当連載では、「地方×副業、リモートワーク」をテーマに、地方の仕事を取り巻く現状、副業のバリエーション、そしてリモートワークのもたらす可能性について、様々な角度からお伝えしてまいりました。地方への移住、地方での仕事を考える方にとって、少しでもお役に立てる部分がありましたら、これに勝る喜びはありません。
最終回の今回は、「地方」「副業」「リモートワーク」の3つの観点から、地方の仕事を成功させるエッセンスについてまとめてみたいと思います。
【テーマ1.地方】地方で働き、生きていくということ
地方の現状とは
地方へ移住しようとする人には、それぞれの背景があるはずです。
「都会の喧騒をのがれ、自然に囲まれて過ごしたい」「家庭の事情で地元に戻りたい」「地方ならではのビジネスをやりたい」……動機は、人によってそれぞれでしょう。
しかしそんな個々の想いや事情とは別に、地方そのものの現状についても考えなくてはなりません。地方で働く以上、仕事と生活の環境は大きく変わります。ステージの変化を正しく理解したうえで、その地域にあわせてどう働いていくかが、地方生活の成否を握っているからです。
率直に言って、地方の現状は特に経済の面で厳しいものがあり、その未来の展望も必ずしも明るいものではありません。背景にはなんといっても人口の減少があります。日本そのものが人口減少に入りつつあるのはもちろん、若者を中心に多くの人が都会に出て行ってしまっています。地方の企業や商店からすると、人の減少によって労働力が不足し、市場規模も小さくなりつつあります。つまり地方経済そのものが、今後ますますふるわなくなる危険性があるのです。
地方での生活や仕事は、否応なくその地域の影響を多大に受けます。希望を持って移住を考えるのはいいのですが、その移住先で自分の思うような仕事や収入を得られるかは、事前によくシミュレーションしなくてはなりません。「地の利」を得るためには、その地域のことを十分に知ることが第一歩だからです。
地方で働くことのメリット
もちろん、地方で働くことにも多くのメリットがあります。主なものとして、以下のようなものが挙げられるでしょう。
1.自然が豊か
自然に囲まれた環境は癒しのパワーがあり、常に心身をリフレッシュできます。さらには新鮮な食材を味わえるのも、大きな魅力です。
2.生活環境がいい
地方は人口減少に悩んでいますが、静かで落ち着いており、のんびり生活できるという面もあります。子育てにもいい環境が期待できます。
3.都会のストレスから解放される
通勤ラッシュや満員電車をはじめ、騒音や人ごみから解放されます。
4.出費が抑えられる
物価が安いのは大きな魅力です。また実家にもどる場合は、家賃や駐車場代も不要です。
5.地方ならではの人的交流
地域の素朴な人的ネットワークが、地方では色濃く残されています。情緒あふれる土地のお祭りも魅力です。
地方で働くことのハンディキャップ
もちろんその一方で、地方で働くことのハンデも頭に入れておかなくてはなりません。主にこのような点があるでしょう。
1.収入が減る
あくまで平均的な話ですが、都会と地方の収入の格差は現実に存在します。
2.選べる職種が少ない
特にIT関係、マスコミ、クリエイティヴ分野の求人は、地方ではなかなか無いのが現状です。
3.交通が不便
地方で会社勤めをするとなると、多くの場合は車での通勤となることでしょう。生活の利便の面からも、マイカーは欠かせません。よって車に関する経費の発生は、頭においておかなくてはならないでしょう。
4.人との交流が限られる
あらゆる分野で人が都会に集中してしまっており、地方では共通の目的・趣味を持つ人が見つけづらいかもしれません。
5.情報面で不利
インターネットが普及したとはいえ、その内容は玉石混交です。重要で確かな情報を得るには、やはり分野の先端にいる人とコミュニケーションをとる必要があります。各分野の主要なプレイヤーの多くが都会に集まっている以上、やはり地方は情報面でも不利なのは否めません。
メリットとハンデを冷静に比較しよう
このように、地方で働くことにはメリットもあればハンデもあります。
両者を冷静に比較した上で、移住すべきかどうかを決断する必要があるのです。
【テーマ2.副業】収入のハンデを克服できるか
都会と地方に収入格差がある以上、地方での副業を視野に入れる人も出てくるでしょう。
以下に、副業の主な種類(通いの仕事)について見ていきましょう。
1.講師系
人にモノを教える仕事で、能力・技術とマッチングが上手くいけば、いい副業になるかもしれません。
・家庭教師・塾講師
副業として最もポピュラーなもののひとつで、時給も高めです。とはいえ、授業の間だけが仕事というわけではありません。あらかじめ授業の準備をしていく必要があるので、授業時間とは別に作業が発生するのです。また、生徒に応じた教え方を工夫する必要もありますし、コミュニケーション能力も求められます。
・インストラクター
スポーツ系の経験や資格がある人は、さわやかに身体を動かしながら教えることができます。水泳、フィットネス、ヨガ、格闘技など、一定の技術がある人は挑戦してみるのもいいでしょう。
ただし生徒がケガなどをしないよう、教室全体に目を行き届かせることが必要です。
2.接客系
たとえ昼間の本業で疲れていても、お客様に悟られてはいけません。
・ファミレス・ファストフード
昼間の本業の後、夜のシフトに入る形が多いでしょうが、夕食の時間と重なるとかなり忙しいです。また基本的に立ち仕事ですので、足腰が強くないと勤まりません。
深夜勤務の場合は、お客が少ない割に時給はアップしますが、本業に支障が出ないようにしましょう。
・コンビニ店員
