時間6割が同じ労働時間となり,週4日および週5日で時間8割が同じ労働時間となります。

給与はそれに応じて減少しますが,短時間労働にする理由は不問という点が利用しやすいと好評です。働きながら新しい技術を習得したり最新情報を取り入れるゆとりができる、という点からエンジニアからの申請が多いようです。

自由な時間が増えると,休暇だけでなく学習やセミナーの参加,興味ある分野での副業にも目が向くようになります。例えばエンジニアであれば自分の専門外の言語を学びつつ,難易度の低い仕事からチャレンジするのもありでしょう。

神戸市職員の副業解禁

地方公共団体である兵庫県神戸市が,副業を許可する動きに出ています。公務員ですが,ダブルワークを解禁しているのです。ただ,当面は副業の内容はNPO法人などに限定されています。副業を通じて学んだ知識やスキルを本業に生かすことが期待されています。

副業解禁のメリットとデメリット

副業解禁のメリットとは

副業の主たる目的は収入アップです。しかし,副業を通じて得られるものはそれだけではありません。そもそも副業が解禁されるには,残業縮小や休日の増加が前提となります。そのような社風が与える影響を考えてみてください。

従業員は家族と過ごす時間が増え,新しい人間関係を築くことができ,生活が充実してきます。社会問題になっている介護にも対応できるようになり,介護離職も減らすことができます。このように,収入アップやスキルアップ以外のメリットも十分にある制度なのです。

思いがけないデメリットに注意

デメリットとしては,まず本業に影響が出る可能性があります。副業を禁止する企業が多いのは,そちらにエネルギーや時間を奪われることを心配しているためです。休日が増えたはずなのに,副業を始めたばかりに逆に休む時間は減ってしまったということはないでしょうか。その点には注意しながら,時間配分を考慮する必要があります。

副業解禁の時期の見通し

副業の解禁は個々の使用者側の判断

前述の政府の動きにより,副業解禁の流れが生まれています。とはいえ,これはあるタイミングで全国一斉に解禁されるというものではありません。副業を許可するかどうかは基本的に使用者の判断です。禁止する法律もない代わりに,副業解禁を強制する法律もないのです。企業,自治体,政府などの個別の判断で解禁されていきます。

解禁に対する時代の流れ

それでも,副業解禁を容認する姿勢は徐々に広まっています。副業は労働者にとって魅力的な働き方です。金銭的な面以外にも,知識や技術の習得,社会とのつながりなど,多くのメリットがあるからです。労働者に満足度の高い職場環境を提供することは,使用者にとってもメリットとなります。以上より,遅かれ早かれ副業は解禁されることでしょう。

まとめ

これまで副業は原則禁止とされていましたが,政府の働き方改革の影響もあり,徐々に副業の解禁が進んでいます。大企業や地方公共団体でも,短時間労働や副業容認のところが出てきています。メリットとデメリットどちらもありますが,メリットの大きさに気づいた使用者から,順に解禁していくことでしょう。

執筆者:木本 こかげ

社会保険労務士。翻訳家。専門知識を背景に社会保険・労働保険・助成金・年金に関する記事を多数執筆。「日本語力」を生かして就業規則・契約書・医学論文・機械取扱説明書・オンラインゲームシナリオの英文和訳を多数手がける。