フライヤー×サーキュレーションの「知見と経験の循環」企画第8弾。

経営者や有識者の方々がどのような「本」、どのような「人物」から影響を受けたのか「書籍」や「人」を介した知見・経験の循環についてのインタビューです。

今回登場するのは、Brew株式会社代表取締役の原 佳弘さん

「業界の当たり前」の変革に挑戦し、新規事業開発やマーケティング、営業、販売促進など、幅広いテーマのセミナーや研修の企画、開発、講師のプロデュースを手掛けてこられました。

新卒の会社に在籍中に中小企業診断士取得し、大企業向けの公開セミナー、企業研修、コンサルを行う株式会社マーケティング研究協会に転職。講師とクライエント企業とのマッチングを行う研修エージェントにて、10年間で200人以上の講師・コンサルタントと出会ってこられました。

ご自身も研修講師として活動するも、セミナーや研修の企画設計の奥深さと面白さに気付き、裏方としてセミナーや研修プログラムの企画開発と販促マーケティングを専門にしておられます。

2015年9月には、講師の「市場価値のある魅力」を引き出し、売れる講師に変える戦略を立てるプロデューサーとしての知見・経験をもとに、『選ばれる力』(同文舘出版)を出版されました。

現在4拠点あるオフィスを行き来しながら、ビジネスノマドとしても活躍される原さんは、どのようなキャリアの転機を経て、今の働き方を選ぶに至ったのでしょうか。

講師を徹底的に観察。選ばれるプロデューサーへと転身

Q:原さんはこれまでどのようなキャリアを歩んでこられたのでしょうか。

原 佳弘さん(以下、原):

昔から何かの専門家になりたいと考えていて、大学時代はコンサルタントやシンクタンクのリサーチャーを目指し、希望の会社から内定もいただいていました。

ところが、「新卒からコンサルタントは難しい」という親・親族の説得に反論できず、「力をつけてから転職する!」という決意をもって建設省所管(当時)の会社に入りました。
経営企画、出版編集、広告営業の傍ら資格勉強を続け、27歳のとき、中小企業診断士に合格することができました。

その後、副業として講演やコンサルティング、資格学校の講師の仕事をするようになると、より大きなコンサルティングの仕事を目指し転職活動をすることに。講師と企業のマッチングを図り、企業の課題解決を図る研修エージェントの中でもマーケティングに特化した(株)マーケティング研究協会への入社を決めました。

Q:転職後は、どのような経験を積まれてきたのでしょうか。

原:

法人向けのセミナーの企画や講師探索、販促・集客、当日の運営、参加者へのフォロー(営業)まで一貫して担当してきました。

1年目から講師としても登壇させて頂く機会を頂戴致しました。ただし、全てが順調だったわけではありません。入社1年目の頃は実力もないのに周りから「先生」と呼ばれて、今から思えば天狗になっていたと思います。

また、人の話を聞かず、先入観で企画提案をしていたためか、お客さんからの評判はあまり良くなかったと思います。
そのため年間の営業目標を達成するのが精いっぱいという状態で、やがて鬱になり、もう辞めようかとすら思っていた時期もありました。

ですがあるとき、営業研修の講師をされている方からアドバイスをいただいたんです。

「原ちゃん、売れている営業や講師の一挙一投足をまねしてみたら?」

どんな顔でどんな話し方をしているのか、どんなタイミングで本題を切り出しているのかを観察してまねをするということです。

こうした講師の方々のアドバイスや叱咤激励のおかげで、次第に営業成績もついてくるようになりました。

講師として登壇させていただくようになってからは、昼間に営業や講師業、夜には提案書を書き、セミナーのテキストを作るという自転車操業の日々でした。
今思うと若干ブラック企業みたいですが(笑)とてつもなく充実していましたね。

今は、講師の二極化が起こり、大競争が起きている「講師3.0」の時代

Q:原さんは前職で7年目の頃から、独立・起業を視野に入れたとのことですが、どんなきっかけがあったのですか。

原:

