「働く」とは密接な関係にあるオフィス。最近ではクラウドソーシングなど在宅ワークも増えています、また、本ジャーナルで取り上げるビジネスノマドは、複数社を拠点として働き、コワーキングスペースを活用したり、場所にとらわれない働き方をしています。

今回は、リクルート、クラウドワークス、サーキュレーションといった「働く」を創る企業のオフィスはそもそもどうなっているのか?三幸エステートによるそれぞれの企業担当者へのインタビューをまとめました。

それぞれのオフィスをみると以下の通り、「働く」を創るそれぞれの企業の特徴を活かしたオフィスとなっているようです。

  • 「ノマド」を推進するサーキュレーションの、自由に働くことができ、ノマド同士のコミュニティづくりにも貢献するシェアオフィス併設のオフィス。
  • リクルートは、企業文化に基づき「働くことを楽しむオフィス」「コミュニケーション」をキャッチフレーズにした設計を行った。
  • クラウドワークスは、新しい働き方を体現できるオフィスとして、エントランスのプチ図書館・展示スペースやランニングマシーンエリアを設置している。

ノマドのコミュニティづくりを支援し、新しい働き方を実現できるサービスオフィスの魅力

東急不動産株式会社が展開する「ビジネスエアポート」は、「共創」をコンセプトとし、顕在化需要のある個室スペースとさまざまなニーズに対応できる共用スペースを組み合わせた事業モデルで、従来のサービスオフィス、レンタルオフィスとは一線を画した「新しい働き方」を提案する会員制サテライトオフィスです。

以下は、ノマドの事業を展開するサーキュレーションが、コミュニティづくりを目指した東急不動産「ビジネスエアポート」との連携の狙いや取組について取り上げられています。

すべてのビジネスパーソンの「働く可能性」を広げる

「3社で同時に働く」ビジネスノマド(場所・時間・組織にとらわれず自由に働く経営支援人材)を中心に、すべてのビジネスパーソンの「働く可能性」を広げ、「新しい働き方」を推進する株式会社サーキュレーション

2014年1月に渋谷で開業した同社は、2015年2月、丸の内の「ビジネスエアポート丸の内」に本社を移転した。

「私たちは『一生のうちに3回転職する』世界から、『一人が同時に3社で働く』世界の実現を目指しています。具体的には、事業会社出身の若手プロフェッショナルや独立コンサルタント、元経営者を含むフリーの経営支援人材のためのコミュニティづくりを支援し、個人の方がそれぞれの専門性を活かして自由に働ける基盤の形成に尽力しています。また、現在は企業に属している優秀な個々の人材が、独立後に短期間で安定的なキャッシュを得ることのできる環境を私たちが提供していきたいと考えています」

企業と個人の一対一の固定された雇用関係ではなく、複数対複数の柔軟な業務委託契約によって実現しようというところに同社の先進性がある。

コミュニティづくりやセミナー開催などビジネスエアポートを最大限活用

移転直後の同年3月2日、東急不動産と連携して「ビジネス系フリーランスのためのコミュニティづくり」を支援する取り組みを開始した。

現在、オフィススペースの3部屋を契約して30人分の席、会議用のスペースを確保すると同時に、本社を置く丸の内店から徒歩圏にあるビジネスエアポート東京、さらに同青山店・品川店のスペースを活用。これにより、社員だけではなく、同社を通して活動している数百名のビジネスノマド達と相互に連携することが可能になり、雇用に縛られない自由な働き方を実現している。

「今回の移転に際して、いろいろなシェアスペースを見て回りましたが、その中で、このビジネスエアポート丸の内の”シェアワークプレイス”がもっとも当社のコンセプトに近かったこと、連携先として同スペースを運営している東急不動産さんが弊社の事業に共感頂いたことが、移転先選定の決め手の一つになりました」

同社もこれまでの取り組みの中で、今後はノマドを含む外部人材をいかに効果的に活用していくかが企業の競争力になっていくのではないかということを実感しているという。

「これからの企業経営は、外部人材の有効活用が前提となってくると言われています。しかし新しいサービスが故、当社の提供するサービスは、始めはお客様から『わかりにくい』と言われることも多いのですが、一度ご理解いただくと、私たちの世界観に共感していただけることが多いのです」

(2015年8月取材の記事を基にしています。)

企業にはその文化に合ったワークプレースがあるはず「リクルートらしさ」を発揮できるオフィスへの挑戦

株式会社リクルートは2008年1月、東京駅八重洲口前のグラントウキョウサウスタワーに移転した。従業員や業務委託スタッフなど約6000人がここに勤務することになり、事実上の本社といえる。

オフィスを設計するにあたり、基本コンセプトとなったのは「リクルートらしい働き方」の追求だ。委員会活動などを通して全従業員の意見や要望を吸い上げ、オフィスづくりのプロである日本アイ・ビー・エムの協力を得て完成したワークプレースは、企業文化を体現した個性的で使いやすいスペースとなっている。

