就職活動において企業研究が重要なのは当然ですが、ベンチャー企業を志望している学生は、どのような基準で選べばよいのでしょうか。

上場企業であれば、有価証券報告書やアニュアルレポートで中長期的な会社のビジョンが見えるかもしれませんし、いわゆる「就職偏差値」や「平均年収」を参考にする人もいるでしょう。
OB訪問や身の回りの関係者からヒアリングしていくのもいいかもしれません、SNSでコンタクトをとることも可能です。

ベンチャー企業の中にはそのような情報を公開していないものも多いですが、情報の取得は容易になっている現在、情報を見るときの「選択基準をもつこと」の方が重要です。

就職先候補として、勝手にイメージや先入観で絞らずに、できるだけ幅広く見て研究していく必要があります。

では、どのような観点で、ベンチャー企業を選別していけるのでしょうか?
就職活動を終えたばかりの学生が振り返ります。

どのように市場を開拓していくのか?
ビジネスモデルに即した会社の強みがみえてくる

1.ビジネスモデル

新しい市場を開拓するベンチャー企業、それを支えるのはビジネスモデルです。
その会社がどのように市場を開拓していくのか、事業の継続性があるのかを確認する必要があります。

そこで重要になってくるのが、「競合他社の存在」、「参入障壁」、「業界全体の伸びしろ」などになってきます。
つまり、いかにその企業が、その市場(そもそもその市場が存在するのかも含め)でやっていくことができるのかを見極める必要があります。

そうなると自然とその会社の強みや体制もみえてきて、労働集約型ビジネスなのか、知識集約型ビジネスなのか、営業が強い必要があるのか、エンジニアに依存しているのか、マーケティングに優秀な担当者がいるのか、といったところも気になってきます。

その会社のステークホルダーを知る

2.意思決定者はだれか。調達先はどこか

会社は資本を一番出してくれる人の意見が大きく反映される組織です。

そこで、意思決定プロセスがどのようになっているかを知るために、わかりやすい情報として資本がどこから投入されているのかに着目しましょう。
例えば、どのようなVCに投資されているか、親会社の出資が大きいか、事業会社や個人投資家が出資しているのかなどです。
意思決定プロセスに影響をあたえている要素がみえてきます。

VCの出資についてはそのタイミングで公表している会社も多いですが、創業時の出資比率や個人投資家からの調達は開示していないケースもあります。

出資者をみることは、どのようなステークホルダーがいるのか、会社の意思決定にどのような関係者がかかわっているのか、社長のワンマンか、親会社の影響が大きいのか、といった点についてもみえてくることがあります。

理念そのものよりも、そこに真摯に向き合っているのか

3.ビジョン、経営理念

個人的には経営理念は、どこも似たりよったりなことも多いので、その場合はそこまで基準にはならない印象です。(環境保護、まっとうな商売をする、社会に貢献するといった類)
ただ、いくつかのベンチャー企業は経営理念がビジネスモデルを表していることがあります。

経営理念を知ると、企業のことを理解しやすくなります。

また、理念に対してどれだけ企業が真摯に向き合っているかも重要な観点です。
表面上はいいことを言っていても、それに具体的な内容が伴わない場合、理念を外れた経営になることがあります。
そのような場合、「金儲け主義」に陥ることもあるので、要注意です。
実はIPOしかみえていない、というようなこともあります。

4.社長の印象

ベンチャー企業は良くも悪くも経営者の影響力が大きいです。

例えば、3.の理念にも関連しますが、経営者自身が達成したい目標や、創造したい社会について真摯に向き合っていない企業は、入社後イメージと違った仕事をすることになるかもしれません。

また、社長は利益を社員に還元しようとしているか、その社長と上手くやっていけそうか、その社長から何を学べそうかなど、様々な角度から経営者を観察し、「選考」していく必要があります。

多くのベンチャー企業では、社長と面接をすることになります。その際、与えられた時間を精一杯使いましょう。

社員ごとの目線のズレはないか?