コンビニの人手不足は深刻化しており、採用されやすいのは魅力です。業務マニュアルが細かいのが難点ですが、基本的な業務を覚えれば、マニュアルどおりに仕事をこなせばいいのも事実です。
深夜は時給がアップしますが、やはり無理をしてはいけません。
・キャバクラ・スナック・パブ
キャバクラ嬢やホストなど、夜の仕事です。お客様のお酒の相手をする仕事ですので、社交的な人でないと勤まらないでしょう。年齢的な制限もあり、誰にでもできる仕事ではありません。
3.運輸系・肉体系
力仕事もありますが、高収入の案件もあります。
・運転代行
金曜・土曜に需要が集中するので、週末に集中して稼ぎたい人におすすめです。
ただしお客さまの車を運転する場合は、第二種免許が必要になります。
・ポスティング
ギャランティーはチラシ1枚で1~3円程度とされており、あまり割りのいい仕事とはいえません。
もっとも、時間を柔軟に使える(好きな時間にできる)のは魅力です。
・引越し
収入はいいですが、肉体労働ですので、腕力・タフネスに自身のある人向けです。
・清掃業務
最近はオフィスビルもきれいな物件が多いですが、古い建物だとトイレなどが不潔なところもあります。潔癖な人には難しいでしょう。
副業選びは「時間」と「適性」
副業には様々な種類がありますが、仕事選びのポイントは「時間」そして「適性」です。本業との時間的な兼ね合いが上手くいかないとダメですし、あなたに向いている副業でなくては長続きしないからです。
【テーマ3.リモートワーク】
地方の仕事を軌道に乗せる上で、副業とは別に考えるべき働き方があります。それがリモートワークです。
リモートワークとは会社のオフィス以外で作業する働き方のことで、近年はIT環境の普及に伴い、自宅で仕事を請けるワークスタイルが広まってきています。
(リモートワークを本業にする人もいれば、副業にする人もいます。最初から大きな収入を得るのはそう簡単ではありませんので、まずは副業として着手する人が多いようです)
以下に、主な種類を見ていきましょう。
1.IT・クリエイティヴ系
・システムエンジニア・プログラマー
システムエンジニアは情報システムの根幹の設計が仕事です。一方のプログラマーは、その設計を実現するプログラムの制作を担当します(建築士と大工の関係に例えられることもあります)。
在宅でパソコンを使って働くにはもってこいの仕事であり、案件によっては高収入も期待できます。もっとも内容によってはかなりの労力を要するものもあるので、仕事選びには注意が必要です。
・デザイナー
イラストやウェブサイトのデザインが仕事です。パソコンを使ってのリモートワークとして人気があります。もっともただ「絵が描ける」というだけでなく、イラスト制作ソフトや画像編集ソフトを使いこなせなくてはなりません。
また、実績を積むまでは、高額の案件で起用されるのは難しいかもしれません。
・ライター
IT技術者やデザイナーほどには専門性がなく、パソコンを用いた仕事としては着手しやすい部類です。もっとも下手な文章を書いては、クライアント企業の業務に悪影響を与えてしまうので、とても責任が重い仕事でもあります。
またデザイナーと同様、実績がないと高額の案件にはありつけないでしょう。
2.物販系〜ネットオークション・せどり〜
いずれも、仕入れた商品をインターネットのオークションサイト(「ヤフオク!」が代表的です)などで販売し、利益を出すビジネスです。
簡単に利益を出せるわけではありませんが、まずは自分の得意分野の商品からはじめて、取引のコツをつかんでいきましょう。
3.ネットビジネス(物販以外)〜アフィリエイトなど〜
アフィリエイトはあなた自身のサイトに広告を載せて、それを通じて何らかの成果が上がった場合に、報酬を受け取れます。
そうはいっても、一般人のサイトに多く人を集めるのは、容易ではありません。サイトに人を集める自信があるなら、やってみる価値はあるでしょう。
4.財テク系〜株投資・FX〜
インターネットの普及にともない、近年は誰でも財テクができるようになっています。とはいえ、財テクで儲けるというのは、誰にでもできることではありません。
株投資の場合、ある程度の元手がないとはじめられません。その点、FXは少ない元手からスタートできますが、その分リスクも高いので注意が必要です。
リモートワーク「愛」がないと続かない
いずれのリモートワークにも共通していえるのは、始めてすぐに成果が出るものではないということです。どんな仕事であれ、稼ぐコツを身に着けるにはそれなりの時間と経験が必要です。じっくり腰をすえて、少々のことではめげずに取り組んでこそ、はじめてリモートワークで継続的に稼ぐ道が開かれます。
だからこそ、リモートワークは「好きなこと」「好きな分野」からスタートすべきでしょう。自分の好きなジャンルであれば長く続けられますし、その分野に関する情報も仕入れやすいからです。
【まとめ 地方で生きていくということ】
地方での仕事を考えるうえで、副業やリモートワークといったテーマは、今後ますます重要になってくるでしょう。それだけ地方経済の現状は厳しく、従来どおりの会社勤めだけを考えていては、思うような人生設計ができないケースも増えてくるからです。
しかし―――時代は確実に動いています。必要に応じて副業やリモートワークを視野に入れることで、地方の仕事の可能性が大きく広がります。地方で働くことは工夫も必要ですが、地方での人生だからこそ、得られるものもあります。
そう。地方だって、そんなに捨てたものではないのです。
「人間、至るところ青山あり」
ここまで連載にお付き合いくださったあなたに、この言葉をお贈りしたいと思います。
記事制作/欧州 力(おうしゅう りき)