サラリーマンの副業収入が経費を上回ったら、それが成果です。それを所得といいます。

収入額から経費額を差し引き所得額を計算しますが、経費は副業の種類によって特徴があります。その特徴を副業の種類ごとに列挙し経費額の計算方法を検証します。

所得の計算手順

所得とは税法の用語です、会計でいう利益のことです。

所得は、益金から損金を差し引いた差額として求められます。

益金、損金、収益、費用及び経費をしっかり捉えましょう。

経費とは、経営費用の略語です。その範囲は曖昧ですが簡単に言えば「経費=費用」であり、「経費=損金」です。所得税法では経費または必要経費を使いますが、法人税法では損金を使います。商業会計では費用ですが、工業会計では、製品製造に関する領域において経費を使います。

ですから、経費という表現で具体的に何を指しているのかに注意が必要です。例えば、ガソリン代、家賃、パソコン代及び携帯電話の通話料等も副業収入に拘わる部分は当然経費となります。

サラリーマンの副業に適した所得とは何でしょうか。

経費とは経営費用の略ですから費用で、会計用語です。税法でいう損金と同じです。収益は会計でいう売上のことで、税法では益金といいます。所得は、「益金-損金」で計算しますが、それが「益金-経費」で計算されるということです。

所得税法では、所得を10種類に区分しますが、サラリーマンの副業として適合するものは、不動産所得、事業所得、給与所得、及び雑所得が挙げられます。

不動産所得とその算定式

不動産所得とは、土地や建物の貸付、不動産に設定されている権利(地上権)などを、貸し付けることによって生じる所得で、「不動産総収入額-必要経費=不動産所得」として計算します。

ちなみに、地上権とは他人の土地に、建物、広告塔、電波塔等を設置して利用する権利ですが、建物の敷地として利用する場合の地上権を特に借地権といいます。

不動産所得に属するものは

  1. 土地や建物などの貸付け
  2. 地上権など不動産の上に存する権利の設定及び貸付け
  3. 船舶や航空機の貸付けによる所得で事業所得や譲渡所得に該当しないものをいいます。

不動産所得で重要な経費

① 租税公課

固定資産税、都市計画税

② 損害保険料

火災保険料、地震保険料

③ 減価償却費

建物、建物附属設備、機械装置、器具備品、車両運搬具などの資産は、一般的には時の経過等によってその価値が減っていきます。このような資産を減価償却資産といいます。この価値減少分を経費として捉えたものが減価償却費です。

④ 修繕費

修繕費とは壊れたり破損した固定資産を、元々機能していた状態に原状回復させるための経費です。

⑤ 外注管理費

賃貸料の徴収、賃貸物件の管理、清掃、補修等、また空室が生じた場合の入居者募集等を外部業者に委託することで生じる経費です。

サラリーマンの副業としての不動産所得に係る経費の特異性

① 新規設備投資に係る借入金利子

不動産貸付に新規に参入するためには多額の資金が必要です。借入金を導入した場合には当然利息が発生します。この不動産購入のための資金に対する支払利息は経費に計上できます。

② 修繕費の資本的支出と収益的支出

不動産は経年や自然災害、また使用により劣化したり、毀損したりします。これに手を加えて元々機能していた状態に原状回復させたか、より資産価値を高めその耐久性を増したかにより収益的支出(修繕費)と資本的支出に分けられます。前者修繕費は経費とされ、後者、資本的支出は該当する資産の価額をその分増額します。

③ 慎重に契約したい外注管理費 

外注管理費とは、不動産管理会社へ支払う、賃料の徴収、不動産の管理費や清掃費、除草費、植栽剪定費用など、不動産投資に関する外注費で勿論経費に計上されます。副業としてのサラリーマン事業主にとって大変に便利です。一方、備品の購入代、修繕補修費等を管理会社の関係会社との随意契約金額で請求されますが、これが割高で自主購入の方が安価だと不満をよく聞く経費でもあります。 

また空き室が出ると募集費や入居者の身元調査費という名目で1ヶ月分の賃料を請求するケー スもあります。もちろん契約書に記載されていますから、拒否できませんが契約時には充分注意したいものです。

事業所得に属するものは

事業所得とその算定式

事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業から生ずる所得です。

「収入金額-必要経費=事業所得金額」として計算されます。

事業所得で重要な経費

①必要経費とは

収入を得るために直接必要な売上原価や販売費、管理費その他費用のことをいい、例えば、次に掲げるようなものがあります。

売上原価

小売業、卸売業で一定期間における売上高に対応するの仕入時の取得原価

給与、賃金

雇用した従業員に支払う労働の対価(人件費)

地代、家賃

営業を営むうえで必要とする土地及び建物の賃借料

減価償却費

営業活動にしたり、利用する建物、建物附属設備、機械装置、器具備品、車両運搬具などの資産は、一般的には時の経過等によってその価値が減っていきます。このような資産を減価償却資産といいます。この価値減少分を経費として捉えたものが減価償却費です。(不動所得と同じです)