もともと「10年いたら起業しろ」という文化の会社だったので、起業する先輩もたくさんいて、私も起業したいと言っていました。起業に関する本を読み、起業した先輩に会いに行き、起業セミナーにも多数参加していました。

ところが、そう言いながらもなかなか一歩を踏み出せない。そんな私に対して、あるクライエントから「おまえは一生、社畜でいた方がいい!意気地なし!」と喝を入れられました。

ハッとさせられた私は、具体的な独立期限を設定し、必要な行動を洗い出し、独立までのカウントダウンブログなどを始めるなど起業準備をスタートさせました。

周囲がコンサルタントやリサーチャーとして独立する中、私は講師の「市場価値のある魅力」を引き出し、売れる講師に変える戦略を立てるプロデューサーという道を選びました。

今は、売れる講師と売れない講師の二極化が起こり、大競争が起きているまさに「講師の戦国時代」

講師を選ぶ経験と、クライエント企業に研修を売り込んでいく経験を積んできたので、売り込まれる側と売り込む側の両方の気持ちがわかるというのは、自分独自の強みであり、なかなかまねされないポジションだと考えました。

こうして、前職での最後の1年を全力で過ごし、2014年3月末を持って円満退社し、5月に法人登記を行いました。

Q:起業後、どのような変化がありましたか。

原:

実は法人登記をしてから1年目は、苦難の連続でした。

前職のクライエントは全て引き継いできましたので、クライエントが全くいないゼロからのスタートでした。不安や恐怖が押し寄せ、自信を喪失したことも何度もありました
つらかったのは、起業前に「独立後に仕事を依頼するよ」と言ってくれていた方々が突然音信不通になってしまったこと。ある程度あてにしていただけにこたえましたね。

ですが、「数年後に仕事で呼ばれるようになる!」という思いで、新規開拓に力を注ぎました。

そんなとき、これまで関わってきた100人を超える講師やコンサルタントの方々に助けられたんです。クライエントを紹介してくださり、当初は予想もしなかった種類の仕事のオーダーが増えていきました。

今になってやっと、前職で築いたネットワークこそが私の最大の資産だと気づきました。

―「選ばれる力」の源泉―
市場を見据えて講師の魅力を引き出し、「選ばれる講師」へとプロデュースする

Q:原さんは、愛され力というか、人とのネットワークを築くのが非常にうまいと感じています。その力をどのように磨かれたのでしょうか。

原:

やはり「自分一人の力ではほとんど何もできない」とはっきり自覚したことが効いていると思います。能力を磨くことと以上に、人と人の関係こそが最も大事だと起業してからますます強く意識させられました。

また、前職で仕事をより好みしたり専門分野を絞ったりせず、様々な分野の先生方とタッグを組ませていただいた経験が活きているのかもしれません。

その背景には、新しい講師の隠れた魅力を発掘し、市場価値のあるテーマと掛け合わせることで、その方を売れる講師に変身させることが好きという思いがあります。
講師にとってブランディングは非常に重要ですが、そのセルフブランディングのやり方をしらない、自身の魅力にも気づいていない場合が非常に多いです。

講師のプロデュースによってクライエントの課題解決を図る醍醐味も感じています。

講師にも色々なタイプがありますが、市場を見据えて、講師の見せ方をアレンジすることは非常に重要です。

例えば、マナー講師としてはあまりそれほど尖ったブランドにはなっていなかった講師がいました。彼女のプロフィールを見たとき、「大手化粧品メーカーの美容部員」という肩書を見て「これだ」と思ったんです。
「美容知識の専門家」という見せ方に変えると、化粧品業界のクライエントからオファーがくるようになりました。

プロデューサーの活躍は他の業界でも顕著ではないでしょうか。
秋元康さんや「雨上がり決死隊のトーク番組アメトーーク!』の加持プロデューサーなど、プロデューサーの価値は日に日に増しているのではないでしょうか。

市場を見据えて、人の魅力を引き出し、それが最大限伝わるようにプロデュースする能力はますます重要になっているのですね。

ノマド的な生活スタイルがもたらしたものとは?