リクルート

現場からの声もオフィス移転のきっかけに

従業員の要望がバラバラにならないように委員会活動では「リクルートらしい働き方とは何か?」という根源的な議論から始めた。企業文化に基づき「働くことを楽しむオフィス」「コミュニケーション」をキャッチフレーズにした。

人を大事にし、働くことを楽しむ風土。そんな「文化」を反映したオフィスへ。

「企業文化は、その企業ごとに違うのですから、オフィスもそれに合わせてオーダーメイドで完成させていかなければなりません。リクルートの場合は、従業員たちが自ら考え、行動するところが最大の特色です。従ってその文化をもっと際だたせるために、働くことを楽しむ「ワークテイメント(Work+Entertainment)」というキャッチフレーズを提案しました。この言葉は、リクルートという会社の個性を最もうまく表現しているのではないでしょうか」

まず基本となる執務室のレイアウトは、8人ずつのデスクを一つの「島」にして固定したユニバーサルプランにしている。

「とにかく組織変更や人の異動が多い会社なので、机を動かさず人だけが移っていく方式は、手間やコストを減らすうえで絶対に採用したいと思っていました」

「事業展開の都合で分散化してしまったオフィスは、リクルートにとって最大の経営資源である人材の価値を充分に発揮できないスタイルになっていました。そのマイナスを解消できたのは、今回のプロジェクトの最大の成果でしょう。しかしオフィスづくりはこれで終わりではありません。会社が成長していく限りオフィスも進化させ、リクルートらしさをもっと発揮できるものにしていきたいですね」

(2008年5月取材の記事を基にしています。)

株式会社クラウドワークス 新しい働き方を提供する企業が構築した新しい働き方を体現するオフィス

日本最大級のクラウドソーシングサービスを運営している株式会社クラウドワークス。企業と個人がインターネットを通じ、仕事の受発注を容易に行うシステムを確立させた。2011年11月の会社設立から、面積拡張を目的とした移転を2014年10月に実施し、数々の新機能をオフィスに追加した。

クラウドソーシングサービスが今後の働き方を変えると確信する

「クラウドソーシングは、デザイナー・エンジニア等の仕事を受注する側にもメリットの多いシステム。サービス上で仕事を行った際には企業からの仕事の評価がプラットフォーム上に蓄積されていきます。過去の仕事ぶりやクオリティが数値化され表示されるので、ここで実績を貯めていくと引き合いにも繋がるんです」

クラウドワークスは新宿のシェアオフィスの、部屋の片隅の3席からスタート。サービスをリリースした2012年にはベンチャーキャピタルからの出資もあり、南青山のシェアオフィスに移り、さらに1年後の2013年、社員数増加に伴い渋谷のオフィスビルに移転を決める。

同社の移転の条件は、①渋谷駅近くであること、②予算的に旧オフィスとの坪単価に大きな乖離がないこと、③今後の採用のバッファを考え200坪前後の広さを持つビルであることの3点に絞られた。

新オフィスのコンセプトは新しい働き方を体現できるオフィス

「当社は『新しい働き方』を提案していく企業。この移転をきっかけに新しい働き方を体現できるようなオフィスにしたかったですね」

新オフィスで強調したい場所の一つはエントランスとそれに繋がるセミナースペースだという。

「当社の中に足を踏み入れて直ぐの位置に明るい雰囲気のエントランスとクラウドワークスのCをかたどったCカウンターが配されています。ここはプチ図書館・展示スペースとなっており、当社のことが掲載された雑誌や書籍、過去に手がけた成果物などが置かれ自由に手に取ることができます。またカフェコーナーも併設されており、コーヒーを飲みながら社員同士が一緒に語り合える場となっています」

クラウドワークス

そして今回の新オフィス構築の中でも特に面白い発想でつくられたのがランニングマシーンエリアとなる。

「ランニングマシーンとエアロバイクを1台ずつ用意し、さらにここで仕事ができるようにデスクを設置しました。半分冗談の企画だったのですが、いざ導入してみると結構利用者はいますね。ここで何かをつくるというよりは、メールチェックや気分を変えてのアイデア出しに使われているようです。まさに新しい働き方を実践していますね」

「ずっとデスクワークをしていると気分転換がしたくなるのか、稼働率が上がってきますね。2台あるのでここで汗を流しながら打合せをしている姿も見かけます」

(2015年2月取材の記事を基にしています。)

いかがでしたでしょうか?多様な働き方が増えている昨今、働く空間である企業のオフィスも多様性を増しています。実は人生の中でも大きな割合を占める時間を過ごすことになるオフィス、だからこそ最適な空間にしていく必要があります。

<出典>

ノマドジャーナル編集部

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