本連載も、残すところあと2回となりました。次回では連載の総まとめをするとして、今回は本連載で紹介した働き方や、ジョブ型・メンバーシップ型のちがいなどをおさらいしていきましょう。
この連載ではジョブシェアリングやパラレルワークなどさまざまな働き方に触れてきましたが、もしあなたが働き方を選べるとしたら、どういった働き方を望みますか?また、そういった働き方を実現するためには、なにが必要だと思いますか?
この連載をきっかけに、そういったことについて、今一度考えていただければうれしく思います。
新しい働き方が可能にする生き方
いままで、7通りの新しい働き方を紹介してきました。
まず、本業とは別に仕事を持っている副業。ドイツでは本業のかたわら、非課税の範囲内でミニジョブをしている人が増加しています。
そして「名刺をふたつ持つ」ことを指す複業。スイスでは一般的で、ふたつの本業を持っている人も少なくありません。
ひとりぶんの仕事を複数人で分割して行うジョブシェアリングや、働く場所を選ばないリモートワーク、仲介会社を通して採用・就職する間接雇用なども注目されています。
さらには、仕事にとらわれない選択肢を可能にするパラレルキャリア、報酬や労働時間を自分で決められるフリーランスなども取り上げました。
日本では契約社員というかたちでの間接雇用やフリーランス以外は、まだピンとこないかもしれません。ですが世界では働き方改革が進んでおり、さまざまな働き方が可能になっているのです。
こういった新しい働き方の特徴とメリットは基本的に、
- 自分のライフスタイルに合わせやすい
- さまざまな分野で活動しやすい
という2つの点が挙げられます。
この「さまざまな分野」というのは、プログラミングと経理という職種をまたぐことはもちろん、仕事と学業、仕事と趣味、仕事と子育てなども含みます。
現在求められている働き方は、労働者自身が労働時間や労働場所を決める裁量があり、ひとつの仕事に縛られず複数の分野で活躍できることといえるでしょう。
メンバーシップ型で新しい働き方が導入できるのか
ですが、日本のメンバーシップ型の働き方では、この2つの条件を満たすことが難しいのが実情です。
欧米のジョブ型雇用では、個人の仕事が明確なうえ、労働者自身が能動的にキャリアアップしていくことが一般的です。そのため、複業やパラレルキャリアなども可能にしやすいという背景があるのです。
一方の日本は、会社に「就職」して企業の一員になることが求められます。そのため、企業に所属していながらほかの収入源を得たり時短ワークしたりするのは、制度的というよりも慣例として認められづらいのです。
では日本も。ジョブ型の働き方にすれば柔軟な労働環境を整えられるのでしょうか?
それもまたちがうでしょう。
メンバーシップ型ではたしかに新しい働き方を導入するのが難しいですが、メンバーシップ型のよさもあります。また、ジョブ型への移行はいままでのやり方をすべてひっくり返すことになるので、容易ではありません。
そう考えると、メンバーシップ型はメンバーシップ型としておく方がいいという結論になります。
その一方で、新しい働き方を可能にするため、ジョブ型を参考にした「ほどほどキャリア」のような選択肢を作ることが大事になるでしょう。
あくまでメンバーシップ型は維持しつつ、新しい働き方を可能にする道を模索していくのです。
これから進んでいく日本の働き方改革
働き方が見直されはじめた日本。そうはいっても、いままでの慣習や根付いている価値観はなかなか変わりません。また、変えたくない人もいるでしょう。
それでも、いまのままでは、どうしても限定的な働き方になってしまうのが現状です。特に共働き世代が増えた現代では、子どもの年齢や就学状況、パートナーの働き方などに柔軟に合わせることも必要になってきます。
そういった状況に対応するためには、理解を示して積極的に変えようとする企業の姿勢、そして理想的な労働環境を手に入れるために自分から行動する労働者、双方の努力が必要になります。
少子化が進み、労働者不足が指摘されているなか、「いまのままで」では行き詰ってしまうのは目に見えています。そこで新たな選択肢になりうるのが、本連載で紹介した、新しい働き方です。
現状、日本の働き方改革はあまり進んでいるとはいえません。ですが副業が解禁になったこと、少しずつリモートワークが可能になってきていることなどを踏まえると、これからもどんどん変わっていくでしょう。
自分にとってどんな働き方が理想なのか、そのためにはどういう環境に身を置くべきなのか。
まだまだこれからの働き方改革。日本で働くのであれば、今一度、自分の働き方が自分に最も適しているのか考えてみるといいでしょう。
取材・記事制作/雨宮 紫苑