なお、家事上の経費は必要経費になりませんが、家事上の経費に関連する経費のうち、事業所得を生ずべき業務の遂行上必要である部分の金額は必要経費となります。

例 水道光熱費、地代家賃等、通信費、ガソリン代

② 経費の特殊性に基づく計算方法

経費はその計算方法の観点から、支払経費、測定経費、月割経費及び発生経費に分類されます。

  • 支払経費は現金による支払いの事実に基づき経費として計算される項目です。支払いの都度、領収書を受け取ってこれを集計して経費額とします。

  • 測定経費は、電気代、ガス代及び水道代代等の消費量を計器で測定できる経費です。これは検針により消費量を把握して期間中の経費額とします。

  • 月割経費は、年額で計上される経費を月数で会計期間に割振って計上する額とします。
    代表的なものは減価償却費です。これは、工企業では通常月単位で製品原価の計算をしますので、年額で計上される経費を月単位に割振る必要があって頻繁に使われますが、副業では重視しなくて結構です。

  • 発生経費は災害損失、盗難損失、工企業の生産過程で生じる仕損費(生産ロス)等のことです。発生時には現金支出を伴いませんが、損失として認識できますからその損失額を経費額とします。

③ 事業所得における必要経費の特例

家内労働者の所得計算の特例

自宅で行うピアノの教師、洋服仕立の内職者、外出して行う、電気、ガス、水道の検針担当者等を家内労働者といいます。この家内労働者等の収入は低額ですから、必要経費は最低65万円を無条件に差し引くことができます。

事業に専ら従事する親族がある場合の必要経費の特例

事業主が生計を一にする(事業主の所得で生計を立てている)配偶者その他の親族に支払う給料などは、原則として必要経費に入れません。

しかし、事業所得では事前の申請など、要件を満たすことによって、経費として算入できます。白色申告の白色事業専従者控除では、配偶者86万円、その他の親族50万円と金額が決められています。青色申告の青色事業専従者給与では上限の設定もなく、妥当性のある金額であれば全額経費として算入が可能です。

サラリーマンの副業としての事業所得

副業に限らず、事業で共通することは、小資本で、人件費が掛からない、粗利益率が高いもの、そして近年では、社会のニーズに適合しているかどうかをどのように判断するかです。

所得税法は、記述のように所得を10種類に区分し各々所得計算をし、合算します。これを所得税の総合課税のための損益通算といいます。

細かい規定は省きますが、サラリーマンの給与所得と副業の事業所得は損益通算できます。そこで、事業所得が赤字でも給与所得の源泉徴収された納付済みの所得税から還付を受けられます。還付があるといっても、事業所得と認められるのは規模の面、継続性の面等から給与所得を凌駕している場合ですから、事業所得の赤字分全額を補うだけの所得税の還付を期待できません。また、それを期待するようでは何のための副業かわからなくなります。

給与所得とその算定式

給与所得とは、サラリーマン等が勤務先から受ける給料、俸給、賃金、歳費、賞与などの所得をいいます。

給与所得は「収入金額-給与所得控除額=給与所得の金額」として計算されます。

副業としての給与所得の代表的なものは、本業の業務が終了した後のコンビニエンスストア等での勤務、などです。

給与所得に属するものとは

給与所得とは、勤務先から受ける給料、俸給、賃金、賞与等の所得ですが、その他にも金銭で支給されたものの他、勤務先から受けた経済的利益も含まれます。

  1. 商品等を無償または低い価額で譲り受けることによる経済的利益
  2. 土地や建物等を無償または低い使用料で借り受けたことによる経済的利益
  3. 金銭を無利息または低い金利で借り受けたことによる経済的利益

給与所得の経費である給与所得控除とは

給与所得は、事業所得などのように必要経費を差し引くことができないかわりに、給与の収入額から所得税法で定めた給与所得控除額を差し引いて求めます。これは給与所得を速やかに計算するために便宜的に取られた必要経費の概算額です。

給与所得には、源泉徴収制度が適用されています。源泉徴収の担い手は個人事業主、法人即ち会社です。源泉徴収制度は、月毎の分割徴収ですから納税者に痛税感がない、徴収漏れがない等の長所が指摘されていますが、徴収の過程で事業主に経費の正確な計算まで課するのは困難なことからこのような便宜的方法が取られています。 

給与所得控除額は、経費の概算見積額であって、完璧なものではありませんから、一定の要件を満たすものを特定支出として確定申告を条件に給与所得から控除できます。

例 通勤費、転居費、研修費、資格取得費等

サラリーマンの副業としての給与所得

サラリーマンが本業とは別の事業体で稼働する訳ですから、所得税法上は本業の源泉徴収票と副業の源泉徴収票を合算して確定申告をして、改めて納付税額を計算しなければなりません。この場合我が国の所得税法は、超過累進課税を採っていますから通常は追加納税となります。

所得税で変化が生じると、連動して住民税も変化が生じます。住民税の納付は、普通徴収と特別徴収とがあります。源泉徴収の制度と併せて、事業主が毎月の給与から住民税を差し引いて従業員らの代わりに納付するという特別徴収が行われている場合には、本業の事業主は従業員の副業の存在を知ることになります。これを避けるためには、予め普通徴収を選択しておくべきです。

本業の事業体が、副業として他の事業体での兼務を是認するでしょうか?

