政府が推進する働き方改革によって、働き方の選択肢が増えつつあります。一昔前の日本ではあまりなじみがなかったものの、近年ではリモートワークという言葉自体が身近な存在となり、実際に働きたいという人も増えています。
この記事では、現在の日本におけるリモートワークの求人動向や転職方法について解説していきます。
日本におけるリモートワークの現状
リモートワークという働き方は、諸外国ではある程度浸透しつつあるのが現状です。一方で日本ではまだまだなじみは薄いです。
総務省がまとめた「平成26年版 情報通信白書」によれば、日本における直近15年間のテレワーク導入率は約10%前後で推移しています。調査期間のうち、最も古い2002年末のテレワーク導入率は8.5%、2009年末には19.2%まで増加しました。その後減少し続け、最新の2013年末では9.3%となっています。
思ったよりも日本社会に浸透していない、と感じた人が多いのではないでしょうか?主な理由としては
- 適した仕事内容がない
- セキュリティなどの問題が心配
- 社内コミュニケーションが円滑に進まない
- スムーズで柔軟な連絡がとりにくい
などの考えを企業側が持っていることがあげられます。
しかし、政府が働き方改革実行計画において、柔軟な働き方を目指した環境整備・ガイドライン刷新などを行うことを明言しました。また、政府はテレワーク推進への取り組みとして、具体的な数値目標をかがけています。2020年までにテレワーク導入企業を2012年度の導入率(11.5%)の3倍とし、週1日以上は終日在宅で仕事をする人(雇用型在宅型テレワーカー)を全体の10%以上とするとのことです。
リモートワークは、今以上に選択しやすい働き方のひとつとなっていくことが想定されます。
未経験でもリモートワークという働き方は選べるのか?
リモートワークが選択できる求人数以上に、リモートワークで働きたいと考える実際の求職者数は多いかもしれません。ではリモートワークの仕事は実際にはどんな流れなのか、未経験でも働ける求人はあるのか、そのために必要な方法は、などを解説します。
リモートワークの働き方~1日の流れ~
リモートワークで働く知り合いのエンジニアの主な1日の流れをご紹介します。ここでは時間軸を設けず、大まかなやるべきことについて説明しています。
- 起床・身支度
- 午前中の仕事
- 昼食
- 午後の仕事1
- 小休憩
- 午後の仕事2
- 終業
リモートワークの良さは、仕事をする場所を選ばないということ。身支度を簡単に済ませて自宅で仕事をスタートすることも可能です。自宅以外にもカフェなど自由に場所を選べるので、事細かな時間設定は必要ないでしょう。
午前中の仕事のスタート時刻は、相手先の担当者の都合に合わせておおむね10時頃とするワーカーが多いでしょう。適宜小休憩・昼食をはさみながらも、社内外の人と電話・メール・チャットによる打ち合わせや各種連絡は可能な状況にしておきます。
ここがリモートワークでの重要なポイントです。電波が悪くて連絡がつかない、休憩で居眠りしていて急ぎの返信をおろそかにした、などの行為は信用問題につながります。
相手担当者の状況にもよりますが、18時頃を目安に当日の仕事に区切りをつける段階に入り、19~21時頃には終業するワーカーが多いです。
未経験でもリモートワークの仕事に就くために注意しておきたい3つのこと
仕事に対する「自由度の高さ」がリモートワークの魅力のひとつである一方、これが弱点のひとつにもなる恐れがあります。未経験でリモートワーク可能な求人は存在しますが、社内で仕事をしているときよりも、よりいっそう注意しておきたい3つのことをご紹介します。
- 上司や同僚など社内外でのコミュニケーションをおろそかにしない
- いつでも連絡が取れる「安心感」を相手に与えること
- 職場以上にデータ管理の徹底を
この3つは、非常にシンプルな内容です。しかし非常に重要な内容でもあります。適当に扱ってしまうと自分や自分が行った仕事への「信頼」を損ねることになりかねません。
社内で仕事をしている場合には、直接的でタイムラグのないコミュニケーションが可能です。ですがリモートワークの場合はタイムラグが発生します。それとコミュニケーション不足が合わさると、ちょっとしたトラブルが重大な企業問題へと発展することがあります。
データ管理は社内で働いている時以上に自己管理・自己責任という言葉が重くのしかかります。例え意図的でなくても情報漏洩をしてしまうと、リモートワークの従事者としての信頼に傷がつき、以降の就労に大ダメージを負うこととなります。
エンジニアはリモートワークの求人案件が豊富?未経験でも可能?
IT関連の仕事はリモートワークに向いていると思われがちですが、その理由はなぜなのでしょう?実際のところ、エンジニアの仕事は豊富にあるのでしょうか?
