人材確保がますます重要になる

昨今の労働人口の減少を受けて、日本においてもダイレクトリクルーティングという考え方が大きく注目を集めています。労働人口の減少は、これからの企業が規模を拡大し、または規模を維持するためには、人の採用に大きな力を入れなければならない事を意味します。

これからの時代、ビジネスを作り上げていく経営者にとっては、労働力の確保が非常に重要な課題となっていくのです。企業による労働者の獲得競争はこれからますます激しくなり、事業を拡大することができる余地があるのにもかかわらず、人手が足りない事態に直面する恐れが出てきます。

そのような中で、ダイレクトリクルーティングはこれからのすべての企業にとって必要な手法となるでしょう。今回は人口減少の現代において、企業が効率的に、かつ優秀な人材を獲得する為に必要なダイレクトリクルーティングについて解説します。

ダイレクトリクルーティングとは

ダイレクトリクルーティングとは、文字通り直接的に人材を採用する活動を意味しています。

このように述べると、現代における採用活動の多くも採用活動がダイレクトリクルーティングなのではないかと思う方もいるでしょう。なぜなら、企業が求人媒体に求人広告を出し、それに対して求職者が応募し、面接や試験を行い採用しているからです。

しかし、本来の意味におけるダイレクトリクルーティングは企業による、より積極的な採用活動を意味します。

従来の企業が求人広告を出して、応募者を待つ採用活動は、あくまで応募してきた人の中からもっとも優れた人を採用することしかできません。しかし、企業が求職者に対して積極的にアプローチをしていくダイレクトリクルーティングにおいては、論理的には、求人市場に存在するすべての求職者の中から優秀な人物を見つけ出すことが可能となります。

そのため、企業にとって人材の選択肢が増えることをつながり、よりよい求職者を見つけることができるのです。

ダイレクトリクルーティングが注目される背景

ダイレクトリクルーティングが注目されるようになった背景には、以下の3つが関係しています。

1. 労働人口の減少

日本の労働人口は、2000年半ばをピークに減少しています。そして、この現象はこれから先もしばらく続くことが予想される、この労働人口の減少こそが、ダイレクトリクルーティングに大きな注目が集まるきっかけなのです。

労働人口が減るということは、優秀な人材の絶対数も減るため、そのような人材を採用する機会も減ります。

そのため、求人広告を出して応募者を待つ姿勢ではんかう、企業から積極的に求職者に対してアプローチ行い、自分の手で優秀な人材を採用していくといったダイエットリクルーティングが注目されるようになったのです。

2. 人材市場の流動化

市場における人材の流動化が促進されていることも、ダイレクトリクルーティングが求められる背景の1つの要素です。

昨今は、一昔前のように1つの企業に勤めたらそこに最後まで勤め続けることが当然ではなくなりつつあります。つまり、転職者はよりよい待遇、大きなやりがいを与えてくれる企業を探しているのです。

このように、一昔前と比較して労働者が転職をしやすい状況が実現されつつあり、企業としては常に労働者の離職に備える必要があります。また一方で常に優れた労働者を獲得するチャンスに恵まれているということができます。

3. ビジネスモデルの短命化

現代においてはインターネットやSNSが普及したことにより、1つの新鮮なビジネスモデルが世間に提示されると、それに追従する企業や、それを改良する企業がすぐに出てくるようになり、1つのビジネスモデルが短命化する傾向にあります。

つまり、現代においては、 1つの斬新なビジネスモデルに依存する形で企業が継続的に利益を上げ続けることが難しくなってきているのです。そのため、企業は常に新しいアイディアを生み出す必要があります。

そして、新しいアイディアを生むことにつながるのは人材の多様性です。ダイレクトリクルーティングは企業の中に違ったバックグラウンドをもつ人材を効率的に呼び込むことができます。このように人材の多様性を実現するためにもダイレクトリクルーティングは大きな注目を集めているのです。

ダイレクトリクルーティングのメリット

以下ではダイレクトリクルーティングのメリットについて見ていきます。ダイレクトリクルーティングには具体的に以下のようなメリットが存在します。

1. 転職潜在層へのアプローチ

ダイレクトリクルーティング行うもっとも大きなメリットは、転職の潜在層へのアプローチができるという点です。たとえば、従来型の求人広告を利用した採用では、求職者の積極的な行動があってはじめて企業に対しての応募がなされます。