公務員には、守秘義務、職務専念及び政治活動禁止の義務がありますから、他事業体に兼務するアルバイトなどは職務専念義務違反となります。

民間企業でも、役員などは、受任者としての善良なる管理者の注意を持って会社経営に当らなければならないという善管注意義務と会社の業務方針に従って常に会社に対して忠実に仕事をする忠実義務を負っています。これも忠実義務違反となります。

勿論、一般従業員も、常に健康な状態で会社に労務を提供する義務を負っています。副業は結果的に長時間労働となり、体力的な疲労の蓄積が集中力の欠如を招きその結果、会社が多大な損害を被る危険があること、従業員が外部に出ることで企業の内部秘密が漏洩する危険があるとして副業を嫌います。本業の事業体の姿勢はどうあるかを知ってから行動すべきです。

副業を認める場合の企業の姿勢としては

  • 許可制にする
  • 届出制にする
  • 完全な解禁とする

の3つを挙げられますが、上記の理由から完全解禁には消極的です。

雑所得に属するものは

雑所得の具体例と算出式

雑所得とは、他の9種類の所得のいずれにも当たらない所得をいい、公的年金等、非営業用貸金の利子、著述家や作家以外の人が受ける原稿料や印税、講演料や放送謝金など、また最近の新しい副業としてブログを書いてアフィリエイトによる広告収入を得る行為や、ネットオークションで私物を売る行為がこれにあたります。事業所得と同じように、額に汗して利益獲得を目指している経済活動です。

「収入金額-必要経費=雑所得金額」として計算されます。

上記の計算式で、雑所得が「20万円以下」の場合は確定申告をする必要がありません。

雑所得とその重要な経費

経費の計算方法等は事業所得と同じです。

経費のうち副業に係る部分をどのように抽出するかが問題です。

例えば、講演料収入では、会場に自家用車で出向いたなら、業として全国を飛び回っている訳ではないので、車両に拘わる部分の経費を全額、講演料から控除できません。この配分を合理的に説明できなければなりません。

また、現代の生活必需品である携帯電話(通信費)はどの程度副業に拘わっているかによって発生した通信費を事業に係る部分と私生活に係る部分とに分けなければなりません。パソコン(事務用品費)についても同様です。

サラリーマンの副業としての雑所得は、事業所得とは違って給与所得と損益通算はできません。

ですから、雑所得の赤字分を給与所得の源泉徴収税額から還付を受けられません。

雑所得と事業所得の区分

税法が具体例として判別しているもの

不動産所得では、アパートなどの場合は、賃貸できる独立した部屋の数がおよそ10室以上、独立家屋の貸付けはおおむね5棟以上のときは事業所得としています。また、食事を提供する場合は雑所得または事業所得です。

事業所得

国税庁の見解によれば、事業所得は下掲の要件を満たさなければなりません。

  • 営利性と有償性があること
  • 反復して継続的に遂行する意思があること
  • 自己の計算と危険において独立して営まれていること
  • 精神的・肉体的労力の程度
  • 継続して安定した収益を得られること

まとめ

経費とは、経営費用の略語です。曖昧ですが、「経費=費用」であり「経費=損金」であります。税法では所得税法は経費または必要経費を使いますが、法人税法では損金を使います。会計では、商業会計では費用ですが、工業会計では、製品製造に関する領域では経費を使います。ですから、経費という表現で具体的に何を指しているのか注意してください。

サラリーマンが、給与所得の他に副業による所得があったら、所得税は総合課税が原則ですから、確定申告をしなければなりません。

税法の規定に沿っての給与所得(源泉徴収票ですぐ把握できます)と副業による所得(収入額ー経費)を機械的に合算して、次に納税者個人の事情を反映する、扶養親族の人数、配偶者の有無、配偶者が有る場合のその所得の有無、社会保険料の支払額、等14項目の所得控除を差し引き、これに累進課税による税率を乗じて所得税額を計算します。

なお、確定申告には、青色申告と白色申告という制度があります。外見的には申告書の表紙の色が違うだけですが、内容は著しく異なります。節税には青色申告が有利です。銘記しておいてください。

執筆者:久慈 伸樹

私立の専門学校専任講師として税務会計を担当、傍ら 千葉県の私立四大に時間講師として招聘され並行して勤務する。学園の配置転換により、系列の経営短大の専任講師として配属される。少子化によるリストラで、早期退職を打診され、これを機に退職し、大学の講師職も辞して、税理士登録し個人事務所を立ちあげる。