博報堂ブランドコンサルティングの立上げに関わり、独立後は、マーケティング・人材育成のコンサルタントとして活動し、青山学院大学経営学部マーケティング学科講師を務める、ビジネスノマドの働き方を実践してきた山本直人氏にお話を伺いました。

前編では、博報堂でのキャリアについて、コピーライター、研究開発からブランドコンサルティング立上げ、人材開発といった異動をなぜ積極的にしたのか、キャリア構築の考え方について伺いしました。

後編は独立をした理由やセルフブランディングの考え方について伺います。

独立。2つ目のスキルが差別化に

Q:それでは独立からその後について伺えますか?

山本 直人さん(以下、山本):

独立した理由は様々あるんですけどね、本音を言えば(笑)。表面的な理由としては、もともといつかは独立するつもりではいましたと。入社式で言われた、「定年まであと38年ある」というのを聞いて、それは長いなと。残り20年は独立してやろうかな、と。ほぼ40歳くらいで折り返しじゃないですか。おんなじ会社で残り38年も定年まで、そんなこと入社するまで考えたこともなかったことで、新鮮でした。

“1つだけのスキルはこわい”

マーケティングと人材開発のノウハウが2つあるとどうにか独立しても食べていけるんじゃないか、となったのが具体的な理由ですね。1つじゃないというところが僕個人としては大事だと思っていて、もちろん一つの道で行く人も多いし悪くないと思うんだけど、一つだけでやってるとこわいと思うんです。市場環境が変わったりとか、参入障壁が低くなって競合が増えちゃうとかがざらにあるから。2つ目のキャリア、スキルも常に考えていたほうがいいと思うんです。

“そのスキルで何を達成するか、目的意識が重要”

例えば、一見なくならない職種に見える営業も、種類によると思っていて、提案する人にアドバイスするとかコンサル的な動きができる営業であればいいけれど、単に売り買いの連絡役だったら今後もういらないということなんですよね。

たくさんスキルがあればいいということではなくて、たとえば、英語が教えられます、みたいなスキルを持ってる人はたくさんいると思うんですけど、相手との交渉の仕方を教えられるということでやるのか、例えば生徒さんが英語を使ってアートの仕事をやりたくて、というところで教えるのか。一口に英語を学びたいという人でも、目的意識は違うわけでしょ。

英語で交渉がしたいのか、アートの仕事がしたいのかによって全然求められるものも変わってきてしまう。それに対応して価値を持っていれば、お客さんが来ると思うんです、でも英語というスキルだけだったら実は何の価値にもならなくて、英語喋れる人だったらアメリカにもイギリスにもいくらでもいるよって話になってしまう。

“マーケティングスキルとかけわせた人材研修”

研修の講師の人って、論理的に考えるロジカルシンキング講座とかよくやると思うんですけど、それぞれの業種・業態のことは知らない人が多いなと思っていて。マーケティングのことは知ってるとか、ITのことは知ってるとかじゃなくて、もっと広い普遍的な形でやるひとが多い。

でも論理的に考えるとかそういう人も、研修を受ける会社に合わせたマーケティングの課題でやればもっと現実的じゃないかなと。じゃあ今、僕が仕事をする上でも、様々なクライアント、業種の勉強をしなければいけない、という話になるんですけど、そこはいちいち勉強する必要はあまりないんです。

なんでかっていうと、博報堂時代に研究開発でほとんどのブランドの開発調査をやっていたので頭の中に全部入ってるんですよ。クルマならクルマ、コーヒーならコーヒー、どんな価値のグループがあるか。

相当数直接インタビューしたり、調査票を見たりしているので、その時に頭に入りました。あとは時代に合わせて調整してますけど。ここは博報堂時代の経験が生きていると思いますね。

“実績がないうちはブランドを気にしても無駄”

Q:「セルフブランディング」についてはどのようにお考えでしょうか?

山本:

個人のセルフブランディングに関して書かれた日本人の本は、2004年の僕のパーソナルブランディングの本(『グッドキャリア キャリアがブランドになる時』 東洋経済新報社、2004年)が一番最初かなと思います。

良くまずブランディングを、という若い人がいるんですけど、正直なところ若い時からセルフブランディングとかいちいち考えているのは無駄だと思います。

ブランドなんてものは後からついてくるものだからです。ファンクションがあってその後から追いついてくるんものだから、まずは目の前にいる人と良好な関係を築き続けられるかどうか、というところですね。

あの人だったらなんとかなるよ、みたいに思ってもらえる関係性。

このブランドならまあ間違いないだろう、美味しいだろう、みたいな。ブランドって結局何がいいかって言うと、物を買うときにこれだったらいいだろうっていうところで買う側の思考コストが低減されるっていうところなんですよね。迷わないで済む、みたいな。迷わないで買ってもらえると広告とかの予算が少なくて済むじゃないですか。人間でも同じで。結局相手に信用してもらって、好かれないとだめですね。

あの、みんなブランド作りブランド作りってよく言うけれど、何も実績がない人がブランド作りなんてできるわけないんですよ。継続して初めて出てくる。

個の強さっていうのは。ある程度仕事を重ねてきて、3年目とかでやっとブランディングというところを考えてもいいかな、と。人でなくても製品でもそう。最初は買って飲んで、食べて、使ってもらっていいと思ってもらわなきゃ始まらないでしょ、ブランディングも何も。

複数の経験が重なってはじめてブランドになるわけだからね。

結構みんな勘違いしやすいんだけど、ブランディングってロゴやタイトルを作ることではなくて、もちろんそれは必要ではあるんですけど、結局ブランディングの殆どを占めるのは日ごろのメンテナンスなんですよね。

取材・記事作成/林智彦
撮影/加藤 静

【専門家】山本直人氏
コンサルタント(マーケティングおよび人材育成)/青山学院大学経営学部マーケティング学科兼任講師
1986年 慶応義塾大学法学部卒業。同年博報堂入社。制作局コピーライター、研 究開発局主席研究員(兼)ブランドコンサルティングコンサルタントを経て人事 局人材開発担当ディレクター。2004年8月独立。
マーケティングスキル、スキル開発を中心とした人材育成コンサルティング/ト レーニング、および商品開発、ブランディング、経営理念開発をおこなう。著書「世代論のワナ」「電通とリクルート」「ネコ型社員の時代」「グッドキャ リア」他多数
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ノマドジャーナル編集部
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