5.先輩社員

先輩社員の言動にも注目しましょう。

それぞれの企業には理念があり、戦略があります。その戦略やビジネスモデルが自分のキャリアと一致するかを確認した後、その戦略やビジネスモデルについて複数の社員に聞いてみるといいかもしれません。
返答が社員によってマチマチだった場合、まだ戦略などがしっかり定まっていないということですが、その「誤差」の範囲は感じ取ることができるはずです。

それから、先輩社員は将来のライバルです。その人達と戦っていけるのかというのも観察したほうがいいと思います。
レベルが高い人たちの中でやっていく自信があるのか、はたまたレベルが低すぎて学ぶことがないと思うのか、選考を進める上で重要なことだと思います。

6.設立年、会社の成長フェーズ(会社がどの段階にあるか)

この辺は会社がどのフェーズに居るのかを知るために重要です。フェーズによって経験することが異なります。

例えば、立ち上げ期に近ければ近いほど、制度などはしっかり決まっていない可能性がありますが、立ち上げの活気に満ちた雰囲気の中で仕事をすることができるかもしれません。
また、将来の責任者になる道のりは比較的短いかもしれません。

中途入社は、その人のスキルを重視して採用されますが、それはベンチャー企業も同じです。
ベンチャー企業がどのような中途人材を採用しているのかは、会社のフェーズや状況を理解するのに役立つでしょう。

どのような事業にリソースが分配されているのか?

7.やりたい事業に配属される可能性

企業のホームページには書かれている事業でも、実際は重点的に取り組まれていないこともあります。
海外事業に関心があって、ホームページに海外事業のことが書いてあったとしても、リソースの分配具合が低かったら、海外事業に従事できる可能性は下がります。

実際に入社したら自分が何をするか、という観点と共に、対外的に取り組んでいるといっている事業と、実態としてリソースを投入している事業が異なることも往々にしてあるので、その点を確認しておきましょう。

8.組織文化、雰囲気、社内の人間関係

文化を把握することは難しいかもしれませんが、社員の人格や人間性、雰囲気などで推し量ることはできるかもしれません。

面接に案内をしてくれる社員からでもわかることもあります。
どのような価値観で会社が動いているのか、横のつながりや統制がとれているのか、コミュニケーションは円滑か。社員に同じ価値観が浸透しているのか。

また、どの程度多様性をもった人材がいるのか、それらが連携がとれているのかも重要です。
フラットな雰囲気で自由に意見をぶつけあうことができるのか、実際のところ違う価値観の人間がうまく溶け合って働くのはとても難しいと思います。

ベンチャー企業は、まだまだ社員の人数が少ないところが多いです。だからこそ、その社員と円滑に仕事をしていけそうかという基準は重要です。

大きな企業だったら、人間関係に問題があったとしても、部署の異動で済むかもしれません。しかし、ベンチャー企業では部署の異動で解決できず、転職ということになるかもしれません。

9.業界内の評判

自分で企業の研究をすることも大切ですが、業界の人は就活生よりもその企業のことを知っています。
同じ業界の人が、その企業をどう見ているのか、どこが強みなのか調べてみることも重要です。

ただ、他人の話を鵜呑みにすることも良くないですし、外見は良くても中身がボロボロの企業もあります。あらゆる情報を集め、多くの「事実」から「真実」を見つけていきましょう

最後に

これらの観点を完璧に満たす企業を見つけることは難しいかもしれません。
その場合、自分なりに、どのポイントが重要なのか、どのポイントが重要ではないのか、価値基準を作ることが大切です。

サーキュレーションインターン生:高橋崚真(タカハシ リョウマ)

横浜国立大学 教育人間科学部所属、株式会社サーキュレーション2016年度新卒1期生。2015年10月よりビジネスノマドジャーナルにジョイン。大学3年時に、米国ジョージア大学に交換留学をしたのをきっかけに、海外や異なる文化に関心を持つ。趣味は、お酒、お笑いと映画鑑賞。
ノマドジャーナル編集部
専門家と1時間相談できるサービスOpen Researchを介して、企業の課題を手軽に解決します。業界リサーチから経営相談、新規事業のブレストまで幅広い形の事例を情報発信していきます。