Q:原さんは、現在どのような働き方をされているのでしょうか。
 今の働き方のメリットも教えてください。

原:

今の仕事の配分としては、新規開拓営業も含めて経営者としての活動が6割、プロデューサー活動が3割、自分が担当させて頂くコンサルティングが1割程度ですね。

ネットにつながればどこでも仕事ができるので、銀座や横浜など4拠点のシェアオフィスを活用しています。訪問するクライエントのオフィスに移動しやすい拠点を選びます。
特にアポイントがないときは、朝起きたときの気分で「今日は昼食で○○を食べたいから銀座にしよう」などと自由に決められるのはいいですね。

あとは、出社・退社時期も柔軟にできるので、これまで一番ストレスを感じていた「通勤電車の苦労や不都合によるリスク」が軽減されたのも大きな収穫です。

ノマド的な生活スタイルを選んだことによって、自分の事業戦略を練るなど、知的な思考活動に時間と心の余裕を割けるようになりました。その結果、タイムマネジメントの精度もかなり上がりましたね。
これは起業すると精度を上げざるを得ないといったほうが正しいかもしれません。

何が独立のブレーキになっているかを知ることも大事

独立を考えているビジネスパーソンへのメッセージをお願いします。

原:

本気で独立を考えているのなら、自分のいつもの環境を変えてみる、副業から始めてみる、もしくは独立しても1年間食えるだけの貯蓄をして心構えをするという、3つのステップをおすすめします。

いつもの会社と自宅を往復する自分の環境をまず変えるのです。

会う人が変わると行動が変わる。
行動が変わると具体的な目標が出来る。

そんな具体的な行動がまず必要なのではないでしょうか。

そこで週末などの副業から始めてはどうでしょうか。
比較的小さいリスクで試せますし、貯金があれば、独立直後に依頼がなかなかこなくても、金銭的な不安は減りますよね。

また、独立や起業を踏みとどまっている場合は、何が独立のブレーキとなっているかを知ることも大事ではないでしょうか。

私の場合は、「環境を変えてもやっていける」という見込みが持てたことが起業の後押しとなりました。
顧客データベースがないと事業ができない、という思い込みがブレーキだったのです。

外部人材の登用は、今後ますます企業の競争力の源泉に

Q:ノマドと企業の方との付き合い方についてはどう思われますか。

原:

成功している企業は、規模を問わず、異業種連携や多様な価値観を大事にしている組織が多いように感じます。

周囲を見渡すと、特にベンチャー企業では、クラウドソーシングサービスや、クラウドファンディングなどのツールを駆使して、しなやかに外部のリソースを活用して成果を上げているケースが多く見られます。

社内の人材だけで自社の変革を起こすのはなかなか難しいので、まずは外部人材を委託やスポットで活用することから始めていくのも手ではないでしょうか。
新規事業の立ち上げや海外進出の検討の際に、外部人材と内部人材との混在型プロジェクトを結成するのです。

注意すべき点は、一過性ではなく継続して取り組む姿勢やビジョンを経営者がしっかり示すこと。スタート時の外部活用の姿勢が、その後の成否を決めることが多いように思います。

知識や経験の豊富な外部人材の積極的な登用自体が、今後ますます企業の競争力の源泉となることでしょう。

本の要約サイト フライヤーのインタビューはこちらから!

原さんは、講師の「市場価値のある魅力」を引き出し、売れる講師に変える戦略を立てるプロデューサーとしての知見・経験をもとに、『研修・セミナー講師が企業・研修会社から”選ばれる力”』(同文舘出版)を出版されました。

原さんの執筆の動機は何だったのでしょうか。

ご自身の生き方、価値観に大きな影響を与えた本、そして『選ばれる人』になるための秘訣も伝授していただきました。続きはこちらから。


ノマドジャーナル編集部
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