そのため、転職を積極的に考えている人材のみが対象です。つまり、今の企業で満足しているけれど、よりよい待遇がある場合であれば転職を考えてもよいといった、優秀な人材は対象になりません。

企業から人材に直接的にアプローチをするダイレクトリクルーティングであれば、このような転職潜在層へのアプローチが可能となります。ダイレクトリクルーティングは通常、リンクトインのようなスキルやプロフィールを登録しているサイトを利用して、企業が自分達の職場に欲しいと考えている人材を発掘していきます。

現在はとくに転職を考えていない人材も、とりあえず登録しておくだけで、自らのキャリアアップの機会が得られるかもしれないという心理が働き、登録しています。

2. 市場に出てこない人材を獲得することができる

このメリットはとくに中小企業において大きなものとなります。従来の人材紹介会社は、求職者に対する待遇がよりよいところへ積極的に人材を紹介します。

それは多くの場合、人材紹介会社が人材を企業に紹介したことにより得られる手数料が、その人材に対して企業が提示した給料の〇%と決められているためです。

このことから、人材紹介会社は、求職者に対してよりよい待遇を提供することのできる大手企業に人材を紹介する傾向が高くなるのです。つまり、こういった市場においては、資金力のない中小企業はどうしても大企業に後れを取る形となります。

しかしながら、市場における人材のすべてが高い給料だけを求めて働きたいと考えているわけではありません。他にない魅力的な事業を行っている中小企業が存在すれば、その事業に対して興味をもつ人材というものが必ず存在します。

ダイレクトリクルーティングにおいては、中小企業が積極的に自分たちの会社の魅力と特徴をアピールすることができ、そこに魅力を感じてくれるであろう人材に対して直接アプローチをすることができるのです。

3. 採用ノウハウの強化

こちらは企業の内部的なメリットとなりますが、ダイレクトリクルーティングを活用することは、企業内の採用力を強化することにつながります。

ダイレクトリクルーティングにおいては、インターネット上で公開されている経歴やスキルなどにより、企業が欲する人材に対して直接的にアプローチを行います。その際、人材に対して自分たちの企業がいかに魅力的であるかといった点を伝える必要があります。それができなければ、人材は企業の面接の機会すら欲しいと考えないでしょう。

このことから、ダイレクトリクルーティングを繰り返し行っている企業は、自分たちの魅力はどこにあるかということを客観的に考えることができるようになります。往々にして企業の内部にいる者と、企業の外部にいる者の間には企業に対する認識に差が存在します。

そういった差を埋めて、人材の視点から企業の魅力というものをアピールすることが出来るようになる能力は、将来の採用活動のみならず、企業のブランディングやマーケティングにも役立つ可能性を秘めています。

ダイレクトリクルーティングにより人材を選ぶポイント

ダイレクトリクルーティングは、以下のポイントに注意し行うと効果的です。

・欲しい人材を明確に定義する
・金銭面の待遇のみならず、自社の個性を伝える努力をする
・候補者とは複数回の会合をセッティングする
・面接を行う場合は、一方的ではなく双方向的なものを心がける
・自社のブランディングについて見なおす

ダイレクトリクルーティングを行う場合、従来の求人広告に対する応募と同じ工程を経て内定を出すといった意識は捨てるべきです。

面接の場だけでなく、企業と求職者がお互いを知ることのできる会合をセッティングするなど、関係が一方的にならないように配慮してください。企業が労働者を選ぶ時代から、労働者が企業を選ぶ時代へと移り変わってきているのです。

ダイレクトリクルーティングを始めよう

このように昨今の採用においては、ダイレクトリクルーティングの必要性はますます高まっていくでしょう。労働者人口の減少は、企業が待ちの姿勢では効率的に採用を行うことができなくなることを意味します。これから規模を拡大させていこうと考える企業は、すぐにでもダイレクトリクルーティングに取り組む必要があるでしょう。

そして、ダイレクトリクルーティングによる採用を繰り返していくことで、企業の採用力は次第に強化されていきます。それは、優秀な人材を呼び込むことにつながるので、はじめは見様見真似であっても、ダイレクトリクルーティングになるべく早く着手することが必要です。