いよいよ、本連載も最終回となりました。

本連載ではさざまな働き方を紹介し、ヨーロッパを中心とした働き方改革の現状、メンバーシップ型とジョブ型の働き方のちがいなどを解説してきました。

連載の最後に、これから働き方はどのように変化していくのか、また、どのように働くことが個人・社会・経済にとって理想的なのかを考えていきましょう。

この連載をきっかけとして、多くの方が「自分にとって理想な働きとはなんなのか」を考えてくだされば大変うれしく思います。

働き方の多様化がもたらすもの

現在は、昔のような、女性は育児と家事をして男性は朝から晩まで働く……という時代ではなくなりました。

女性でもバリバリ働き、男性でも育児をするのが一般的、という考えに変わってきたのです。

ですがそうはいっても、家事や育児はいまだに女性の負担が多いですし、家のことを手伝う時間的余裕がない男性も多いでしょう。

また、共働きが一般化したため、子どもがいる家庭は「仕事中子どもをどうすべきか」という問題に直面することとなります。

ほかにも、結婚する人しない人、子どもを持つ人持たない人、給料より自由時間を優先したい人、さまざまな職種に挑戦したい人、仕事をしながら大学に通いたい人……望む生き方は、人によってそれぞれ違います。

その「それぞれ」に合わせるために必要とされるのが、働き方の多様化です。働き方の多様性とはつまり、人生の多様性を認めるということでもあるのです。

働き方の多様化は、「人によって求める理想がちがうのだからそれに対応しよう」という、ごくごく簡単な話なのです。

労働者にも企業にもメリットがある働き方改革

わたしは現在、フリーランスという働き方をしています。

毎日同じ時間に通勤するのが嫌なこと、集団作業より個人作業が得意なこと、人に決められたスケジュールより自分で時間管理したいことなどを踏まえると、フリーランスはぴったりの働き方だと思っています。

ですがフリーランスは収入が不安定なので、フリーランスの大きな可能性を感じるとともに、デメリットも痛感しています。

そのため、わたしにとっては、複数の活動分野を持ってフリーランスとして手堅く収入を得ていくことが理想的な働き方だといえるでしょう。

ですがそれが社会として「理想的な働き方か」といえば、そうとは限りません。

フリーランスというのはあくまで選択肢のひとつです。多くの労働者にとっては、「正社員」という肩書きの方が魅力的に映るでしょう。

より多くの人が望む「新しい働き方」を考えれば、社員という立場を確保しておきながら、働く時間を自分で決められ、副業や複業が認められ……という、柔軟な働き方の方が需要があるはずです。

企業としても、働き方を柔軟にすれば、いままでの仕組みでは働けなかった人を雇うことができるというメリットがあります。

新しい働き方の導入は、労働者だけでなく、企業にも利益があることなのです。

企業がこういったメリットにもっと注目すれば、働き方改革ももっと進んでいくのではないでしょうか。

選択肢の多さが人生の豊かさである

わたしは、選択肢の多さが人生の豊かさにつながっていくと思っています。

「育児をするために仕事を諦めるか」「仕事をするなら子どもを持つことは諦めるか」の2択より、「仕事と育児を両立させる」という第3の選択肢があった方が、人生に幅が生まれます。

もちろん、育児や仕事をするか否かは本人の自由。ですがそこに、選択肢があるかどうかが大事なのです。

日本は、高校から大学に進学し、就職活動をして新卒採用……といったように、人生における選択肢があまり多くありません。(実際、選択肢はたくさんあるのですが、それに気付きづらい状況になっています)

ですがこれからは、海外の大学を卒業したり、一度退職して世界旅行に行ったり、一旦フリーランスとして活動してから会社員に戻るために就職活動をしたり、という人も増えてくるでしょう。

ひとりで子育てしている人や介護をしている人、もうひとつ仕事を持っている人なども増えていくかもしれません。

そういったさまざまな人生に対応するために、柔軟な働き方が必要になってくるのです。

いまはまだ新卒一括採用が機能していますが、少子化が進んで労働力不足が悪化していけば、必然的に働き方を柔軟にすることが求められるでしょう。

そのときになって慌てずに済むように、企業はいまから働き方改革を進めていくべきですし、労働者も「社員としてひとつの会社に所属する」以外の道を視野に入れていくといいかもしれません。

働き方が見直され、より多様で柔軟な仕組みができていけば、さまざまな「理想の働き方」が実現され、働きやすい社会に近づくのではないでしょうか。

取材・記事制作/雨宮 紫苑