リモートワーク求人のなかでもエンジニアは一番多い?!
エンジニア職には、システム開発など個人でじっくり時間を使って進める作業があります。これはリモートワークがしやすい仕事内容ともいえるでしょう。仕事の成果(進捗)がわかりやすいということもあり、エンジニア職のリモートワークを認めている企業は多いです。
リクルートキャリアがまとめた2017年8月末での転職求人倍率において、SEは3.35倍、Webエンジニア含むインターネット専門職は5.99倍、組込・制御ソフトウエア開発エンジニア4.77倍でした。まとめてIT系エンジニアでは3.88倍となっています。エンジニア職のそもそもの求人倍率自体も多いのが現実です。
バブル期以来の売り手市場といわれている求人業界。未経験でもリモートワークで働くことができる求人案件も、比較的見つけやすいといえるでしょう。
エンジニアでもリモートワークに向いていない仕事がある?
リモートワークは、誰か・何かに邪魔される事なく1人の時間を集中して使い切ることができるのが大きなメリットのひとつです。ただ、リモートワークという働き方が効果を発揮する場合もあれば、その逆もあります。
例えば、自分の裁量だけでは完結できない仕事内容の場合。営業や他部署のスタッフ、顧客を含めた各種連携が欠かせないようなプロジェクト案件では、複数の人と対面でコミュニケーションが必要となります。
エンジニア職だから必ずリモートワークが適しているとは限りません。リモートワークでは生産性が低下することもあり得るのです。
リモートワークで事務職として働く
事務職は、社外でも仕事を進めやすい内容が含まれる職種のひとつです。事務職としてリモートワークで働く求人は、実際には出回っているのでしょうか?
家事や子育てとの両立を求める女性から注目されるリモートワーク求人
働き方改革においても、結婚や出産などで一度仕事から離れた女性が働きやすい環境を作っていくことが重要とされています。育児・介護によってこれまでの働き方ができなくなった人々など、潜在的な労働力を発掘していくためには、リモートワークは欠かせない働き方のひとつとなるでしょう。
現在では事務職の求人で、リモートワーク可能・一部会議などで数日出勤などが見受けられます。オンラインアシスタントという職種で、在宅勤務の事務職を募集している企業もあります。仕事内容はデータ作成・電話対応(テレアポ)・秘書的業務・経理業務など幅広く、社外でも十分に対応できるものがたくさんあります。
リモートワークで事務職として働くために必要なスキルは?
リモートワークで事務職として働くためには、言われたことはもちろん、臨機応変に自己判断して最良の結果を生み出すことが重要です。リモートワークでは誰かの姿をお手本にすることはできません。与えられた時間内で望まれたこと以上の成果を出して初めて、自分の仕事を認めてもらえることにつながります。
リモートワーク可能な事務職で、重宝するであろうスキル・ツールの主な例です。
- 秘書技能検定
- MOS(マイクロソフトオフィス スペシャリスト)
- 日商簿記検定
- チャットワークやスカイプをはじめとしたオンラインサービス
- ある程度の機能を備えた(各種必要なサービスが連動可能な)PC
その他では、柔軟でスピード感のあるコミュニケーション能力を求める企業が多く、資格よりも新しい知識・人・モノに柔軟に対応できる「目に見えない能力」が重要なカギとなるでしょう。
海外でリモートワークを選択する人も
業種・職種を選ばず、海外でリモートワークを選択する人も増加しています。すでにアメリカでは労働者人口のうち約4人に1人がリモートワークで働いているのが現状です。海外にいながらリモートワークで働く方法として、2つご紹介します。
リモートワーク可能な海外企業を探してグローバルに活躍する
欧米ではすでに多くのフリーランスがリモートワークで働いており、多国籍のスタッフが集まってそれぞれが活動している海外企業・チームがたくさんあります。
例えば、上記のような海外サイトでフリーランス向けのリモートワーク可能な仕事を見つけることも可能です。この場合、円滑なコミュニケーションで仕事を進めていくためには語学が重要なカギとなってくるでしょう。
国内のクラウドソーシングサイトなどを使い、海外でリモートワークする
国内企業がベースとなったクラウドソーシングサイトでは、現在のスキルを活かしながら会社に出社することなく、海外でも仕事を行うことが可能です。海外で働くなら海外企業でなければならないわけではありません。
短期的に海外へ出かける場合でも、国内企業で受けた仕事をリモートワークで完結させることもできます。
まとめ
2009年度には0.45倍まで激しく落ち込んだ有効求人倍率が、2016年度には1.36倍にまで復活しました。2017年9月は1.52倍と上昇率も安定してきています。優れた人材の確保のため、リモートワークという新しい働き方を取り入れていく企業も今後増加していくことでしょう。