本連載ではいままでに、副業や複業、間接雇用、パラレルキャリアなどの新しい働き方について紹介してきました。今回は柔軟な働き方の選択肢のひとつである、フリーランスという働き方を紹介したいと思います。

フリーランスは特定の企業に属することなく、主に仕事単位で契約を交わして報酬を得る働き方です。複業やパラレルキャリアなどよりは、日本でも浸透している働き方といえるでしょう。

わたし自身がフリーランスということもあり、その経験を踏まえ、フリーランスという働き方について考えていきましょう。

推計1122万人!日本でも急増中のフリーランス

ランサーズによる『フリーランス実態調査2017年版』では、日本のフリーランスの人口が、推計で1122万人に達することが発表されました。

フリーランスはノンフリーランスに比べて仕事に対して満足度が高いという結果が出ており、満足度が高い理由としては「自分の能力をいかせるから」が最も多く挙げられています。

フリーランスには4タイプあって、分類と比率は以下の通りです。

  • 副業系すきまワーカー:41%
  • 複業系パラレルワーカー:25%
  • 自由業系フリーワーカー:5%
  • 自営業系独立オーナー:29%

フリーランスというと「自由業系フリーワーカー」のイメージが強いかもしれませんが、実はそれは少数派です。本業を持っていたり、複数の分野で仕事を持っている人の方が、圧倒的に多いのです。

わたしは基本的にライティングで生計を立てていますが、日本語教師として語学学校で日本語を教えていたこともあります。

日本語教師として授業を持っている期間は「複業系パラレルワーカー」で、現在は「自由業系フリーワーカー」に分類されるでしょう。

フリーライターといっても、ライター兼カメラマン、ライター兼編集者、という人もいます。フリーランスにとって、収入を分散させること、複数の収入源があることは大きな強みになります。そのため、4分の1のフリーランサーが複業しているのは、当然といえるかもしれません。

また、企業がスキルアップの機会を与えてくれるわけではないので、フリーランサーは自らプログラミングを勉強したり語学学習をしたりと、パラレルキャリアにも積極的な人が多いのが特徴です。

フリーランスが多い職種としては、プログラマーやデザイナー、イラストレーターなどのクリエイティブ系、ほかにもファイナンシャル系のアドバイザーやコンサルタントなどが挙げられます。

フリーランスは自由&自己責任

フリーライターとして働いているわたしの仕事の様子も、合わせてご紹介します。

わたしはフリーランスなので、どこかの企業に属しているわけではありません。メディアの問い合わせフォームに「記事を書かせてくれませんか」と連絡して営業したり、「記事を書いてくれないか」というご連絡をいただいて記事を書きます。

報酬は交渉次第で、お互いが条件に納得したら執筆することになります。そして1記事書き、気に入っていただいたら継続して執筆することが多いです。

フリーランスには就業時間がないので、いつでも休めますが、いつでも働くことにもなります。モチベーションが高いときは1日10時間働くこともありますし、逆にまったく仕事が手につかない日もあります。

残業代も出ませんし、サボってもだれも叱ってはくれないので、自分でしっかりとマネージメントしなくてはいけません。

ちなみに、企業が社会保険料を負担してくれるわけではないので、年金や保険料は自ら手続きしますし、確定申告も自分でやります。

わたしは幸運なことに経験がありませんが、クライアントが音信普通になった、給料が不払いでトラブルになった人もいるようです。その場合も、自分で解決する必要があります。

自由度が高いことが魅力のフリーランスではありますが、そのぶんすべてが自己責任になります。そこが魅力でもあり、大変なところでもあります。

大きな可能性を持ったフリーランスという働き方

日本のメンバーシップ型の働き方では、柔軟な働き方を実現するのは、まだまだむずかしいでしょう。ですがフリーランスという働き方を選べば、複業やパラレルキャリアなども可能です。

育児や介護、心身の状態により毎日フルタイムで働けない、出勤することができない、という人にとっても、フリーランスは可能性を秘めた働き方です。

日本では正社員になることが主流なので、フリーランス=不安定な立場というイメージがあるかもしれません。事実、自宅で働いているのに毎日家にいるからニートだと思われた方もいますし、そこらへんのサラリーマンよりも収入があるのにクレジットカードが作れなかった、というフリーランスの方も知っています。

社会的に「フリーランス」という働き方が認知されているものの、社会的立場は決して高いとは言えません。

ですが「その人に合った働き方」に注目されているいま、フリーランスは大きな可能性を秘めています。フリーランスはメリットばかりではありませんが、「自分で働き方を決めたい」のであれば、フリーランスもひとつの手段です。企業としても、すでにスキルがあり社会保障などの手続きが不要、必要なときに依頼できるフリーランサーの存在は魅力的でしょう。 企業の体質や社会の仕組みを変えて新しい働き方を可能にしていくのも大切ですが、それには時間がかかります。

そのため、これからはフリーランサーを利用する企業が増え、自らもフリーになる労働者が増加していくと思われます。フリーランスという働き方がもっと浸透すれば、それ以外の柔軟な働き方も理解されていくかもしれません。

取材・記事制作/雨宮 紫苑